在留資格「特定技能」の対象分野は拡大傾向にあり、令和6年(2024年)3月29日には、新たな受入対象分野として「プラスチック製品製造業」を含む新たな業種・業務区分が加わる閣議決定が行われました。
プラスチック製品製造業においては、技術者の育成が重要課題の一つとなっている反面、新たな人材確保や育成が難しい傾向にあり、外国人雇用を視野に入れる必要がある企業も増えてきています。
そのような中、特定技能においてプラスチック製品製造業が受入対象分野に加わったことは、業界全体で新たな人材採用の可能性を模索するきっかけになるでしょう。
この記事では、特定技能にプラスチック製品製造業が追加されたことの重要性について触れた上で、雇用可能な具体的な産業分類についても解説します。
近年のプラスチック製品製造業の業界動向
製造業に共通する部分ではあるものの、近年のプラスチック製品製造業においては、企業が対処しなければならない課題が数多く存在している状況です。
それらの課題を含め、業界の動向を正しく把握することで、特定技能の受入対象分野追加がどれほど大きな意味を持つのかが見えてくるはずです。
プラスチック製品製造業の業界全体の動向
プラスチック製品製造業の分野は、近年でも製品出荷額が右肩上がりの状況であり、短期的には堅実な成長が見込まれています。
その一方で、原料の石油価格高騰・日本人の人口減少といったリスクを抱えており、消費者のエコ意識の高まりを受けてプラスチック離れが進んでいるという一面も無視できません。
特に、プラスチックの再利用や有効利用、生分解性プラスチックへのニーズは高まっており、このようなニーズに対応できない企業は長期的に見て淘汰される可能性が高いでしょう。
事業所数や従業員数の減少も、今後の業界動向を見通す上で無視できないポイントです。
“ヒト”に関わる問題も目立つ
人材確保や人材育成など、いわゆる“ヒト”関連の問題が目立ってきていることも、プラスチック製品製造業における重要課題の一つに数えられます。
業界全体でISO導入にともなう業務細分化が進み、そのような状況下で人材育成が行われる中、特に技術者の育成が課題となっています。
先述した通り、事業所数や従業員数が減少する中、企業としても何とかして人材を確保しようと動きをかけています。
新規・中途の採用を強化するのはもちろん、シニア層や女性など、様々な人材の活用に取り組んでいる企業も見られます。
それでも、自社で必要と考える人員の確保につながらず、外国人を雇用する企業も一定数存在しています。
しかし、これまでプラスチック製品製造業では「技能実習生」が主な雇用の対象となっていたことから、雇用上の問題が散見されるケースも少なくありませんでした。
加えて、新型コロナ禍を経て雇用形態も多様化する傾向にあり、社員個人の働き方やライフスタイルの多様化とともに、育成手法も複雑化の傾向にあります。
このような状況において、採用時点で即戦力となり得る特定技能人材を確保できる状況になったことは、業界の人材不足解消に大きく貢献するものと考えられます。
プラスチック製品製造業で「特定技能人材を採用できる」ことの重要性とは
特定技能人材をプラスチック製品製造業で採用できるようになったことは、過去の歴史をさかのぼって考えると、ある意味では業界にとって“画期的”ともいえるほど重要性が高い出来事の一つです。
以下、「特定技能」という在留資格にどのような可能性があるのか、技能実習との違いに触れつつ解説します。
在留資格「特定技能」とは
在留資格「特定技能」は、労働力確保が難しい一部の産業・分野において、一定の専門的知識・技能を有する外国人が働くための在留資格です。
2024年11月現在、次の16分野において、特定技能人材の雇用・就労が認められています。
プラスチック製品製造業に関連する業務は、工業製品製造業のいくつかの区分に追加されており、該当する製造・組立工程の作業に特定技能人材が従事できるようになります。
在留資格「技能実習」との違い
在留資格「技能実習」は、特定技能とよく比較される在留資格の一つです。
この在留資格が生まれた背景には、東南アジアをはじめとする国から外国人を受入れ、日本企業で働きながら技能・技術を取得した後、それらを母国へ移転してもらうというミッションがありました。
そのような事情から、技能実習の在留資格で日本に滞在できる期間は限られており、最長で5年(技能実習3号)が在留期間となります。
よって、自社で外国人材に末永く働いてもらうことを前提に考えるのであれば、他の在留資格を取得した外国人材を採用する必要があります。
また、技能実習制度は制度の本旨とその実態がかけ離れていることが社会問題となっており、多くの外国人実習生が実質的に労働力として働かされ、転退職も不自由であることから失踪者が多いという現実があります。
そこで、政府は新たな在留資格「育成就労」を新設する方針を決定し、2027年からのスタートを予定しています。
プラスチック製品製造業で特定技能雇用が可能になるメリット
プラスチック製品製造業において特定技能人材を雇用できるようになる最大のメリットは、おそらく在留期間の上限がなくなることでしょう。
特定技能という在留資格は、その技能のレベルによって「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分かれており、特定技能2号は1号に比べて複数の点で優遇されています。
それら優遇点のうちの1つが「在留期間に上限がない」ことで、特定技能1号には上限5年という在留期間が設けられていますが、特定技能2号は定期的に更新さえすれば在留資格の上限なく日本で働けます。
在留年数に上限がない分、企業は人材にしっかり仕事を教え込んだ上で、長期的な戦力として雇用し続けることができるのです。
先述した通り、プラスチック製品製造業においては、業界全体で人材の雇用・育成に課題を抱えている状況です。
人材確保のため、長期的な視点で外国人材の雇用・育成に注力したいと考えている企業にとって、特定技能人材を雇用するメリットは非常に大きいものと考えられます。
かつては技能実習生のみ雇用可能だった
特定技能が対象分野となる前まで、プラスチック製品製造業において、外国人を作業要員として採用可能だった在留資格は「技能実習」のみでした。
具体的には、次のような作業に従事することが認められていました。
過去に自社で技能実習生を雇用したことがある企業では、技能実習生の在留期間に上限があったことから、常にタイムリミットを想定して採用活動を進めなければならない状況に悩まされたものと思われます。
しかし、今後は技能実習が育成就労に切り替わり、特定技能人材も採用できるようになるため、長期的な視点で人材のマネジメントを進められるでしょう。
プラスチック製品製造業で特定技能が担う製造品・作業とは
プラスチック製品製造業で特定技能人材の雇用が可能になることは分かったものの、具体的にはどのような製造品・作業が対象になるのか知りたい方も多いはずです。
詳細な作業は製造品により異なりますが、大まかには次のようなイメージでとらえるとよいでしょう。
特定技能が雇用可能となる具体的な産業分類
プラスチック製品製造業において、特定技能が雇用可能となる具体的な産業分類(事業所)は以下の通りです。
※参照元;特定技能外国人材制度(工業製品製造業分野)ポータルサイト「18-プラスチック製品製造業」
まとめ
プラスチック製品製造業においては、これまで技能実習生しか作業に従事できませんでしたが、今後は特定技能人材の雇用も視野に入れることができます。
自社で採用した人材が特定技能2号になれば、優秀な人材を手放す心配なく、自社で長期的に働いてもらえるでしょう。
しかし、これまで自社が特定技能人材を雇用した経験がない場合、優秀な人材に巡り合えるか、雇用体制を整えられるか不安を感じるかもしれません。
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