自社で外国人労働者を採用するにあたっては、外国人材それぞれの立場・状況に応じて、必要な書類がいくつか存在します。
例えば、就労が認められた在留資格を持つ人材かどうか確認する際は、在留カードの真偽や記載されている内容などを確認する必要があります。
その他にも、外国人の国内活動内容について記された「指定書」や、母国の「パスポート」の更新、日本に入国して活動する条件を満たした旨が記載された「在留資格認定証明書(COE)」などの重要書類があり、これらは外国人材の置かれた状況によって必要書類の種類や重要度が変わってきます。
この記事では、外国人採用で重要度が高い各種書類について、それぞれの役割の違いについて解説します。
外国人採用における在留カードの役割・管理
まずは、外国人採用において必ずチェックすべき、在留カードの役割や管理方法について解説します。
在留カードの役割
出入国在留管理庁(以下入管)では、在留カードについて次の通り説明しています。
※出典元:出入国在留管理庁|在留カードとは?
分かりやすくいうと、日本に長く滞在できる条件を満たした外国人であることの「証明書」として利用できるカードが、在留カードになります。
よって、適法かつ就労可能な在留資格の在留カードを保有している外国人材は、自社で雇用するにあたり問題ない人材であるといえます。
在留カードの主な記載内容
在留カードに記載されている内容の中で、採用担当者が確認すべきポイントは、概ね以下の通りです。
偽造されていないかどうかもチェック
在留カードのチェック時は、そのカードが本物かどうかもチェックしておきましょう。
主な偽造・変造防止対策としては、次のようなものがあげられます。
- カード上の「銀色のホログラム」を90度傾けて、文字の白黒が反転するかどうか
- カードを上下に傾けて、カード左端がピンク色に変化するかどうか
- 顔写真に写っている「MOJ」のホログラムが、カードを左右に傾けて左右に動くかどうか
- 「◆MOJ◆」のピンク色の絵柄が、カードを傾けてグリーンに変化するかどうか
これらのチェックを経て問題なければ、そのカードは本物である可能性が高いでしょう。
在留カードの管理
在留カードに関しては、外国人材が「常時携帯」している必要があり、入国警備官・入国審査官・警察官などに提示を求められた際は、在留カードを提示しなければなりません。
そのため、紛失を防ぐなどの理由があっても、雇用主や企業が外国人材の在留カードを本人に代わって保管することは禁止されています。
外国人が在留カードを携帯していなかったことが分かった場合、20万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、警察官等の指示に応じなかった場合、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられることがあるため注意しましょう。
外国人採用における指定書の発行・活用
外国人材を自社で採用する際、日本において許可されている具体的な活動内容を知るためには「指定書」の確認が必要です。
指定書とは
指定書とは、入管が発行する書類の一つで、外国人の日本国内における活動内容の詳細を記したものです。
外国人材の雇用にあたっては、在留カードのほか、指定書に記載されている内容の確認も必要になります。
指定書が発行される在留資格は、大きく分けて次の3つが対象です。
また、指定書に記載されている情報は、概ね次の通りです。
- 氏名
- 国籍・地域
- 認められている活動内容
- 機関名(就業先の名称)
- 所在地(就業先の本店など)
なお、特定技能人材の場合は、活動が認められている特定産業分野も記載されています。
具体的な分野について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
【参考記事】
特定技能の対象分野追加!受入れ見込み数の再設定・既存分野の変更点も解説
指定書が発行されるタイミング
指定書の発行タイミングに関しては、基本的に「在留カードが交付されるタイミング」と一緒と考えておくとよいでしょう。
また、指定書の交付時は外国人材のパスポートにホチキスで留められる形になるため、外国人材のパスポートをチェックすれば速やかに指定書の内容を確認できます。
指定書の活用方法
外国人材を雇用するにあたっては、指定書に記載された内容を正しく読み取り、任せられる仕事内容をあらかじめ確認しておくことが大切です。
自社で任せたい仕事内容と、指定書に記載された内容が一致しているかどうか、専門家の視点も踏まえながら確認しましょう。
また、特定技能人材などが転職で自社に入社しようとしている場合、指定書に書かれた職場情報が最新のものかどうかチェックしておくと安心です。
転職先の変更は、在留資格変更手続きが必要な事由の一つであることから、不備のない人材を採用するためにも必ずチェックを入れましょう。
外国人採用におけるパスポートの役割・管理
次に、外国人採用においては意識が向きにくい、パスポートの役割・管理について解説します。
パスポートの役割
パスポートは、日本を含む世界各国が自国民に発行している、世界共通の「身分証明書」です。
日本人向けのパスポートは紺または赤色をしていますが、水色・緑色などのパスポートもあり、表紙の紋章・マークも国によってデザインは様々です。
必要とされる場面は、空港などでの入出国審査、ビザ申請、ホテルへのチェックイン、警察官等への身分証明書提示など様々ですが、主に短期滞在者向けの身分証明書として機能する性質があります。
よって、パスポートも在留カード同様、身分証明書として重要な役割を担っていますが、日本で働く外国人労働者にとって、その重要度は在留カードの方が上です。
というのも、パスポートは日常生活・仕事中を問わず、あまり提示を求められる場面が多くありません。
仮にパスポートの有効期限が切れてしまったとしても、その瞬間から日本で働くことが不許可となるわけではないため、外国人材側で更新への意識が薄くなってしまっている可能性も十分考えられます。
パスポートは更新しなくてもOK?
先述した通り、外国人労働者にとって、パスポートは在留カードよりも重要度は低い傾向にあります。
しかし、重要度が低いといっても、原則として日本に滞在している間は更新が必要な書類であることに変わりはなく、在留資格の更新にもパスポートを使用します。
どうしても更新のタイミングでパスポートが用意できない事情がある場合は、申請時に「パスポートが未取得である理由」を書面で提出しなければなりません。
また、海外旅行・母国への一時帰国といったタイミングでも、やはりパスポートが求められます。
したがって、在留カード同様、パスポートも有効期限を定期的に確認し、更新することが大切です。
パスポートの管理
企業側が外国人労働者のパスポートを管理するにあたっては、在留カードと併せてパスポートの期限も一緒に管理し、定期的に更新のタイミングを人材側に知らせるのが有効です。
外国人材に対応している人事管理システムを導入している場合は、期限が近付いたらアラートを送信してくれるよう設定しておくと、声掛けなどの対応漏れを防ぐことにつながります。
基本的に、パスポートは外国人本人が受け取る必要があるため、有効期限が1年を切ったタイミングを目途に、早めに知らせてあげるようにしましょう。
また、パスポートを更新する際は外国人労働者の国籍の大使館・領事館での申請となるため、都市部まで移動することも想定しつつ、受取りまでのスケジュールを早めに立てておくことをおすすめします。
なお、パスポート更新に必要な書類は、外国人労働者の母国によって異なります。
最低限、申請書や期限切れが近づいているパスポートなどは提出するものと考えられますが、国によっては自国のその他の身分証明書や兵役に関する情報などを提示しなければならないケースもあるため、必ず大使館・領事館の公式サイト等で情報を確認しましょう。
外国人採用における在留資格認定証明書(COE)の役割・管理
これから日本へ入国しようとしている外国人材に対しては、在留資格認定証明書(COE)を発行することで、ビザ申請がスムーズに進みます。
在留資格認定証明書(COE)の役割
在留資格認定証明書は、英語で「Certificate of Eligibility(COE)」となり、日本大使館・領事館でのビザ発給時に役立つ「推薦状」的な書類の一種です。
日本へ入国を予定している外国人材の活動内容が、在留資格等の入国条件にマッチしているかどうか入管が事前審査を行い、問題がなければ交付されます。
在留資格認定証明書は、外国人材がすでに日本への入国条件を満たしている旨を証明する書類です。
日本大使館・領事館に書類を提示してビザを申請した場合、実質的に「事前審査が終わっている」ものとみなされ、スピーディーにビザが発行されるメリットがあります。
外国人材の入国時も同様で、入国時に在留資格認定証明書を提示すると「上陸条件適合者」として取り扱われるため、イレギュラーがない限りは上陸審査も迅速に行われます。
よって、現在外国にいる人材を日本に呼び寄せる際は、企業側が在留資格認定証明書を国内で代理申請するケースが多く見られます。
在留資格認定証明書(COE)の管理
在留資格認定証明書の管理にあたり、特に注意すべき点として、書類の有効期限があげられます。
在留資格認定証明書の有効期限は「3ヶ月」となっているため、外国人材が日本へ入国する際は、証明書が発行されてから3ヶ月以内に移動を済ませなければなりません。
ただし、在留資格認定証明書は電子メールで受領できるため、メールを閲覧できる環境なら郵送にかかる時間を考慮する必要はありません。
また、証明書交付の申請が処理される一般的な期間は1~3ヶ月であることから、証明書交付までに他の諸手続きを進める時間は十分にあります。
万一、在留資格認定証明書の有効期限が経過した場合や、書面を紛失してしまった場合などは、一から手続きをやり直す必要があります。
電子メールに添付する場合は外国人材へのリマインド・メール保存の連絡を徹底し、書面で郵送する場合は無事届いているか企業側で確認できるサービスを利用することをおすすめします。
在留資格認定証明書が不交付になるリスクも
手続き自体はスムーズにできても、外国人側の事情・企業側の事情によっては、在留資格認定証明書が不交付となってしまうおそれがあります。
具体的な理由としては、次のようなものが考えられます。
もし不交付となってしまった場合は、入管に不交付になった理由を聞いて、企業・外国人それぞれで解決できそうな問題かどうか確認してみましょう。
解決できそうな問題だと分かったら、再申請を進めることも可能です。
【参考記事】
在留資格認定証明書とは|有効期限や不交付リスクについても解説
技人国人材の就労ビザが不許可になる理由|事例や対処法・企業の注意点も解説
まとめ
外国人材の採用に必要な書類は人材側の状況によって異なりますが、それぞれの書類が持つ意味を正しく理解していれば、優先順位を決めて適切に準備できるでしょう。
パスポートのように、一見更新の必要がなさそうなものでも更新しておくと、外国人材の入出国が円滑に進みます。
本記事でご紹介したもの以外にも、採用活動において必要な書類は数多く存在するため、初めて外国人材を採用する企業にとっては負担が大きいものです。
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