「外国人労働者の不法就労」と聞くと、悪徳企業が行う悪質な行為という印象を持つ方は多いかもしれません。
しかし、故意でなくとも「外国人労働者の働き方に何らかの問題がある」企業は、その時点で不法就労助長罪に問われるかもしれません。
近年では、少子高齢化が進む中で労働力を確保するため、多くの企業が外国人労働者の雇用を進めており、知らず知らずのうちに法を犯している可能性も否定できません。
この記事では、不法就労のパターンや企業にとってのリスクに触れつつ、外国人雇用において注意したい「不法就労助長罪」について解説します。
そもそも「不法就労」とは?
日本における外国人材の不法就労とは、端的にいうと「日本国内で働ける在留資格を持っていない人が、在留資格を取得せず日本で働くこと」をいいます。
具体的には、次のような形で働く外国人材が、不法就労に該当します。
※出典元:厚生労働省 鹿児島労働局|Q6 不法就労者とはどのような場合をいいますか。
外国人材の不法就労を理解する上で重要なことは、外国人材が「在留資格を取得していたとしても対象となる可能性がある」点です。
例えば、家族滞在ビザを持つ外国人材を自社で働かせる場合、資格外活動許可を得ていなければ違法となります。
そのため、外国人雇用のノウハウが自社に蓄積されておらず、日本人と同じような感覚で採用手続きを進めてしまった場合、それを理由にペナルティを受けることも十分考えられます。
外国人材を雇用する際は、どういうケースが不法就労に該当するのか、正しく理解することが大切です。
外国人材の不法就労に該当する3パターン
外国人材を雇用している企業が、国から不法就労助長罪に問われる可能性があるケースとしては、大きく分けて以下の3パターンがあげられます。
不法に日本に入国している外国人材を働かせたパターン
多くの人がもっともイメージしやすいタイプのパターンとしては、本来であれば日本に入国できない外国人材を働かせているケースが該当するでしょう。
具体的には、母国等で用意した偽造ビザを使って入国した外国人や、過去にビザは取得したものの在留期間を過ぎてしまっている外国人などが当てはまります。
外国人材が持っている在留カードが偽物であるなど、人材側に騙されるリスクはもちろんありますが、企業が特に注意しなければならないのは、在留期間を過ぎてしまっている外国人材を雇用しているケースです。
正規のルートで在留資格を取得して入国している外国人材でも、在留期間更新を“うっかり”忘れただけで不法滞在の状態となってしまうからです。
オーバーステイの状態になると、外国人材が引き続き日本で働けなくなるおそれがあるほか、企業へのペナルティも懸念されます。
外国人材を雇用した後は、外国人材の在留資格更新のタイミングを押さえておき、期日が近くなったら必要に応じて人材側にリマインドを行うなどの対応も実施しましょう。
就労NGの在留資格を持つ外国人を働かせたパターン
一口に在留資格といっても複数の種類があり、日本の企業で働ける在留資格は限られています。
原則として就労が認められない在留資格で入国している外国人は、資格外活動許可を受けるなどの例外を除いて、企業等で就労させてはいけないルールとなっています。
例えば、次のような在留資格は、原則として日本国内での就労が認められていません。
外国人材を雇用する際は、就労可能な在留資格を取得しているかどうか、しっかり確認することが重要です。
在留資格で許可されている範囲を超えて就労させたパターン
日本国内での就労が認められている在留資格であっても、厳密には活動範囲が詳細に定められています。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能」は、それぞれできる仕事内容が異なります。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人材は、基本的に知的労働に従事させなければならないため、通訳や語学教師、エンジニアなどの職種で採用する分には問題ありませんが、現場での清掃など単純労働は原則として認められません。
逆に、特定技能の場合は該当分野であれば幅広い業務に従事できるケースが多いものの、分野を超えての就労は認められません。
それぞれの違いについて、より詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
【参考記事】
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは|要件や申請の流れ・注意点も解説
外国人材の不法就労のリスクを正しく知ろう
自社で働く外国人材が不法就労に該当する場合、その人材を雇用している企業は「不法就労助長罪」に問われるおそれがあります。
自社の不法就労助長罪が成立すると、経営に多大なダメージを与えることが予想されるため、企業は不法就労のリスクを正しく理解した上で予防に注力しなければなりません。
以下、自社で働く外国人材が不法就労に該当した場合のリスクについて、主なものをいくつかご紹介します。
外国人材が罪に問われる
外国人材が在留資格を更新しなかった場合、その理由に応じて以下の罰則が適用される可能性があります。
自社で雇用する外国人材が不法就労助長罪に該当してしまうと、これまで真面目に働いてきた人材を失うだけでなく、外国人本人もつらい思いをすることになります。
悲しい結末を迎えないためにも、人材側には在留資格更新の定期的なリマインドを行い、安心して働いてもらえるようサポートしましょう。
企業側にも罰則が適用される
不法就労者を雇用した企業には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科され、両方が科されるケースもあります。
また、新たな在留資格「育成就労」の設置にともない、2025年6月からは罰則が5年以下の懲役、罰金が500万円以下に厳罰化されるため、外国人材を雇用する企業は過失も含め確認を徹底する必要があるでしょう。
その他、罰則が適用されるケース
これまでお伝えしてきた通り、不法就労に関しては、外国人本人と雇用企業が罰則の対象です。
加えて、次のようなケースも処罰の対象となります。
上記のケースにおいては、仮に自社が業者等に騙される立場だったとしても、自社が処罰の対象になり得ます。
企業側の知識不足や確認不足が考慮されず、罰則が適用されることも十分考えられるため、採用時は実績豊富な人材紹介サービス等を利用した方が安心です。
外国人材の不法就労防止にあたり、企業が知っておきたいポイント
外国人材の不法就労を、企業の立場で防止するためには、過失も含め防止策を講じることが重要です。
そのためには、以下のポイントを押さえて採用活動を実施することが大切です。
「何ができる」在留資格なのか把握した上で採用する
どのような企業であっても、外国人材の採用にあたっては、自社でどのような仕事を任せるのか明確にした上で採用しましょう。
在留資格で定められた就労範囲はそれぞれ異なるため、任せる仕事から逆算して、どんな在留資格を持つ外国人材が適任かを判断する必要があります。
仮に、管理や事務などの知的労働を任せたい場合、技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ人材を雇用しようと考えるかもしれません。
しかし、実際のところその判断だけでは不十分であり、エンジニア経験を持つ人材を経理職に配置しようとする場合は、会計システムの開発等に関わったなどの経験が求められる可能性があります。
また、在留資格の活動範囲に関しては、経営者・人事担当者だけが把握していても意味がありません。
現場で一緒に働くスタッフや仕事を振る責任者が、正しく活動範囲を理解していないと、活動範囲を超えた仕事を任せる可能性があるからです。
採用時点での書類チェックなどはもちろん大切ではありますが、まずは社内の意識を統一させるよう心がけましょう。
在留カードの真偽を見極める
実際に外国人材を採用する場面では、在留カードの真偽を見極めることが重要なポイントになります。
以下のポイントを確認することで、その在留カードが正規のものか、それとも偽造の疑いがあるのか判断できます。
在留カードの真偽を見極め、上記内容に問題がなさそうなら、在留カードの中身をチェックしていきます。
チェックにあたり、特に重点的に確認が必要なポイントとしては、以下のようなものがあげられます。
万一の状況を想定しておく
自社で確認を徹底したとしても、万一の状況が起こることは十分考えられるため、事前に以下のような状況を想定して対応マニュアル等を準備しておきましょう。
- 就労可能な在留資格を持つ外国人材が不法就労に該当していた場合
- 外国人材が在留・就労可能な在留資格を持っていないことが判明した場合
これらのケースにおいては、大前提として「不法就労状態を発見した時点で就労停止・自宅待機とする」ことが重要です。
その上で、外国人の労働問題に詳しい弁護士や、長年にわたり外国人の就労支援サービスを提供する企業など、専門家に対処方法を相談することをおすすめします。
外国人材紹介サービスの利用を検討する
自力で一から外国人材を雇用するのは、リソースがないと難しい傾向にあります。
当然、人材選考や採用手続きにおけるミスのリスクも高まることが予想されるため、自社に外国人採用のノウハウがない場合は、外国人材の紹介サービスを利用してみましょう。
まとめ
不法就労者を自社で働かせることは、たとえその事実を企業が知らなかったとしても、罰則の対象となります。
よって、企業は採用段階からリスクをしっかり把握した上で、外国人材の採用に踏み切る必要があります。
当社Factorylabは、特定技能支援事業、技術・人文知識・国際業務人材の紹介・派遣事業など、外国人材に関する様々なサービスを提供しております。
自社による外国人採用が難しいと感じており、実績豊富な外国人材紹介サービスをお探しの企業担当者様は、この機会にぜひ一度ご相談ください。