外国人を雇用するにあたり、多くの企業が懸念する問題の一つが「定着率」ですよね。
基本的に、日本で働く外国人は出稼ぎ目的でやって来ているので、自社よりもより条件の良い職場があれば、外国人材は離れてしまうリスクがあります。
この記事では、外国人の定着率向上について
上記内容について解説します。
外国人材の雇用や定着・離職状況について
世界中で猛威をふるった新型コロナウイルスの影響は、人材の流動性にも悪影響を及ぼしましたが、必ずしも「外国人労働者数の減少の主な原因」とは言い切れない状況です。
以下、外国人材の雇用や定着・離職状況について、厚生労働省が提供する情報をもとに解説します。
外国人雇用状況は横ばいの傾向
厚生労働省が取りまとめている「外国人雇用状況」によると、2021年(令和3年)10月末現在の届出状況は、以下の通りとなっています。
※参照元:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)
上記内容を見る限り、全体的な人数は増加傾向にあることが分かります。
しかし、やはり新型コロナウイルスの影響もあって、2021年に関しては人材の数が大きく増えているわけではないものと推察されます。
とはいえ、新型コロナウイルスが感染症法上の5類に引き下がる可能性もあることから、将来的に状況が改善していけば外国人材も増加するでしょう。
自社で本格的に外国人雇用を進めるにあたり、登録支援機関や人材派遣会社とのつながりを作っておくなど、今のうちに何らかの手を打っておきたいところです。
外国人材の定着・離職状況について
次に、厚生労働省の「外国人求職者の分析」によると、2020年1月~2021年8月までの期間において、外国人の離職に関しては以下のような傾向が見られます。
※参照:新型コロナウイルス感染症禍における外国人雇用の状況について ①外国人求職者の分析
上記の結果を見る限り、総じて外国人の離職状況は日本人に比べてシビアであり、景気の変動の影響を受けやすいものと考えられます。
技術・人文知識・国際業務人材は、基本的にビザの更新に上限がなく、継続的に自社の戦力として働いてもらえる外国人材です。
にもかかわらず、新型コロナ禍の影響が強烈だった2020年4月以降は、事業主都合離職率が50%を超える月が数ヶ月にわたり続きました。
ただ、問題は新型コロナ禍だけで片付けられるほどかんたんな話ではなく、定着率の観点から考えた際、外国人の自己都合退職の多さも問題になります。
株式会社ウィルテック・株式会社エイムソウル・ヒューマングローバルタレント株式会社の共同調査「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」によると、日本での在留・就労経験のある外国籍人材477人の回答は、以下のような日本の問題点を浮き彫りにしています。
技術・人文知識・国際業務人材に関しては、次のような要因がモチベーションダウンにつながっていると回答しています。
外国人材は、日本人と同様のマネジメントを行っても、必ずしも良い方向に解釈されるとは限りません。
例えば、外国人材に対して、職場に慣れてもらうために下積みの意味で雑務を任せてしまった場合、その人材は「この会社は、自分の能力・スキルを正当に評価するつもりがないのだ」と判断する可能性があります。
また、自分が仕事を任される理由について、なぜその仕事を自分が行う必要があるのか、詳しく知りたがる人材も少なくありません。
日本人のような「空気を読む」文化がない国から来た人材は、その発言によって上司に不快感を与えていることに気付かないでしょうし、上司側もお国柄の違いを理解したマネジメントを行う必要があります。
外国人材が離職を考える理由
外国人が日本で転職を検討する場合、必ずしも前向きな理由ばかりではありません。
先にあげた内容を踏まえつつ、外国人材が離職を考える理由について深掘りすると、日本という国の独特な雰囲気や日本語の難しさなど、外国人材の直接のキャリアには関係しない理由が目立ちます。
自分が「日本人でない」ことを思い知らされる
世界的に見て、日本の企業文化や精神性は独特なものです。
働くことを美徳とする日本人の国民性は、決して卑下すべきものではありませんが、長時間残業をいとわないような働き方にすべての外国人が順応できるとは限りません。
終身雇用や年功序列のルールが生きている企業の場合、社員同士の社歴で序列が決まることも珍しくなく、そんな社内の体制に違和感を覚える外国人もいます。
その他、日本はほぼ単一民族で構成されている国のため、外国人をリスペクトするという感覚が分からず、ついつい「日本人かそれ以外(外人)か」で分けて考える場面も多くなりがちです。
外国人に対する畏怖の気持ちを持つ日本人も多く、例えば地下鉄の席に外国人が座っていたら日本人は隣に座らないなど、しばしば外国人は疎外感を覚える場面に遭遇します。
日本人相手に長年商売をしてきた老舗店舗や、旧態依然の体制がまかり通る会社の場合、ただ外国人であるというだけで、いじめやパワハラの対象となるおそれもあります。
日本で暮らす外国人は、日本の様々な場所で、尊重されずに生活することを強いられるリスクを抱えています。
そのような環境に置かれれば、離職や帰国を考えるのは致し方ないところでしょう。
日本語の難解さ
日本に移住・留学した外国人の中には、日本での生活で苦労した点について、日本語の難解さをあげる人もいるでしょう。
英語圏の人が日本語を学ぶ際の難易度は非常に高く、アメリカ国務省の調査によると、日本語を学ぶ際の難易度は最難関の「5+」に位置しています。
アルファベットを除いて、日本語は以下の3つの文字で構成されています。
- ひらがな
- カタカナ
- 漢字
これらの文字を一通り覚えるだけでも、非常に多くの時間を費やすことになるでしょう。
また、極端な例ではありますが、ひらがなだけで文章を構成すると、以下の通り日本語の文章は非常に読みにくくなります。
- 【母は花を買った→ははははなをかった】
- 【庭には二羽鶏がいる→にわにはにわにわとりがいる】
カタカナだけで構成した場合も、決して読みやすいとは言えません。
- 【巨人と阪神の試合が楽しみ→キョジントハンシンノシアイガタノシミ】
- 【雨にも負けず風にも負けず→アメニモマケズカゼニモマケズ】
ひらがな・カタカナだけでのコミュニケーションは、決して不可能なことではありませんが、ネイティブの日本人と意思疎通をはかる上では不十分でしょう。
逆に、日本人は英語を不得手とする人が多いので、日本人が外国人に合わせるのもまた難しいのです。
◎参考記事:製造業で必要な「やさしい日本語」力|外国人材のための英語公用語化は必要ない?
待遇への不満や大器小用の傾向
出稼ぎに来ている外国人労働者が日本を選ぶ日本の一つに、母国よりも高水準の給与を手に入れることがあげられます。
母国にいる家族に少しでも多くのお金を仕送りしたいと考えるので、例えば「収入よりもやりがい重視」といったスローガンは、基本的に外国人材には響きません。
そのため、給与の低さ・待遇の悪さが改善されなければ、外国人材が将来的に自社を離れてしまうのは必然と言えます。
日本人労働者との待遇に差があるなど、他社と比較した際に自分が評価されていないと感じた外国人労働者は、真剣に転職を考えるはずです。
また、外国人材自身の就労イメージと、企業側の就労イメージがマッチしていないと、それも転職の原因になります。
自分が思い描いていたポジションで働けないなど、働く当人が適材適所どころか大器小用と感じてしまうような配置が続く場合、外国人材は転職を検討する可能性が高いでしょう。
外国人従業員の定着率を向上させる方法
ここまでお伝えしてきた通り、外国人労働者には、明確な転職理由があるケースが多いものと考えられます。
よって、単純に考えれば、外国人労働者が離職する理由を踏まえ、その逆の方向を向いた手を打つのが重要になるでしょう。
以下、外国人従業員の定着率向上に向けて、検討すべき施策をいくつかご紹介します。
相互理解を深める時間を設ける
外国人労働者は、日本人労働者に比べてハンデを背負っている立場です。
ギャップを埋めるためには、企業側が外国人労働者に対して、日本語や法制度・労働習慣を学べる機会を設けることは非常に重要です。
その一方で、日本人労働者や企業側が、外国人労働者の母国語や文化について学ぶ機会を設けるのも大切です。
将来的に、外国人労働者の母国で事業を展開することも想定して、海外の知見を取り入れることはプラスに働くはずです。
評価制度の改革とキャリアパス構築
人材の定着率を高めるには、外国人労働者も含め、社員がどういった形で評価されるのかを明確にしましょう。
フィードバックに関しても、どこがいけなかったのかだけでなく、何を解決すれば労働者の評価につながるのかを伝えるよう、管理職を教化する必要があります。
また、外国人労働者の将来に寄り添う形で、自社で実現できるキャリアパスを構築することも大切です。
将来的に独立したいのか、プロフェッショナルとして多くの職場で働き続けたいのかなど、人によって目指す未来は違うので、複数のキャリアパスを提案できるとよいでしょう。
相談を受け付ける環境を準備する
外国人労働者は、それぞれに悩みを抱えていて、それは必ずしも仕事に関する悩みだけではありません。
母国の家族が病気になれば、それだけでメンタルが落ち込んでしまい、仕事どころではなくなる人もいます。
こういったケースに備え、日本で働く外国人の事情に明るい専門家などを介して、相談を受け付ける環境を企業側で準備しておきましょう。
余裕があれば、外国人労働者それぞれにメンターを配置するなど、素早く相談に乗れる環境を作りたいところです。
単純作業の特定技能人材・エンジニア・バックオフィス人材などの違いと施策
日本で働く外国人労働者の立場はそれぞれ異なり、在留資格も違います。
そのため、定着率を高める施策を講じる際も、一人ひとり注意すべき点が変わってきます。
今回は、
上記のケースにつき、定着率を高める施策について考察します。
単純作業の特定技能人材
特定技能人材に転職を思いとどまらせるためには、普段から日本での転職に関するメリット・リスクについて伝えておき、外国人独自のネットワークで転職することを予防するのがよいでしょう。
母国と同じルールでは転職できないことを伝えつつ、どうしても転職したいと話す場合は、どんな条件や職場で転職したいと考えているのかヒアリングして、特定技能人材が転職する際のリスクを伝えましょう。
なお、伝えるべきリスクとしては、以下のようなものがあげられます。
・違法な転職になる可能性がある
・自己都合退職の場合、つなぎのアルバイトができない
・ビザ変更申請が通らないかもしれない
外国人材の出身国によっては、法令順守意識がそもそも低いケースも考えられるので、人事・教育担当者は丁寧に説明することを意識しましょう。
エンジニア
外国人エンジニアが転職を考えるケースとしては、給料へのこだわりや、言語・文化の違いによる衝突が考えられます。
特に、働き方の自由度がない環境では、すぐにエンジニアが離れて行ってしまうでしょう。
最低限、フレックスタイム制など、労働者側が働きやすい環境を準備しておくことは必要で、リモートワークなどにも対応できるようにしておきたいところです。
基本的に、生産性につながらない施策には興味を示さないものと考え、制度等の構築を検討すべきです。
バックオフィス人材
外国人のバックオフィス人材は、一般的なバックオフィス業務に加えて、国際会計や翻訳などの分野でも活躍が期待できます。
日本語に不慣れな特定技能人材とのコミュニケーションを円滑にしてくれるなど、社内外での潤滑油となってくれるでしょう。
それだけ、プロフェッショナルとしての意識が高い人材も多いことが予想されます。
よって、幅広いキャリアパスと綿密なフィードバックを提供できる体制を整えることが必要です。
まとめ
外国人の定着率を高めるためには、外国人材が何を望んでいるのかを理解した上で、適切な施策を講じることが大切です。
自分たちのことを理解してもらおうとするだけでなく、外国人材を理解しようと歩み寄ることが、外国人材を長期的な戦力として活用することにつながります。
外国人材を自社に定着させるためには、単純に採用活動を活発化するだけでなく、日本の事情を理解した労働者を効率的に雇用するのが近道です。
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