特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

July 18, 2024

更新日

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自動車整備業で外国人を採用するには|在留資格の違い・注意点も解説

目次

日本の少子高齢化に伴い、近年では様々な業種において人手不足が深刻化しています。

自動車整備業もそのような業種に含まれ、自動車整備要員の有効求人倍率は上昇傾向にあり、その背景には様々な事情があるものと考えられています。

日本でこそ自動車整備士として働きたいと考える人は少なくなってきていますが、世界に目を向ければ、日本の高度な自動車整備技術を身に付けるため、日本で働きたいと考えている人材も一定数存在しています。

この記事では、自動車整備の分野で外国人材を採用したい経営者・企業担当者向けに、外国人採用のポイントについて解説します。

自動車整備の分野で外国人が必要とされる背景

近年、自家用車に対する若年者のニーズ・考え方などに変化が生じており、そのような傾向が結果的に国内における自動車整備士の人材供給に悪影響を与えているものと推察されます。

以下、自動車整備の分野で外国人材が必要とされる背景について解説します。

車に対する価値観の変化

近年の若年者世代の中には、車に限った話ではなく「モノを所有すること」をステータスと考えない人が一定数存在しています。

そのような“自動車に興味を持たない若者”が増えたことで、自動車整備士の世代交代がスムーズに進まず、即戦力として外国人材を求める企業が増えてきています。

職業選択の多様化

少子高齢化の影響から、就転職市場が売り手市場となったことにより、働き方や職業の選択肢は多様化しました。

先行きが不透明な時代ということもあり、自分が納得できる働き方がしたいという求職者の意向が強まれば、人気のある職種への応募が集まりやすくなります。 

しかし、国土交通省の資料によると、自動車整備職種の有効求人倍率は平成23年度から上昇しており、令和3年度は「4.55」という非常に高い数値となっています。

自動車整備士という職種を選ぶ日本人労働者は減少傾向にありつつも、引き続き社会の安心・安全を支える上で必要不可欠な職種であることから、多くの企業が人材の募集を止めず外国人材にも注目している状況です。

自動車整備業で外国人を雇うには

外国人材を自動車整備業で雇うためには、どのような形で求人を出し、どのようなものを準備すればよいのか把握する必要があります。

まずは、外国人材を雇う際の大まかな流れ・注意点について解説します。 

求人を出す

外国人材を雇用するためには、まず求人を出して応募者をつのる必要があります。意外かもしれませんが、この点は日本人と基本的に変わりなく、ハローワークに求人票を出したり、外国人材向けの求人サイトに自社求人を掲載したりする形になります。

その他には、外国人の自動車整備士を紹介できる人材紹介会社を利用したり、特定技能制度における「登録支援機関」の中で人材紹介を行っている機関を頼ったりする方法があります。

自社がどのような人材を採用したいのか、外国人採用のノウハウがあるのかによっても選択肢が変わってくるため、求人媒体に関しては検討が必要になるでしょう。

応募者の「在留資格」を確認する

外国人材が応募した後、無事採用され自動車整備士として働くためには、最初の関門として「在留資格」を示すことになります。

在留資格によって、その人材を雇用できる年数・仕事内容・事業所側での対応などが異なってくるため、企業側は書類選考・面接の段階で付属情報や各種書類と付け合わせながら、自社で雇用して問題ないかどうかチェックしなければなりません。

どのような学歴・職歴・書類が必要になるのかは、その在留資格によって異なりますが、いずれの場合にも共通して確認しなければならないものが「在留カード」の情報です。

面接においては原本に目を通し、応募者の氏名・在留資格・在留期限などをチェックして、応募要件を満たしているか確認することが大切です。

雇用契約と在留資格変更

無事採用の運びとなったら、労働条件通知書または雇用契約書を作成・交付します。このとき、内容は外国人の母国語で作成・交付すると、勘違いやトラブルを防ぐことにつながります。その後は、採用した外国人材の在留資格を、自社で働くためのものに変更します。

注意点として、特定技能の場合転職前の企業と同じ職種・同じ在留資格であっても、在留資格は変更の手続きを行わなければなりません。

採用した人材のすべてが自力で手続きできるわけではないため、人材によっては各種手続きのサポートに加えて、住居の確保やライフラインの契約などもサポートが必要になる場合があります。在留資格によっては、一部サポートが義務付けられているケースもあるため注意しましょう。

自動車整備業で採用できる外国人の主な在留資格

自動車整備業で外国人材を採用する場合、その在留資格は大きく以下の3種類と考えてよいでしょう。

  • 特定技能
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 技能実習

以下、上記3種類の在留資格について解説しつつ、その他の可能性についてもご紹介します。

特定技能

自動車整備業は、2019年からスタートした特定技能制度における対象業種です。

特定技能制度とは、端的にいうと「日本で特に人材不足が深刻な業種」の人材確保のため開設された制度で、1号と2号の2種類が存在します。

特定技能1号は、在留期間5年を上限とし、在留資格の更新は1年、6ヶ月、4ヶ月ごとに行います。海外で暮らす家族との帯同は認められておらず、実際に働く場合は受入企業・登録支援機関いずれかによる職場・生活に関する支援が必要になります。

これに対して特定技能2号は、在留期間の上限がなくなり、更新は3年、1年、6ヶ月ごとに行います。職場・生活に関する支援は不要で、配偶者・子どもの帯同が認められています。

 特定技能人材が従事できる業務を分かりやすくイメージすると、一言でいえば「3級自動車整備士資格で担当できる業務内容」と同じような内容になります。

具体的に は、エンジンルームや車の周囲等の日常点検、一定期間の経過とともに行う定期点検、分解整備や電子制御装置整備などの業務に携わる特定整備などがあげられます。

加えて、これらの整備業務に従事する日本人が「通常従事することになる関連業務」に付随的に従事することも差し支えありません。

外国人材が特定技能の在留資格を取得するためには、自動車整備分野の技能に加えて、業務に支障のない日本語能力を身に付けていることを、試験の合格によって証明しなければなりません。

企業側の受入要件

自動車整備業で特定技能人材を受入れる場合、企業側にも一定の受入要件が求められます。

具体的な受入要件は以下の通りです。

地方運輸局長の認証を受けた事業場
(認証工場)であること
自動車整備工場による適正な外国人の受入れを維持するため、一定の設備・従業員数が確保されている認証工場でなければ、特定技能人材の受入れは認められない
所定の人材が所属する登録
支援機関に支援を委託するこ
外国人材の日常生活支援を自社で行うことが難しい場合、以下の者が所属する登録支援機関に支援を委託しなければならない
●自動車整備士1級、もしくは2級の資格を有する者
●自動車整備士の養成施設において、5年以上の指導に係る実務経験者
雇用条件と社会保険等を
完備していること
日本人と同等以上の雇用条件を提示し、社会保険にも加入させなければならない
自動車整備分野特定技能協議会に加入していること●主に情報交換・外国人雇用状況の監督のため
●加入は無料で会費等は発生しない

なお、特定技能についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

 特定技能とは?ビザの申請方法と必要な書類を紹介

 技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務の在留資格は、それぞれの頭文字をとって「技人国」と呼ばれることもあり、日本の経済社会の活性化に資する人材を確保する目的で創設された経緯があります。

日本で働く外国人材の在留資格の中では比較的見かけやすい部類に含まれ、自動車整備業に関しても、こちらの在留資格を持つ人材が採用されるケースは珍しくありません。

在留期間は5年、3年、1年または3月となっており、更新が可能です。また、原則10年以上の在留で、永住許可が認められるケースがあると想定されます。

技術・人文知識・国際業務は、特定技能よりも高度な業務を任される在留資格のため、例えば次のような条件で業務を担当することが想定されます。

・日本の自動車整備学校を卒業後、2級自動車整備士以上の資格を有していること
・整備主任者になる予定のポジションに就くこと

また、雇用する側も、人材に対して「自動車整備士としての専門的な知識を要する仕事」を用意しなければならず、給与も同じ業務に従事する日本人と同等以上という条件が付きます。ただし、仕事を覚えるため、単純労働に一定の期間従事する場合は、その限りではありません。

その他、技術・人文知識・国際業務について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは|要件や申請の流れ・注意点も解説

技能実習

技能実習は、外国人技能実習制度において、外国人材が「技能実習生」として日本に滞在するための在留資格です。

技能実習の区分は第1号・第2号・第3号に分かれ、それぞれの滞在年数・作業内容は以下の通りです。

区分滞在年数作業内容
第1号
1年点検整備作業
第2号2-3年分解整備作業
第3号4-5年故障診断作業

技能実習生を日本に招く本来の意図は、日本の国際貢献として技術・技能・知識を開発途上国に伝え経済を発展させることでした。

しかし、賃金未払い・労働環境の劣悪さなどを苦にして失踪する技能実習生が増えるなど、制度の人権上の問題点が指摘され続けたことにより、制度そのものは廃止される運びとなりました。

それに代わって、新しく「育成就労制度」が創設され、その目的も人材確保・人材育成に変更されます。

なお、新制度の施行時期は、早くとも2026-2027年頃になるものと予想されています。

 その他の在留資格

特定技能、技術・人文知識・国際業務以外の在留資格で、自動車整備業で働くケースを想定した場合、就労制限が設けられていない在留資格の外国人材も採用対象となります。

いわゆる「身分系」の在留資格と呼ばれるもので、以下4種類が該当します。

  • 定住者
  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等 

上記の在留資格は、基本的に当該外国人が日本で一定期間過ごすことを前提として設けられていることから、職種に特段の制限はないものと考えてよいでしょう。

身分系の在留資格について知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

在留資格「定住者」とは|特徴や雇用するメリット・注意点を解説

自動車整備業で外国人を雇うメリット・注意点

外国人材を整備士として雇用できた場合、日本人整備士にはないメリットを享受できる可能性がある反面、人材定着の観点から見て注意点もいくつか存在します。

以下、自動車整備業で外国人を雇うメリット・注意点について解説します。

外国人を雇うメリット

自動車整備業において外国人材を雇うメリットとしては、主に次のようなものがあげられます。

・即戦力確保)
・幅広い業務を任せられる
・外国人顧客の開拓

特定技能、技術・人文知識・国際業務いずれかの在留資格を持っている外国人材は、一定の日本語能力・実務能力を身に付けた状態で入社するため、実質的に即戦力を確保したのと同じイメージで業務を任せやすいでしょう。

また、任せられる業務の幅も比較的広いため、柔軟に配置を検討することも可能です。

語学スキルによっては、日本国内に在留していて車に乗っている外国人顧客の対応ができるチャンスも生まれるため、これまでは想定していなかった顧客を開拓できるメリットもあります。

今後、在留外国人の数が増えることにより、そのようなニーズはさらに増すものと推察されます。

外国人を雇う際の注意点

外国人整備士を雇う場合は、日本人の場合と異なり、以下の点に注意する必要があります。

  • 社内で協力体制を整える
  • 丁寧にコミュニケーションをとる
  • 転職のリスクがある

外国人材にとって日本は異国であり、職場のルール・慣習の中には理解が追い付かないものも多いはずです。

日本人スタッフも、外国人材に対する不安・疑問を持っていることが想定されるため、採用前に事前説明を行うなどしてお互いが協力し合える体制を整えることが大切です。実際に外国人材が働き始めてからは、宗教や文化の違いから、他の日本人スタッフが困惑することも考えられます。日本人にとって当たり前のことが、外国人材にとっては意味不明に感じられることもあるため、丁寧にコミュニケーションをとって共通理解を構築できるようにしたいところです。 

何かトラブルが起こったり、外国人材が不安・不満を抱えた状態を放置したりすると、より条件の良い別の会社に転職してしまう可能性もあります。

せっかく入社してくれた優秀な人材を逃さないよう、採用前はもちろん、採用後のケアも定期的に行いましょう。

まとめ

自動車整備業界は人手不足が深刻化しており、有効求人倍率も上昇傾向にあります。その背景には、若者の車に対する価値観の変化やビジネスモデルの変化、職業選択の多様化などがあげられます。

そこで、外国人材の採用が解決策の一つとして注目されていますが、特定技能や技術・人文知識・国際業務といった在留資格によって任せられる仕事が異なります。

自社に合った外国人材を獲得したいと考えているものの、外国人材を雇用するノウハウがないとお考えの企業担当者様は、ぜひFactory labの人材紹介サービスをご利用ください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。