特定技能人材のニーズが国内で高まる中、政府は令和5年6月9日の閣議決定により、特定技能2号の対象分野を11分野に拡大すると決定しました。
その後、各分野で試験実施に向けた準備が進んでいますが、製造業分野では2023年10月から特定技能2号評価試験の申込受付を開始し、11月には国内全10会場で試験が行われました。
この記事では、次第に具体的な動きを見せ始めた特定技能2号評価試験について、主に製造業分野にフォーカスしつつ解説します。
各分野における特定技能2号の取得要件
特定技能2号の取得に必要な業務・技能水準に関しては、どの分野でも一定のプロフェッショナル・マネジメント人材であることが求められるものと考えてよいでしょう。
ただし、分野によって詳細は異なるため、以下に大まかな「各分野における特定技能2号の取得要件」をまとめました。
なお、介護分野の特定技能2号に関しては、在留資格「介護」の取得によって長期就労が可能となっているため、拡大分野に含まれておりません。
その他、特定技能人材の無期限雇用について幅広く知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
参考記事:特定技能人材は無期限で雇用できる?現状と将来について考察
製造分野特定技能2号評価試験の概要
先述した各分野の取得要件の中で、分野拡大前から特定技能2号試験が設けられていた建設、造船・舶用工業の2分野を除き、比較的早い動きを見せたのが製造業分野です。
2023年11月から全国10ヶ所で試験を実施しており、業界全体として「外国人材の早期かつ末永い活躍」を期待していることが見て取れます。
以下、特定技能人材の受験について詳しい情報を知りたい方向けに、実施要項や試験に関する疑問点などを解説します。
試験概要
製造分野特定技能2号評価試験の試験区分は、以下の全3区分となっています。
試験の水準は、上級技能者向け試験である「技能検定1級」の合格水準と同等の基準です。
試験は実技問題20問がペーパー試験で出題され、60分以内に回答しなければなりません。なお、正答率は60%以上で合格となり、受験回数にも制限はありません。
ビジネス・キャリア検定3級の概要
製造業分野で特定技能2号を取得するために、製造分野特定技能2号評価試験の取得を目指すのであれば、ビジネス・キャリア検定3級にも合格しなければなりません。3級は「実務経験3年程度(係長・リーダー相当職を目指す想定)」の難易度であり、生産管理プランニング・生産管理オペレーションのいずれかに合格する必要があります。
試験は4肢択一・40問、試験時間110分で行われ、出題数の概ね60%以上の正答で合格となります。試験範囲が幅広いため、標準テキストと過去問題解説集を使った自学自習を基本としつつ、日本人従業員が勉強をサポートする体制を整えるのがよいでしょう。
別ルートである「技能検定1級」とは
特定技能2号取得にあたっては、製造分野特定技能2号評価試験に合格するほか、各技能の技能検定1級を取得する選択肢も選べます。
その場合は、ビジネス・キャリア検定3級に合格する必要がありません。
日本語能力の要件について
製造業分野では、受験生が一定の日本語能力を有している・将来的にリーダーとして働ける人材であるという想定で試験が設けられています。
よって、特定技能2号を取得するにあたり、製造業分野では日本語試験の受験は不要となっています。
製造業の特定技能2号取得における疑問点
特定技能2号取得に関する試験の概要について確認できても、現場に照らし合わせて考えると、色々な疑問が湧いてくる企業担当者の方は多いのではないでしょうか。
そこで、特定技能2号取得について、多くの人材・担当者が疑問を抱くであろう点と、それに対する回答をまとめました。
質問①:特定技能1号から2号へ移行する際の転職について
特定技能1号は、機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分内の技能であれば、同じ区分に限り試験不要で転職が可能です。また、特定技能1号における業務区分・技能にかかわらず、特定技能2号評価試験の合格をもって、資格取得した技能による就労が認められます。
例えば、特定技能1号で「電気電子機器組立て」区分の機械保全に携わっていた人材が、特定技能2号試験で「機械金属加工」の工場板金に合格すれば、その技能で就労できます。ただし、受入れ事業者は実務に関連する研修・OJTに取り組み、労働災害リスクの回避に努めなければなりません。
なお、新しく転職してきた特定技能外国人の研修実績につき、協議会等に報告する必要はありません。
質問②:実務経験について
特定技能2号は、試験合格だけでは在留資格を取得できず、実務経験も必要となります。
具体的には「日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場」において、3年以上の実務経験を積んでいる人材でなければ、受験資格を満たすことができません。
この点の解釈について、企業側が疑問に思う点を以下にまとめました。
製造分野特定技能2号評価試験の申込みについて
製造分野特定技能2号評価試験の受験にあたっては、一定の受験資格を必要とするため、申込みの際は所定の手順を踏んで手続きを進める必要があります。
以下、申込みの大まかな流れや必要書類などについて解説します。
受験申込みから合格証明書が発行されるまで
試験を受験するにあたり、申込みは「特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)ポータルサイト」から行います。受験者本人以外の受付もできますが、団体での受付は行っておらず、電話・郵送・メールでの受付は行っていない点に注意しましょう。
試験日の1週間前になると、マイページで受験票のダウンロードが可能です。受験後3ヶ月以内に、マイページにて試験結果が通知され、合格した受験者は専用の申請ページから合格証明書の発行申請ができます。
受験時は「実務経験証明書」の提出が必要
製造分野特定技能2号評価試験を受験する際は、受験者の実務経験を証明するため「実務経験証明書」を提出する必要があります。
受験者が必要事項を記入する際は、日本人従業員が記載漏れなどを確認できるよう、サポート体制を整えることが重要です。
以下、記載時に気を付けたいポイントをまとめました。
【1 申請人】の欄について
上記の欄には、申請人(受験者)の氏名・生年月日・国籍を記載します。
記載時は、申請者のパスポートまたは在留カードの記載に合わせるようにしましょう。
【2 実務経験】の欄について
実務経験について記載する際は、以下の情報を埋める際に注意しましょう。
(2)就業期間・就業場所
【作成日】と【作成責任者(署名)】の欄について
実務経験証明書の下部には、証明書の作成日と、作成責任者の署名を要する箇所があります。
作成日に日付を記入する際は、申込時点で所属する事業者にて「合計就労期間が3年以上」という条件を満たしていることを確認してから、各種必要事項を記載した後で記入するようにしましょう。
また、作成責任者(署名)の欄は、受験者名を記載しないよう注意しましょう。こちらの欄に記載が必要なのは、申込時点で所属する事業者における、証明書の作成責任者です。
ちなみに、署名は必ず手書きで記載します。
実務経験証明書に関するその他の疑問点
以下、実務経験証明書の作成にあたり、企業担当者が悩みやすいその他の疑問点をまとめました。
まとめ
特定技能2号の取得にあたっては、特定技能1号からの移行がメインルートです。人材を受入れている企業としては、将来にわたり有用な人材に働いてもらうべく、限られたチャンスをものにできるよう、受験対策をしっかりサポートすることが大切です。
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特定技能人材の受入れを真剣に検討しており、各種費用について知りたい方は、以下の記事もおすすめです。