製造業の人手不足は、少子高齢化が続く日本において、深刻な状況を迎えています。
外国人材の採用も含め、人員の確保は当然重要なポイントですが、同時に「必要な人員を確保できない」ケースも想定した対応が必要とされています。
この記事では、製造業の人手不足をテーマに、
上記の内容についてご紹介します。
製造業が人手不足になる原因
少子化が進む日本に置いて、生産年齢人口は減少し続けています。
企業としては、自社に入社する若手社員の減少だけでなく、これまで現場を支えてきたベテラン人材が退職するリスクにも注意を払わなければなりません。
自動車メーカー大手・ホンダでは、2021年7月末~2022年3月末までにおよそ3,200人が依願退職しており、その多くが早期退職制度を利用しています。ホンダの例に限った話ではなく、技能人材をはじめとする、製造業従事者の減少は避けられない事態となっています。
とはいえ、少子高齢化の影響は、必ずしも製造業に限った話ではないはずです。
にもかかわらず、なぜ製造業の人手不足は深刻になっているのでしょうか。
以下、製造業が人手不足になりがちな原因について、主なものをいくつかご紹介します。
給与の額や昇給・評価に不満がある層が多い
製造業が人手不足になりがちな理由の一つとして、従業員が給与の額や昇給・評価に不満を持っているケースがあげられます。
求人広告サイトを運営するディップ株式会社が、製造業に従事している人を対象に行ったインターネット調査によると、製造業を継続したいとは思わない(辞めたい)理由としてあてはまる項目につき、調査対象の年齢を問わず以下の回答が見られました。
なお、その他に用意されていた項目は、以下の通りです。
上記の項目の中で、勤続年数1年未満の人は「仕事のやりがいがない」・「職場環境が整っていない」・「募集時に思っていた仕事内容と異なっている」といった回答が上位を占めていました。しかし、勤続年数1年~5年未満、5年以上の人は、いずれも「給与(収入)が仕事内容の割に不十分である」という回答がトップの割合となっています。
このことから、勤続年数が長くなればなるほど、製造業に従事する人は給与への不満をつのらせる傾向にあると言えそうです。
また、勤続年数1年未満の人の中には、選択肢の中から「雇用が安定していない」を選んだ人が一定数存在しています。この結果から連想できる働き方としては、例えば自動車製造業の期間工などがあげられます。期間工として働く人は、月収や各種手当こそ比較的高めの水準ではあるものの、正社員と比較して雇用が不安定な状況下で働かなければなりません。
他にも、不況その他の理由で製品需要が減少して工場を稼働できなくなるなど、世界情勢の影響を受けやすいのです。
製造業よりも魅力的な仕事に人が集まる
新型コロナ禍においては、解雇・雇い止めなどの理由から、製造業を離れざるを得なかった人は多いはずです。
厚生労働省がまとめている情報「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について(令和4年10月28日現在)」によると、感染拡大が始まってからの解雇等見込み労働者の数は、累積人数が137,928人となっています。
同情報によると、解雇等見込み労働者数につき、増加数の大きな業種として製造業は8位にランクインしています。また、累計数の大きな業種としては、製造業が1位となっています。
こういった情報を読み解く限り、製造業を取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ません。
その一方で、リモートワークやクラウドソーシングなど、個人が自宅で仕事ができる環境が急速に整備されていったことから、人によっては未経験でもIT等の分野に転職することを検討できるようになりました。
従業員として働きながら、スキルマーケットにサービスを出品するなど、製造業に従事する人の働き方も多様化しています。事務職として培ったスキルがあるなら、週末にデータ入力の副業に取り組むだけでも、収入をアップさせることができるかもしれません。
企業としては、自社の従業員が製造業よりも魅力的な仕事を知ってしまい、将来的に職場を離れるケースも想定しておく必要がありそうです。
負のイメージと技術継承の失敗
一般的なイメージとして、製造業にはマイナスのイメージが付きまといます。
いわゆる3K(きつい・汚い・危険)が該当し、職場によっては24時間稼働で夜間のシフトを任されることもあるため、どうしても他の仕事に比べてイメージが悪くなってしまうのです。作業によっては、作業服が汚れやすかったり、薬品や油の臭いが強かったりして、それが働き手のストレスになることもあります。
実際には職場によって差がある話ではあるものの、一度業界全体に付いた悪いイメージを払しょくするのは、決してかんたんなことではありません。
技術継承に関しては、これまで日本企業はOJTを重視してきたため、10数年以上のキャリアを積むことを前提とした教育体制になっています。しかし、より条件の良い企業を求職者が探しやすくなった現代においては、なかなか腰を据えて技術を学ぼうと考える人材は少ないはずです。
むしろ、これまで培ってきたキャリアを活かして、他社で年収アップを狙うケースが増えるでしょう。
従業員が自社にとどまるメリットを具体的に示さなければ、後継者不足の課題を解消するのは難しいかもしれません。
製造業の人手不足が企業にもたらす悪影響
経済産業省の「製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について」によると、2017年12月時点での調査結果として、人手不足は94%以上の大企業・中小企業において顕在化しており、32%の企業はビジネスにも影響が出ていると回答しています。
以下、製造業の人手不足によって、企業にもたらされる悪影響についてご紹介します。
労働環境の悪化
業務を担当する人員が少ない状況でも、企業がこれまで通り利益を出そうとした場合、何らかの形でしわ寄せが発生するはずです。
仮に、これまで10人態勢で行ってきた仕事があったとしたら、それを8人で行うような状況も、十分想定の範囲に含まれるでしょう。2人分のマンパワーが失われるわけですから、作業工程を見直すなどの対策を講じない限り、社員の残業時間は増加することになります。
また、社員の休暇取得数が減少してしまうおそれもあります。
社員が「休みたくても休めない」状況で働き続けるうちに、体調を崩す社員が増えてしまうと、どんどん職場で働くスタッフの人員は減ります。このような状況が続くと、当然ながら社員の士気も下がり、結果的に自社の離職者数は増えてしまうでしょう。
離職者が増えれば、仕事を担当する人員はさらに減り、どんどん離職者が出る負のスパイラルに陥ります。
こうして、労働環境がどんどん悪化していくことが予想されます。
経営状況の悪化
離職者が増えている中で、企業が新しいスタッフを確保できないままでいると、従業員に対して業務内容を分散できない状況が続きます。本来、社員の勤続年数が長くなるにつれて、任せるべき業務は変わっていくはずですが、新しいスタッフがいないままの状態ではそれができません。
新入社員が基本的な業務を担当し、先輩社員がよりレベルの高い仕事を任されて、さらに管理職や幹部はその働きぶりを見て経営戦略に貢献する立場になるというのが、企業における健全な人材の成長フローと言えます。
ところが、勤続年数の長い人材が継続的に同じポジションで仕事をしていると、日々の業務に忙殺されていく中で、社員としての成長はなかなか望めません。
経営上の新しいアイデアを出そうにも、肝心の古参社員に成長の機会が与えられていないので、ミーティングをしてもなかなか前向きな意見が出ない可能性があります。
そのような中でも、取引先との関係は継続していかなければなりませんから、状況を改善できないまま時間が過ぎてしまうことでしょう。
社員が新天地を求め離れていくと、同じ仕事量をこなすためには、派遣等も検討して人材を確保する必要が生じてきます。
その結果、労多くして功少なしの状況を招き、従業員に対して十分な報酬を用意できなくなると、古参社員も自社を見限るかもしれません。
会社をたたむリスクも
自社が従業員にとって魅力的な企業でなくなってしまい、仕事を受注できても十分な利益が得られない状況が続いてしまうと、やがては工場を稼働できなくなるかもしれません。
経営者として、これ以上経営を継続できないと判断した場合、最悪会社をたたむことも視野に入れておく必要があるでしょう。しかし、会社をたためば従業員の生活も成り立たなくなりますから、従業員の雇用を守る観点からM&Aなどの方法も検討しなければなりません。
取引先に負担をかけないためにも、かんたんに会社をたたむことは許されないのです。このように、いざ会社をたたむことを決断すると諸々の面倒事が発生するため、経営者はその対応に追われることになります。
人手不足の状況で事業を継続させるにせよ、あきらめて会社をたたむにせよ、経営者には非常に大きな覚悟が求められます。
企業が人材確保と生産性向上の観点から考える対策
採用難の時代において、自社が製造業の中で生き残っていくためには、
上記2点の課題を意識して、何らかの改善策を講じる必要があります。
以下、主な対策についてご紹介します。
外国人材の採用を検討する
人口が減少傾向にある日本では、何とかして日本人の若年者を集める施策を講じても、自社で望む結果につながるとは限りません。製造業以上に魅力的な業種が存在していれば、若年者がそちらを選ぶのは当然ですし、製造業の側に目を向けさせる施策にも限界があります。
そこで、これまでとは視点を変えて、日本以外の国から人材登用を検討することをおすすめします。
外国人材を採用する場合、例えばエンジニアのような特定の専門職だけではなく、バックオフィス部門のスタッフを雇うこともできますから、国際的な競争力の増強にもつながります。
特定技能人材の採用を積極的に行う
外国人を自社で採用するにあたり問題となるのが、日本語や技術の習熟度です。日本語能力・製造業で必要となる技能のいずれかが不十分だと、即戦力として雇うのは難しいかもしれません。
しかし、在留資格「特定技能」を取得している人材であれば、こういった問題を解決することができます。
なぜなら、特定技能を取得している外国人材は、各分野の技能試験と日本語検定試験で一定レベルの成績を出しているため、即戦力としての働きぶりが期待できるからです。
FA(生産工程の自動化)システムを導入する
人材の確保と並行して、生産性向上のための施策も忘れてはいけません。
例えば、求人を出してもマンパワーの補充が期待できない状況において、生産工程を自動化する仕組み(FA:Factory Automation)を導入すれば、人数を増やすことなく生産性向上を実現できます。
他にも、以下のような技術を自社で導入することにより、省人化・自動化が進めば、従業員にとっても仕事が楽になるでしょう。
FA装置の開発にあたり、ベテラン人材が持つノウハウを言語化でできれば、人材教育の観点からも効率化が進むはずです。
まとめ
ノウハウがない状態から外国人材を採用するのは、日本人の人材を採用するよりもはるかに難しいでしょう。
自社のニーズに合った外国人材をお探しなら、外国人材の紹介実績が豊富なFactory labがお役に立ちます。
また、自社の社風にマッチする人材を探すには、相応の時間がかかります。
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