日本で生活し、働く外国人材にとって、自動車の運転が必要になる場面は少なくありません。通勤や買い物といった生活面はもちろん、2024年に解禁された自動車運送業分野の特定技能、現場へ直行直帰する建設業など、「日本の運転免許を持つ外国人材」は企業にとって貴重な存在です。
しかし2025年10月1日、道路交通法施行規則の一部改正により、外国の運転免許証を日本の運転免許証に切り替える「外免切替」の手続きが大幅に厳格化されました。改正前の情報を前提にスケジュールを組むと、採用計画そのものが崩れかねません。
この記事では、改正後の最新ルールを踏まえたうえで、外国人材が日本の運転免許を取得する3つの方法(国際運転免許証・外免切替・新規取得)を、企業の受入れ実務の観点から解説します。
まず押さえる:2025年10月1日、外免切替は「別物」になりました
結論から申し上げると、変わったのは次の3点です。いずれも外国人ドライバーの採用可否とスケジュールに直結します。
出典:警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」
改正の背景
改正前の知識確認は10問中7問正解で合格でき、日本の交通ルールの理解度を測る仕組みとしては簡易なものでした。加えて住所確認も厳格ではなく、住民登録のない短期滞在者が宿泊先の住所を用いて切替を受けられるケースが問題視されていました。
外国人ドライバーが関係する重大な交通事故の報道が相次いだことも重なり、警察庁が制度の見直しに踏み切った形です。
企業にとってのインパクトは3つ
- 短期滞在では切替ができなくなった:住民登録が前提となったため、「入社前に観光ビザで来日して免許だけ取らせておく」という進め方は成立しません。
- 知識確認の難易度が実質的に跳ね上がった:合格ラインが70%から90%になり、日本の交通ルールを体系的に学習させる時間の確保が不可欠になりました。
- 取得までの期間が読みにくくなった:再受験の発生と技能確認の予約待ちを、これまで以上に織り込む必要があります。
特に特定技能「自動車運送業」では、在留資格「特定活動」(上限6か月)で在留しながら日本の免許を取得する必要があるため、この改正は採用スケジュールの前提そのものを変えます。
外国人材が日本で運転するための3つの方法
まず全体像を整理します。自社の状況に照らして、どのルートを取るかを最初に決めることが重要です。
方法1:国際運転免許証で運転する
日本は、道路交通に関する条約(1949年のジュネーブ条約)の締約国です。締約国で発行された国際運転免許証を持っていれば、外国人でも日本国内で自動車を運転できます。
短期滞在者や旅行者が多く利用する、もっとも手軽な方法です。ただし、企業が中長期で雇用する人材の手段としては、次の制約があります。
- 有効期間は日本への上陸日から1年間です(発給から1年以内であることも必要です)。
- 国際運転免許証はあくまで「免許証の翻訳」という扱いのため、母国の有効な運転免許証とセットで携帯しなければなりません。国際運転免許証だけで運転すると無免許運転とみなされます。
- ジュネーブ条約の締約国であっても、発行形式などの理由で日本国内では使用できない場合があります。
- 日本に住所を有する方が出国し、3か月未満で再入国した場合、国外運転免許証では日本国内を運転できないとされています。「一時帰国して国際免許を取り直す」という運用はできません。
国別の取扱いや上記の再入国に関するルールは、管轄の都道府県警察のWebサイト、または各国の在日大使館・領事館で必ずご確認ください。
なお、特定技能「自動車運送業」で採用する場合、国際運転免許証では在留資格の要件を満たしません。トラック区分では日本の第一種運転免許(中型または大型)の取得が必要です。
方法2:外免切替(企業実務における本命ルート)
すでに母国で運転免許を持っている人材であれば、新規取得より時間・費用の負担が小さい外免切替が第一の選択肢になります。厳格化された今も、この位置づけは変わりません。
受験資格
- 年齢:17歳6か月以上(普通二輪は16歳以上、中型免許は20歳以上、大型免許は21歳以上)。普通免許・準中型免許は交付が18歳以上となります。
- 外国等で運転免許を取得したあと、その国等に通算して3か月以上滞在していたこと。
- 日本国内に住所があること(住民登録があること)。
- 視力等の適性基準を満たすこと。
トラックドライバーとして採用する場合は、中型・大型に求められる深視力がボトルネックになることがあります。内定前の健康診断の段階で確認しておくと、後戻りを防げます。
必要書類(2025年10月以降)
取得国や取得状況によって必要書類は異なりますが、共通して求められるのは次のとおりです。すべて原本が必要で、コピーでは受け付けられません。
- 外国の運転免許証(有効なもの)
- 運転免許証の日本語による翻訳文(指定機関が作成したもの)
- パスポート
- 特定事項が記載された住民票の写し(交付日から6か月以内のもの)
- 在留カード
- 申請用写真
- 手数料
「特定事項」とは、住民基本台帳法第30条の45に規定する、外国人住民の住民票に記載される事項を指します。
住民票を取得する際、市区町村の窓口では既定の書式に「省略」がかかることがあります。上記の特定事項がすべて記載されたものを請求してください。マイナンバーの記載は不要です。
運転免許証の翻訳文は、当該国の駐日大使館等、日本自動車連盟(JAF)、ジップラス株式会社、一般社団法人訪日運転者支援協会などの指定機関が作成したものに限られます。国別の必要書類は各都道府県警察が「国別必要書類一覧」を公開しているため、必ず事前に確認してください。
手続きの流れ
- 予約:都道府県によっては完全予約制です。
- 書類審査・面談:提出書類の確認に加え、外国で運転免許を取得した際の状況についてヒアリングが行われます。
- 適性試験:視力・視野・聴力などを確認します。
- 知識確認:50問中45問以上の正解で合格。警視庁では午後に1回のみ実施されます。
- 技能確認:予約制のため、受付当日に受けることはできません。別日での受験となります。
- 免許証交付:技能確認に合格すると交付されます。
【企業担当者は必読】特定技能の場合、予約するのは「会社の担当者」です
見落とされがちですが、実務上もっとも重要なポイントです。
警視庁の場合、特定技能制度を希望する方の外免切替は一般のWEB予約の対象外で、原則として申請者と雇用契約をしている会社の担当者が、運転免許試験場へ直接電話して予約します(受付は午後4時から午後5時まで)。
予約の際には、出入国在留管理庁が発行した「指定書」が添付された旅券をはじめ、切替に必要な書類を手元に準備しておく必要があります。
この運用を知らずにWEB予約を試み、時間を空費してしまう例が起きやすい箇所です。都道府県によって運用が異なるため、必ず管轄の運転免許試験場に事前確認してください。
知識確認・技能確認が免除される国等(29か国等)
次の国等で取得した免許は、知識確認・技能確認がいずれも免除されます。
※アメリカ合衆国は、オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州、ワシントン州に限ります。なお、アメリカ合衆国インディアナ州は技能確認のみが免除されます。
ここで注意が必要です。特定技能の主要な送出国であるベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパール、タイ、カンボジアなどは、いずれも免除対象に含まれていません。
つまり、これらの国から人材を採用する場合は、50問の知識確認と、厳格化された技能確認の両方を必ず通過しなければなりません。2025年10月の改正の影響をもっとも強く受けるのが、まさにこの層です。
費用の目安
これに加えて、翻訳文の作成費用、住民票の発行手数料、写真代などがかかるため、1回あたり1万円前後を見込んでおくと安心です。不合格の場合は、再受験のたびに手数料が発生します。手数料は都道府県により異なる場合があります。
期間の目安
技能確認が必要な国の免許からの切替では、予約待ちを含めて2〜4か月程度かかることも珍しくありません。改正により知識確認での不合格が増えることが見込まれるため、従来の想定よりも余裕を持ったスケジュールを組んでください。
方法3:日本国内で新規取得する
母国に運転免許がない、あるいは「取得国に通算3か月以上滞在」の要件を満たせない場合は、日本人と同じく新規取得を目指すことになります。
教習所に通って取得する
学科教習と技能教習を体系的に学べるため、運転が初めての人材でも安心して取得できます。指定教習所を卒業すると技能試験が免除され、多くの場合は学科試験の合格のみで免許を取得できます。
費用は普通免許で20万円〜30万円程度、期間は数か月です。期間を短縮したい場合は、教習所の寮等に宿泊しながら受講する「合宿免許」を利用する方法もあり、2週間程度でカリキュラムを終えられます。
一発試験にチャレンジする
教習所に通わず、直接運転免許試験場で学科試験と技能試験を受ける方法です。合格できれば費用は抑えられますが、実際に日本の公道を運転した経験がなければ合格は難しいといわれています。確実に取得させたい場合は、教習所を利用したほうが結果的に早く済むケースが多いでしょう。
【2026年4月1日〜】普通・準中型の受験資格が17歳6か月に引き下げ
道路交通法の改正により、令和8年(2026年)4月1日から、普通自動車および準中型自動車の仮免許取得・本免許受験が17歳6か月から可能になりました。ただし、運転免許証の交付を受けられるのは18歳以降です。
若年層の外国人材を早期に育成したい企業にとっては、育成計画を前倒しできる余地が生まれます。
特定技能「自動車運送業」で採用する場合の注意点
- トラック区分では中型または大型の第一種運転免許が必要です。外免切替の場合でも、中型は20歳以上、大型は21歳以上という年齢要件があります。
- 在留資格「特定活動」(上限6か月)で在留しながら外免切替を進める場合、6か月以内に日本の免許を取得できなければ、引き続き雇用することができません。2025年10月の改正で難易度が上がったぶん、この6か月はこれまで以上にタイトです。
- 特定活動の期間中は、ドライバーが通常従事する業務のうち「運転免許を必要としない業務」に従事させることができます。この期間を日本語研修・交通ルール研修に充てる設計が現実的です。
- 日本の免許を取得したら、速やかに特定技能の在留資格へ変更する必要があります。
関連記事:自動車運送業(トラック区分)の特定技能|受入要件や各種手続きを解説
企業が直面するハードルと対策
免許取得費用を企業が負担したうえで、早期退職時に返還を求める取り決めは、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)に抵触するおそれがあります。制度設計にあたっては、社会保険労務士や弁護士など専門家にご相談ください。
免許取得後、運転させる際に説明すべきこと
免許を取得したことと、日本の道路で安全に運転できることは別の問題です。日本人でも徹底できていない項目が含まれるため、受入れ企業として次の点は明示的に説明しておきましょう。
※上表に加え、業務で高速道路を利用する場合は、ETCの仕組みや合流の方法についても説明しておきましょう(表に「高速道路」の行として追加)。
よくある質問
Q. 短期滞在(観光ビザ)で来日して、外免切替はできますか?
A. できません。2025年10月1日以降、住民基本台帳法の適用を受ける外国籍の方は「特定事項が記載された住民票の写し」の提出が必須となりました。住民登録のない短期滞在者は、外交官等の例外を除き対象外です。
Q. 知識確認は母国語で受けられますか?
A. 多くの都道府県で多言語対応が進んでいますが、対応言語は試験場ごとに異なります。また、技能確認は日本語で行われるのが一般的です。事前に管轄の免許センターへご確認ください。
Q. 技能確認は何回でも受けられますか?
A. 受験回数に上限は設けられていませんが、そのつど予約と手数料が必要です。予約が数週間から数か月先になることもあるため、不合格を前提としたスケジュールを組んでおくと安全です。
Q. 免許取得の費用は企業が負担すべきですか?
A. 法令上の義務ではありませんが、採用競争力と定着の観点から企業負担とする例が多く見られます。ただし、退職時に取得費用の返還を求める取り決めには労働基準法上の問題が生じうるため、制度設計は慎重に行ってください。
Q. 母国の免許の有効期限が切れていても切替できますか?
A. できません。外免切替の申請には有効な外国の運転免許証が必要です。予約から審査までに時間を要することもあるため、有効期限には最低でも数か月の余裕を持たせてください。
まとめ
- 2025年10月1日の改正で、外免切替は「住民登録が前提」「知識確認は50問中45問以上の正解」「技能確認の厳格化」の3点が変わりました。
- ベトナム、フィリピン、インドネシアなど特定技能の主要送出国は、知識確認・技能確認の免除対象外です。改正の影響をもっとも強く受けます。
- 特定技能「自動車運送業」では、特定活動の6か月以内に免許を取得できなければ雇用を継続できません。スケジュールのバッファ確保が採用の成否を分けます。
- 特定技能を希望する方の外免切替は、原則として雇用主である会社の担当者が電話で予約します(警視庁の場合)。運用は都道府県で異なるため、必ず事前確認してください。
外国人材の運転免許取得は、制度が複雑なうえに改正の頻度も高く、社内だけで最新情報を追い続けるのは負担の大きい領域です。
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出典
- 警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/low.html
- 警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/kokugai/kokugai05.html
- 警視庁「受験資格に係る年齢要件の引き下げ」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/oshirase/exam_age.html
- 警視庁「外国語により受験できる学科試験について」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/menkyo/foreign_exam.html
- 国土交通省「自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて」https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk1_000038.html
※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。手数料・予約方法・知識確認の対応言語などの運用は都道府県により異なるため、実際の手続きにあたっては管轄の運転免許試験場・免許センターにご確認ください。






