特定技能

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MOLI

公開日

September 25, 2024

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建設業の特定技能で重要な機構「JAC」とは?目的や役割・加入に関する情報を解説

目次

建設業で特定技能人材を雇用している企業は、もれなく「JAC」または「JACの正会員である建設業者団体」に加入しなければなりません。

しかし、そもそもJACとはどのような組織で、建設業の特定技能人材や雇用企業に対して何をしてくれるのか、よく分からない方も多いのではないでしょうか。 

実は、JACは建設業における特定技能制度において、非常に重要な役割を担っています。

この記事では、JACが創設された目的や背景に触れつつ、役割や加入方法など様々な観点から解説します。

建設業分野におけるJAC(一般社団法人建設技能機構)とは

JACとは、英語「Japan Association forConstruction Human Resources」を略したもので、日本語では「一般社団法人建設技能機構」と訳されます。

特定技能人材を受入れるにあたり、元請けゼネコン・受入対象職種の専門工事業団体が発起人となって設立された組織です。

公式サイトで紹介されている事業内容は、以下の7つとなっています。

1. 建設分野における外国人材の適正かつ円滑な受入れの実現に向けた行動規範の策定及び当該規範の適正な運用
2. 建設分野における外国人材が有する能力を有効に発揮できる環境の整備に関する事業
3. 建設分野特定技能外国人の受入れに関する事業
4. 建設分野特定技能外国人に対する職業紹介事業
5. 建設技能者の技能評価その他の建設技能者の確保等に関する事業
6. 建設技能者の確保等に関する調査研究
7. その他本機構の目的を達成するために必要な事業

※出典元:一般社団法人建設技能人材機構「(一社)建設技能人材機構概要」[u2] 

上記の通り、建設分野における特定技能人材の確保において、JACは多様な役割を担っている組織といえます。

建設業分野におけるJAC設立の目的

JACは、人材不足が深刻化している日本の建設業界(建設分野)において、特定技能人材を適正・円滑に受入れるために設置された組織です。

建設技能者を確保すべく技能評価等の事業を行い、日本の建設業が健全な形で発展できるよう、特定技能人材・受入企業を総合的にサポートするのが主な目的です。

具体的な事業内容としては、次のようなものがあげられます。

適正就労監理業務
※(国際建設技能振興機構:
FITSに一部委託)
●特定技能人材に対する受入れ後講習の実施
●受入企業に対する巡回指導業務等(FITSが委託を受け実施)
●母国語相談ホットライン業務(FITSが委託を受け実施)
※(受入企業を介さず、特定技能人材からの直接相談を受け付ける)
技能評価試験の実施や外国人支援●建設分野で就労を希望する外国人に対して、
特定技能の在留資格取得のための「建設分野特定技能評価試験」を実施
●試験会場の確保、各国と連携しての教育訓練なども実施している
無料職業紹介事業の実施●建設業で働きたい外国人材、受入れを希望する企業に対し、
無料でマッチングを行っている
※(民間の有料職業紹介事業者は一切介在できない)
●現在働いている企業が合わないと感じている特定技能人材に対し、
再就職支援も行っている

なお、上記におけるFITSとは、外国人建設就労者受入事業において3,000社以上にわたる巡回指導等の豊富な経験があり、かつ、JACが定めている業界共通行動規範によって「巡回指導等の委託先」と定められている組織です。

建設業分野においてJACが設立された背景

JACが設立された背景には、建設業分野で見られた、技能実習生関連の次のような問題があります。

  • 他分野よりも高い技能実習生の失踪率
  • 建設業における技能実習実施企業の労働法令違反(約8割で発覚)

技能実習生の失踪は、日本における社会問題の一つとなっています。

平成30年度における全分野の技能実習生における失踪率は、建設分野で約7.9%となっており、全分野における約2.1%と比較して3倍以上の数値です。

建設分野の失踪者数が、全体の失踪者数の約40%にあたるというデータもあり、これは不名誉と言わざるを得ない結果です。

また、失踪の直接の原因と考えられている労働法令違反に関しては、主な違反事項が賃金台帳未整備・割増賃金不払い・賃金の未払いと、賃金関連の違反が多く見られます。

建設業における技能実習生は、慣れない環境で、労働者ではない「研修生」というあいまいな立ち位置で仕事をすることになり、実習期間が終わるまで同じ職場を離れることはできません。

賃金の未払いが続くだけでなく、過酷な労働状況が改善されなければ、もはや技能実習生も失踪するしか手がなかったものと考えられます。

※参考記事:外国人が失踪するならどこ?技能実習生など人材をつなぎとめる方法

このような事情を抱えていた建設分野では、特定技能人材を受入れるにあたり、独自に適正な就労環境の確保に向けた仕組みを設ける必要がありました。

こうして生まれたのが、建設業分野独自の基準となる「建設特定技能受入計画」で、次のような内容となっています。

・建設業の許可を得た受入企業であること
・建設キャリアアップシステムに登録していること(受入企業・特定技能人材の両方)
・JACに加入しており、JACが策定した行動規範を遵守していること
・同一技能・同一賃金(日本人労働者と同等額以上の給与を支払う)、月給制であること、昇給があること
・契約上の重要事項を書面で説明する際、母国語を含む外国人が十分に理解できる言語で行うこと
・特定技能人材の受入れ後、国土交通大臣が指定する講習・研修を受講させること
・特定技能人材の受入れ後、国または適正就労管理機関による巡回指導を受入れること など

上記の通り、建設特定技能受入計画の中には、JACへの加入及び行動規範の遵守が基準として設けられています。

このことから、建設業分野で特定技能人材を受入れるためには、事実上JACへの加入は避けられないものと考えてよいでしょう。

建設業の特定技能について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。

※参考記事:建設業の特定技能 | 受入要件や従事する業務・雇用の流れなどを解説

建設業分野におけるJACの役割

JACに求められている役割は、一言でまとめると「特定技能人材の受入れを適切な形で行う」ことです。

建設特定技能受入計画にもある通り、賃金や昇給に関するルールを正しく適用し、日本で働く特定技能人材(外国人)の処遇を改善することが求められています。

同時に、かつての技能実習制度で見られたような問題を起こさないよう、いわゆるアウトサイダー・ブラック企業の排除に向けた対応も進める必要があります。

これらの課題解決に向けて、JACは「建設業における共通行動指針」を定めており、受入企業は次のような内容を守らなければなりません。

・不法労働者の雇用禁止(オーバーステイ等)
・賃金設定の適正化(技能レベルに合わせての設定)
・社会保険の加入義務を果たす
・差別的取り扱いの禁止(外国人であることを差別の理由としてはならない)
・特定技能人材の人権尊重(暴力・暴言・いじめ・ハラスメント等の根絶)及び職業選択上の自由尊重
・日本国内で安心して生活できるよう、日常生活・社会生活上の支援を実施
・他事業者が雇用している外国人材に対して、悪質な引抜行為を行わない など

上記内容を守っていない受入企業に対して、JACは注意・指導を実施する立場になります。

もし、注意・指導を無視するようなことがあれば、その企業は特定技能人材の受入れができなくなるものと考えてよいでしょう。

特定技能人材の雇用につき、建設業が抱える課題を企業単独で解決するのは、決して簡単なことではなりません。

課題解決のためには、建設業分野において特定技能人材を受入れる事業者全体で協力する必要があり、そのためにJACが存在するという捉え方もできます。

建設業に属する企業がJACに加入するには

新しくJACに加入するためには、大きく分けて次の2つのルートが存在します。

  • JACの賛助会員として入会(直接加入)
  • JAC正会員である団体の傘下に入る(間接加入)

以下、それぞれのルートについて解説します。

JACの賛助会員として入会(直接加入)

JACに直接加入する場合、次のような流れで賛助会員になるための入会手続きを行い、所定の審査が通ってから加入となります。

①入会資料ダウンロード公式サイトの資料請求フォームへ移動し、必要事項を入力した後、送信されたメールのURLから資料をダウンロードする
※(登録支援機関・行政書士による代理申請は認められていないため、
入会を希望する企業が実施しなければならない点に注意)
②入会申請ダウンロードした資料に目を通し、ダウンロード時に受信したメールに
記載されているエントリーフォームから入会申込みを行う
③必要書類の送付必要書類に各種事項を記載し、送付する
④入会審査JACの入会審査は、毎月以下のスパンで行われる
●毎月25日午前12時までの申込完了分を対象とする
※(25日が土日祝の場合は翌営業日となる)
※(申込完了分とは「送付書類がJACに到着した分」という意味)
●承認は、翌月第2営業日に行われる
⑤会員証の発行●入会審査の承認が得られた場合、メールで「会員証発行手続きの案内」が届くため、
メール記載の内容に従って手続きを完了する
●メールに記載されている会員証確認URLの有効期限は「10日間」となっているため、
期限内に対応するよう注意

JACに直接加入しなければならないケースとしては、次のような状況が考えられます。

  • 正会員の建設業者団体に属していない、または参加できない場合
  • 属している団体がJACの正会員でない場合 など

また、賛助会員としては、企業のほか個人も想定されています。

JAC正会員である団体の傘下に入る(間接加入)

JACに直接加入する以外の方法としては、すでにJACの正会員である建設業者団体のうち、いずれかの会員になる方法があげられます。

令和6年7月1日現在、受入企業を傘下に有する正会員団体は「52建設業者団体」にのぼり、専門工事業団体や元請けゼネコンなどが正会員団体となっています。

これらの団体は全国規模の団体が多いことから、直接JACに加入する選択肢を選ぶよりは、正会員団体の傘下に入った方が手続きを効率的に進められるかもしれません。

JACに加入する際は「費用」も重要

直接加入と間接加入は、加入方法の違いだけでなく、加入時の費用負担にも違いが見られます。

以下、それぞれのケースで発生する費用について解説します。

JACの賛助会員として入会(直接加入)する際の費用

JACに直接加入した場合、年会費に加えて、特定技能人材1名あたりの受入負担金が発生します。

入会金は発生しませんが、年会費は240,000円となっており、特定技能人材を採用するためだけにこのコストを支払うのは、現実的でないと判断する企業も多いものと推察されます。

加えて、1号特定技能外国人を受入れた場合は、月額12,500円(年額150,000円)の支払負担が生じます。

ちなみに、令和6年6月以前までは、次のように受入負担金が分かれていました。

海外試験合格者
(JACが行う海外教育訓練を受ける場合)
20,000円
※(年額240,000円)
海外試験合格者
(JACが行う海外教育訓練を受けない場合
15,000円
※(年額180,000円)
国内試験合格者13,750円
※(年額165,000円)
試験免除者
※(技能実習2号修了者等)
12,500円
※(年額150,000円)

JACに直接加入した場合、自社で本当に直接加入するメリットがあるのかについては慎重に判断した方がよいでしょう。

なお、会費・受入負担金の支払方法は、入会時に登録した銀行からの口座引落となり、引落前の段階で口座振替の案内が届きます。

JAC正会員である団体の傘下に入る(間接加入)場合の費用

JAC正会員である団体の傘下に入る場合、入会に際しての費用負担は、その団体によって金額が異なります。

また、会費や受入負担金の支払いに関しても、正会員団体への問い合わせが必要です。

JAC正会員団体の傘下に入る場合、直接加入するケースに比べると、比較的年会費等は抑えられている傾向にあります。

ただし、会員の種別によって金額が詳細に分かれているケースもあるため、加入前に自社が加入した場合の支払額を事前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ~将来を見据えてJACへの加入を検討しよう~

慢性的に人材不足が続く中、日本人を採用することに限界を感じている企業にとって、特定技能人材を雇用するメリットは大きいでしょう。

日本国内の建設需要も高まりを見せている中で、チャンスをつかむためには人材の確保が最重要課題となります。

※参考記事:建設業で外国人を採用するメリット|人材不足の背景を知って対策を立てよう

しかし、ここまでお伝えしてきた通り、建設業において特定技能人材を雇用するためには「JACへの加入」が避けて通れません。

建設業に従事する企業においては、優秀な外国人労働者を採用するため、将来を見据えてJACへの加入を真剣に検討することが求められています。

JAC加入や特定技能人材の採用に向けて動き出したいと考えているものの、どのように手順を考え進めていけばよいのかお悩みの方は、登録支援機関として豊富な実績を積んだFactory labをご活用ください。

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