少子高齢化による人手不足につき、特定技能外国人の受け入れにご関心があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特定技能外国人の制度について耳にしたことはあっても、実際に受け入れをすると費用や受け入れ体制の整備をどのようにすべきか、気になるところかと思います。
この記事では、以下の項目について解説します。
- そもそも特定技能外国人とは
- 特定技能外国人を受け入れる際の費用
- 特定技能の費用で外国人負担にできる費用
- 特定技能外国人の採用にかかる費用相場
- 特定技能外国人の受け入れ費用を抑える方法と注意点
特定技能外国人の受け入れにおける企業側で必要な費用や注意点についてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
そもそも特定技能外国人とは
在留資格「特定技能」は、深刻な人手不足に陥っている、12の産業分野において、一定の技能を有する外国人を雇用できる在留資格となっています。
外国人労働者へ単純作業を認めた在留資格として、2019年4月に新たに創設されました。
「特定技能」には、1号と2号の在留資格があり、該当する特定産業分野や求められる知識、技能が異なります。
具体的な産業分野の違いを以下でまとめました。(2023年6月9日、政府は特定技能2号の受入れ分野の拡大を発表しました。詳細はこちらの記事をご参照ください:特定技能2号が業種拡大へ!事業主が押さえておきたいポイント)
上記のように、特定産業分野において1号は相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務、2号は熟練した技能を要する業務に従事することができます。
その他にも、特定技能の1号と2号では、認められる在留期間や必要な技術水準等が異なります。
具体的な内容は以下の通りです。
(参考:特定技能総合支援サイト|特定技能制度とは)
▶関連記事:特定技能とは?ビザの申請方法と必要な書類を紹介
特定技能外国人を受け入れる際の費用
特定技能外国人を受け入れる際の費用は、大きく以下の4つに分類することができます。
- 人材紹介料金
- 送出機関にかかる費用
- 特定技能外国人にかかる費用
- 特定技能の申請と支援にかかる費用
各費用の概要について、順番に説明します。
人材紹介料金
登録支援機関や人材紹介会社を活用して、特定技能外国人を採用する場合は、人材紹介料金が発生します。
上記に加えて、特定技能外国人の義務的支援を登録支援機関に委託する場合は、支援委託費が必要です。
義務的支援とは、企業が受け入れる特定技能外国人に対して実施する必要がある支援のことをいい、日本の法令で定められています。
主な内容は以下の通りです。
義務的支援の提供には、外国人が理解できる言語で説明するなどのノウハウが必要なため、登録支援機関を活用する企業がほとんどとなっています。
●人材紹介料金の相場:20~50万円程度
●登録支援機関への委託費用:毎月2〜4万円程度
送出機関にかかる費用
国外から特定技能外国人を呼び寄せる場合、国によっては、送出機関へ支払う費用が発生します。
送出機関にかかる費用の中には、日本行きの航空券が含まれている場合と含まれていない場合があります。
送出機関ヘの費用が発生する理由としては、「送出機関を必ず通さなければならない」という二国間協定(MOC)を締結している国があるためです。
送出機関を通さなければいけない国は以下の4カ国です。
- ベトナム
- フィリピン
- カンボジア
- ミャンマー
どのくらいの額を支払う予定なのか、事前に確認しておくとよいでしょう。
●送出機関の相場:20~60万円程度
特定技能外国人にかかる費用
企業が特定技能外国人本人に対して支払う費用には、主に以下のようなものがあります。
- 渡航費用
- 給与
- 家賃補助
- 就労前健康診断
それぞれの費用を詳しく解説していきます。
渡航費用
外国人が日本に入国するための渡航費用です。
渡航費用は、技能実習とは異なり、基本的に本人負担でも問題ございません。
ただし、日本と送出国の二国間協定(MOC)によって受け入れ企業負担が定められている場合や、送出機関が受け入れ企業に費用負担を求めてくる場合がありますので、事前に確認しておいた方が良いでしょう。
また、たくさんの求人がある中で、渡航費を負担してくれる企業は負担しない企業よりより魅力的に見えます。そのため、海外からの採用の際には、航空券代が企業負担のケースがほとんどです。
●渡航費用の相場:4〜10万円程度
▶関連記事:特定技能外国人は求人票で給与以外に重視しているものとは?
給与
給与は、同程度の技能を有する日本人と同等以上の金額を支払う必要があります。
賞与や福利厚生、各種手当も日本人と同様に付与しましょう。
特定技能外国人への給与に差別的な扱いをしてはならない旨は、「出入国管理及び難民認定法」に規定されています。在留資格の申請時に、出入国在留管理庁から雇用条件書等を詳細に確認されますので、ご注意ください。
家賃補助
特定技能外国人に対する生活支援として、家賃補助費用がかかる場合もあります。
家賃補助だけでなく、賃貸物件の初期費用や家具・家電の準備に関しても、一部でも補助することを検討しておくとよいでしょう。
家賃を補助することで、特定技能外国人にとってより魅力的な求人とすることが可能です。
特に、過去に技能実習生として相部屋で長く生活していた外国人は、1人部屋を望むケースが多く見られます。
▶関連記事:1号特定技能外国人の住居確保は企業の責任!支援の種類や注意点を解説
就労前健康診断
特定技能外国人の就労前健康診断費の支払いも必要となります。特定技能制度にて、就労前に健康診断を受けさせることが義務付けられているためです。
もし、すでに特定技能の在留資格を持っている方を転職者として受け入れる場合は、従前の企業にて、直近で受診した健康診断結果表があれば、そちらで代用可能です。
特定技能の申請と支援にかかる費用
先の登録支援機関への委託費用以外にも、在留資格「特定技能」の初回申請費用、年に1度の在留期間更新申請費用も登録支援機関や行政書士法人へ委託する場合は、手数料が発生してきます。
特定技能1号は、5年間の在留期間がありますが、実際には毎年、在留期間を更新しなければなりません。
在留資格申請や更新は、準備すべき書類が多く手続きが複雑なため、専門知識を有する外部の行政書士や登録支援機関に委託する企業がほとんどです。
●在留資格にかかわる費用の相場:申請費用:10〜20万円、更新費用:4〜8万円
特定技能の費用で外国人負担にできる費用
特定技能の費用において、一部の費用は外国人負担にできる場合もあります。
法令上は、どちらも外国人負担が可能ですが、実際には企業側が負担する場合も多いのが現状です。
渡航費用
基本的には、来日や帰国する際の渡航費用は、外国人負担で問題ないとされています。
二国間協定や送出機関からの要請がない場合は、外国人本人の了承を得られれば、渡航費を企業が支払う必要はありません。
しかしながら、特定技能での就労を検討している外国人にとって、渡航費が企業負担である求人の方が魅力的ではあるのは事実です。
渡航費は、企業が負担する前提で考えておくほうがよいでしょう。
住居の準備費用
住居の初期費用や準備費用も、法令上は外国人負担で問題ないとされています。
外国人本人が自ら住居を準備することを了承している場合は、企業として対応する必要はありません。
日本国外から呼び寄せる場合には、外国人本人が物理的に住居を準備することができないため、事前に企業側が住居を準備しておく必要があります。
▶関連記事:【Q&A特集】事例紹介ー特定技能の「住居支援」に関して、私たちはこうやった!
特定技能外国人の採用にかかる費用相場
特定技能外国人の採用にかかる費用相場は、採用しようとしている外国人の居住地や在留資格、従事する産業分野で異なります。
ここでは、これまで説明してきた費用項目とともに、さまざまなパターンで採用する場合の費用相場をご紹介します。
国外にいる外国人を特定技能として採用する場合
日本国外にいる外国人を「特定技能」として採用する場合の費用相場は、以下のとおりです。
実際の費用は、利用する送出機関や登録支援機関によって異なる場合があります。
例えば、人材紹介料金が送出機関への手数料に含まれているケース、事前ガイダンス等の費用が登録支援機関による在留資格申請費用に含まれているケースなどがあります。
日本国内にいる外国人を特定技能として採用する場合
日本国内にいる外国人を「特定技能」として採用する場合の費用相場は、以下のとおりです。
国外から採用する場合と比べて、送出機関への手数料や入国時の渡航費用が不要なため、安価となっています。
採用する特定技能外国人が望んだ場合は、住居の準備も対応が必要となり、別途費用が発生する可能性があります。
技能実習2号から特定技能1号へ移行する場合の費用相場
既に企業側で雇用している「技能実習2号」を「特定技能1号」へ移行する場合の費用相場は、以下のとおりです。
既に雇用している人材を活用するため、人材紹介料金が発生しません。
技能実習2号から特定技能1号へ移行する場合は、法令上では一時帰国を義務付けられていないため、渡航費も発生しません。
建設業で特定技能を雇用する場合の費用相場
建設業で特定技能を雇用する場合の費用相場は、以下のとおりです。
建設業の場合は、追加費用が発生します。
在留資格申請の前に国土交通省から許可を得る必要があるため、申請書類作成費用等を支払わなければなりません。
国土交通省が指定した業界団体への加盟も必要なため、加入団体の年会費や月会費が発生します。
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への受け入れ負担金も掛かります。この負担金は、特定技能外国人の資格取得経路に応じて、額が異なります。
▶関連記事:建設業の特定技能 | 受入要件や従事する業務・雇用の流れなどを解説
特定技能外国人の受け入れ費用を抑える方法と注意点
続いて、特定技能外国人の受け入れ費用を抑えるための方法と失敗しないための注意点をまとめていきます。
雇用中の従業員から人材を紹介してもらう
すでに雇用している特定技能外国人から人材を紹介してもらい、人材紹介業者を介さずに人材を雇用できると、人材紹介料金を支払う必要がありません。
なお、すでに雇用している技能実習生を特定技能1号へ移行する場合も、人材紹介料金は不要です。
渡航費を抑えるには、「留学」や「技能実習」等の他の在留資格で既に日本国内に在住している外国人を雇用できるとよいでしょう。
自社で手続きを行う
登録支援機関を使わずに、企業側で必要な支援や手続きを行うと費用を抑えることができます。
しかし、外国人受け入れや手続きのノウハウがない場合は、手間がかかるうえ法令違反のリスクもあるため、おすすめしません。
自社のリソースや支援の内容を考慮した上で、業務を委託することをおすすめします。
離職率を減らす
特定技能外国人の離職率を減らすことができれば、さらに新しい人材を採用する際の人材紹介料金や、在留資格申請費用、住居準備金等を支払う必要はありません。
企業側で働きやすい環境を整備して、特定技能外国人の離職を減らすように心がけましょう。
採用した外国人に対して、必要な手続きへの支援を丁寧に行うとともに、渡航費や生活支援費を可能な限り企業側で負担することで、採用後の辞退や離職を防ぐことができます。
▶関連記事:外国人の定着率向上について|技能実習生など人材ごとのポイントも解説
まとめ
特定技能外国人を雇用する場合、日本人採用とは異なる費用が発生します。
特定技能外国人への支援業務にかかる費用は、支援を外部機関に委託するかどうかによって、費用負担額が大きく異なります。
自社で全て実施する場合には、費用は抑えられますが、法令違反のリスクが伴うため、慎重に検討しましょう。
支援業務に対するノウハウがない企業は、外部機関を活用するのがおすすめです。
ファクトリーラボ株式会社では、海外人材の課題解決をお手伝いしています。人材不足に悩んでいる方は、ぜひお問い合わせください。