特定技能1号人材の採用にあたり、受入機関は分野ごとに設置されている協議会への加入が必要です。
飲食料品製造業に関しては、食品産業特定技能協議会に加入しなければなりません。
しかし、飲食料品製造業で協議会に加入しなければならない団体には、受入機関だけでなく「登録支援機関」も含まれることをご存じでしょうか。
この記事では、飲食料品製造業の協議会加入について、登録支援機関の加入義務に触れつつ解説します。
特定技能の協議会についておさらい
特定技能は全部で12分野に分かれていますが、それぞれの分野において、加入しなければならない協議会が異なります。
まずは、特定技能制度における協議会について、基本的な事項をおさらいしましょう。
協議会とは
特定技能制度における協議会とは、特定技能制度を適切に運用するため、12分野(14業種)ごとに所轄省庁が設置する機関のことを言います。
構成員には、受入企業のほか業界団体・関係省庁などが該当し、特定技能人材を雇用する企業に関しては、基本的に協議会への加入が義務付けられています。
具体的な目的としては、主に特定技能1号人材を適正な形で受入れ保護すること、企業が必要とする特定技能人材の受入れができる体制を作ることなどがあげられます。
受入機関への調査・指導を行うほか、各分野の人手不足解消にも一役買っているのが、各分野の協議会なのです。
飲食料品製造業・外食業は「食品産業特定技能協議会」
飲食料品製造業・外食業に該当する企業が、特定技能1号人材を受入れる場合、企業は食品産業特定技能協議会への加入が必要です。
食品産業特定技能協議会とは、飲食料品製造業分野・外食業分野が共同で設置している協議会のことです。
こちらの協議会でも、他分野と同様に、特定技能制度やそれに関する情報の周知・法令順守の啓発・その他必要な対応等を行っています。
特定技能1号人材を受入れている企業が、円滑に人材の受入れを実施できるよう、サポートする役割を担っています。
他業種の場合はどうなのか
他業種の協議会も、それぞれの分野における受入機関のサポートを担当しています。
例えば、製造業(製造3分野)に対応する協議会は、正式名称を「製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会」と言います。
活動内容は、やはり食品産業特定技能協議会とほぼ同じで、基本的には制度に関する新情報や改正への対応等を共有し、適切な形で制度運営を図ることがミッションです。
製造業(製造3分野)の協議会について、詳しい情報を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
◎参考記事:【特定技能】製造業(製造3分野)の協議会とは|概要・入会手続き等を解説
飲食料品製造業における協議会の特徴
分野こそ違えど、基本的に目的は同じである協議会ですが、実際のところ分野によって詳細は異なります。
以下、飲食料品製造業の協議会である、食品産業特定技能協議会の特徴について解説します。
協議会への加入義務
特定技能1号人材を受入れる企業は、受入機関として協議会の構成員になる必要があり、加入は義務となっています。
登録支援機関に支援を委託するかどうかにかかわらず、受入機関は構成員になる必要があります。
他の分野と少々変わっている点は、飲食料品製造業・外食業の場合、登録支援機関が2分野のいずれか、または両方の受入機関を支援する場合、登録支援機関も構成員になるという点です。
複数の分野を支援している登録支援機関を頼って、新たに飲食料品製造業の特定技能1号人材を雇用したいと考えている場合、その登録支援機関が「協議会に加入しているかどうか」チェックが必要なのです。
加入のタイミング・会費
協議会には、初めて特定技能1号人材を受入れてから、4ヶ月以内に加入するのがルールです。
これは、就労する外国人が、特定技能の在留資格を得た日(在留カードを受け取った日)から4ヶ月以内という意味です。
また、2人目以降の人材を受入れる際に、改めて加入手続きを行う必要はありません。
会費に関しては、2023年8月1日現在、入会金・年会費等の費用は徴収しない方針となっています。
なお、4ヶ月以内に加入というルールは、すべての分野に共通するものではなく、例えば製造3分野では「在留資格申請前」に手続きをしなければなりません。
入会・申請の流れ
食品産業特定技能協議会に入会する際は、農林水産省の公式サイトにWeb申請用フォームへのリンクがあるため、そちらのフォームに必要事項を入力して申請します。受入機関と登録支援機関で、申請用のフォームが異なるため、リンクを間違えないよう気を付けましょう。フォームに入力する事業者名・代表者名・所在地(住所)に関しては、入管庁に申請した際の情報を入力します。
一般的に、代表者は「社長名」など、所在地は「登記上の本店所在地」などを記入することが多いですよね。しかし、複数の事業所を構えており、それぞれの人事担当者が所轄の入管支局に書類を提出する場合は、協議会への加入を「事業所ごと」に行った方が便利です。もし、事業所が全国各地にある場合は、代表者、所在地は事業所ごとに入力し申請することをおすすめします。
申請後、事務局よりメールが届きますから、入管に提出した誓約書の写しをPDF等で添付・返信します。誓約書に関しては、飲食料品製造業・外食業それぞれの分野で、受入機関・登録支援機関で様式が異なる点に注意しましょう。審査にかかる時間は、概ね2週間~1ヶ月程度となっており、無事承認されれば加入証がメールで送られてきます。
なお、自社にパソコンの操作・書類整理を得意とする人がいない場合などは、登録支援機関が入力を代行して協議会への加入申請を行ってもOKです。
その他の協議会に関する留意事項
協議会での各種手続きに関しては、上記の内容のほか、以下の点に留意しましょう。
登録内容の変更等について
次の内容の変更が必要な場合、協議会のメールアドレス(kyougikai_1@maff.go.jp)まで連絡する必要があります。
- 事業者の会社名
- 代表者
- 所在地
- 担当者
- アドレス等の変更
登録内容の変更に伴い、加入証の記載内容を変更する場合は、その旨もメールで連絡します。
協議会を退会する場合は、先述した協議会のメールアドレスに連絡を入れ、退会届の様式を受け取り作成・提出します。
また、人材の退職(他社への転職)については、別途アンケート調査が実施されます。
なお、特定技能1号人材の追加受入れについて、その都度連絡を入れる必要はありません。
受入分野の追加について
例えば、これまで外食業分野で特定技能1号人材を受入れていて、新たに飲食料品製造業でも受入れる場合、すでに会員になっていることから、新たな加入証の発行は行われません。
ただし、事務所で保有するデータを更新することになるため、新たに別分野の外国人材を受入れた際は、協議会までメールで連絡する必要があります。
協議会に加入できない可能性もある
入管側で特定技能1号人材の在留がOKと判断されても、協議会への加入が認められない場合があります。
申請内容につき、飲食料品製造業・外食業分野の対象外となる業務内容と協議会が判断した場合、NGと判断されてしまうことがあるのです。
例えば、スーパーマーケットのバックヤードは、小売業の機能の1つとして解釈されるため、原則として飲食料品製造業の対象外となります。
ただし、別会社がスーパーの弁当・総菜の製造を請け負っている場合など、組織・経理が別法人の場合は受入対象です。
その他、飲食料品製造業の対象となる具体的な職場について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
◎参考記事:飲食料品製造業の特定技能|受入条件や従事する業務・雇用の流れなどを解説
登録支援機関が協議会に加入していない場合はどうする?
現在お世話になっている登録支援機関が、食品産業特定技能協議会に加入していない場合、企業はどうすべきなのでしょうか。
大まかには、すでに協議会に加入している登録支援機関を探しつつ、現在契約している登録支援機関の解約に向けて動く形になるものと考えられます。
協議会に加入している登録支援機関に加入する
飲食料品製造業分野の特定技能1号人材を雇用するにあたり、登録支援機関によるサポートが必要な場合は、協議会に加入している登録支援機関を探して加入するのが近道です。
一口に登録支援機関といっても、その種類は幅広いため、自社のニーズについて、例えば以下のように整理しておくことをおすすめします。
- 別分野で技能実習生の受入れを行っているので、そちらのサポートも受けたいと考えている
- 技人国など、別の在留資格で働く人材の採用も視野に入れている
- 人材の発掘、採用段階から手厚いサポートを受けたい
それぞれのニーズに合った登録支援機関が存在するため、協議会に加入していることを確認した上で、最も自社にマッチする機関を選びたいところです。
基本的に、自力で外国人材を探して、面接して、雇用手続きを進めるのは非常に手間がかかることですから、人材派遣・紹介会社の中で、登録支援機関として登録しているところを選ぶとスムーズです。
なお、自社で特定技能1号人材にアプローチをかけたいと考えている方は、以下の記事もお読みください。
◎参考記事:特定技能人材向け求人の作り方|具体的な方法や注意点も解説
現在契約している登録支援機関を解約する
新しい登録支援機関と契約するのであれば、これまでサポートを受けていた登録支援機関との契約をどうすべきか、企業は決断しなければなりません。
もし、新しく契約を検討している登録支援機関が、現在自社で特定技能人材を雇用している分野もサポートが可能な場合、あえて2つの登録支援機関と契約を結ぶ必要はないでしょう。
注意点としては、自社が「特定技能外国人支援機関の適正な実施の確保」に関する基準に適合していない場合、別の登録支援機関との委託契約なしには、特定技能外国人を受入れられない点があげられます。
つまり、以下の状況で現在契約している登録支援機関を解約すると、外国人材をいったん手放す形になってしまうのです。
- 自社が特定技能1号人材を支援できない
- 新しい登録支援機関と契約していない
先に現在お世話になっている登録支援機関を解約すると、大事な仕事を任せていた外国人材が現場に入れなくなってしまいますし、人材側も路頭に迷うことになります。
よって、切り替えを検討するなら、先に新しい登録支援機関と契約してから、これまでお世話になった登録支援機関の解約に向けて準備を進めましょう。
なお、登録支援機関の変更について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
◎参考記事:特定技能の登録支援機関を変更したい!手続きの流れや必要書類を解説
2つ以上の登録支援機関に同時に加入できる?
現在お世話になっている登録支援機関にはよくしてもらっているものの、登録支援機関側が「飲食料品製造業の協議会加入を検討していない」というケースでは、企業としても引き続き頼るべきかどうか迷うところですよね。
協議会加入以外の条件が、自社が求める条件とドンピシャの場合、解約するのがもったいないと感じるのは当然と言えるでしょう。
それでは、現在契約している登録支援機関とのつながりを保ったまま、飲食料品製造業の人材支援について新しい登録支援機関を頼ることはできるのでしょうか。
結論を先に言うと、1つの企業が複数の登録支援機関と同時に契約することは可能です。
そもそも、登録支援機関は、特定技能外国人ごとに管理されている機関です。
例えば、「A社の人材①・②が、それぞれα・βの登録支援機関を利用している」という形ではなく、「αの登録支援機関では人材①、βの登録支援機関では人材②をサポートしている」といったイメージになります。
費用感については、すべての機関について一概には言えないものの、サポートにかかる支援委託手数料が1人・1月あたりいくらと決まっていることが多い傾向にあります。
あるいは、支援内容によって料金が細かく決まっている場合もあるため、詳細は契約前に確認しておきましょう。
なお、登録支援機関に支払う費用について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
◎参考記事:登録支援機関に支払う費用|特定技能外国人を雇うなら押さえておこう!
まとめ
飲食料品製造業の協議会に関しては、受入機関となる企業のほか、登録支援機関も加入が必要です。
自社支援ができない場合、協議会に加入している登録支援機関を利用する点に注意しましょう。
これまで利用していた登録支援機関を解約し、協議会に加入している新しい登録支援機関と契約するだけでなく、解約しないまま新規に別の機関と契約する選択肢もあります。
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