製造業の特定技能外国人を受入れる場合、特定技能の分野は以下の3種類に分かれています。
- 素形材産業分野
- 産業機械製造業分野
- 電気・電子情報関連産業分野
これらの分野は「製造3分野」と呼ばれることもあり、2022年4月の閣議決定で特定技能1号の受入分野として統合されたのは記憶に新しいところです。
また、広く製造業というジャンルで言えば、飲食料品製造業分野に関しても、特定技能1号の受入分野の一つとなっています。
この記事では、製造業の特定技能外国人受入れについて、受入条件・雇用の流れ・注意点などを解説します。
製造3分野における受入可能な事業所について
素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野の3分野は、製造業分野という形で受入可能な事業所の種類が統合されています。
以下、日本標準産業分類に掲げる産業の中で、受入可能な事業所の種類をご紹介します。
受入可能な事業所の種類
日本標準産業分類の中で、製造業分野で特定技能外国人の受入れが可能な事業所の種類は、以下の通りです。
事業所の種類はたくさんありますから、自社が該当する内容だけを確認すればOKです。
受入可能な事業所 | 詳細 |
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2194 | 鋳型製造業 ※(中子を含む) | けい砂により鋳造用鋳型・中子を製造する事業所 ※(金型製造業、木型製造業は含まない) |
225 | 鉄素形材製造業 | ○他から受入れた銑鉄から機械用鋳物、日用品などの銑鉄鋳物および可鍛鋳鉄を製造する事業所 ○鋼鋳物を製造する事業所 ○他から受入れた棒鋼などからハンマ、プレスなどで鍛工品を製造する事業所並びに鋼塊を製造し、更にハンマ、プレスなどで鍛鋼品を製造する事業所 ※(他から受入れた鋼塊、鋼半製品から鍛鋼を製造する事業所も含まれる) |
235 | 非鉄金属素形材製造業 | ○銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く) ○非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く) ○アルミニウム・同合金ダイカスト製造業 ○非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く) ○非鉄金属鍛造品製造業 上記を行う事業所 |
2422 | 機械刃物製造業 | ○金属加工機械(金属工作機械を除く) ○木材加工機械 ○パルプおよび製紙機械 ○製本機械 ○皮革処理機械 ○たばこ製造機械などの機械 上記に取り付けられる機械刃物を製造する事業所 ※(ただし、金属工作機械に取り付けられる切削工具を製造する事業所は中分類26[2664]に,建設および鉱山機械に取り付けられるビット,スペード,スチールなどを製造する事業所は中分類26[2621]に分類される) |
2424 | 作業工具製造業 | レンチ、スパナ、ペンチ、ドライバ、やすりなどを製造する事業所 ※(ただし,主として利器工匠具および手道具を製造する事業所は細分類2423に、のこぎりを製造する事業所は細分類2425に、農業用器具を製造する事業所は細分類2426に、動力付手持工具を製造する事業所は中分類26[2664]に分類される) |
2431 | 配管工事用附属品製造業 ※(バルブ、コックを除く) | 鋳鉄製、真ちゅう製などの配管工事用附属品、すなわち継手、ノズル、蒸気抜き、水抜きなどを製造する事業所 ※(ただし,主としてバルブを製造する事業所は中分類25[2592]に、陶磁器製およびほうろう鉄器製の衛生器具および台所用品を製造する事業所は中分類21[214,2199]に分類される) |
245 | 金属素形材製品製造業 | 金属の打抜きまたはプレス加工によって瓶の口金、調理用・家庭用・医療用器具の製造、自動車車体あるいは機械部分品などの製造を行う事業所および金属粉を混合し、それを金型内に充てんし圧縮成形した後、焼結を行う粉末や金法によって機械部分品を製造する事業所 |
2462 | 溶融めっき業 ※(表面処理鋼材製造業を除く) | ○他から支給された金属製品に亜鉛被膜または他のめっきあるいはアルミニウム、鉛、亜鉛などの被膜を行う事業所 ○缶および諸器具のすず被膜直しを行う事業所 ※(ただし、亜鉛被膜、すず被膜などのめっきを行った表面処理鋼材を製造する事業所は中分類22[224]に分類される) |
2464 | 電気めっき業 ※(表面処理鋼材製造業を除く) | 他から支給された金属製品に、電気めっきを行う事業所 ※(ただし、電気めっきを行った表面処理鋼材を製造する事業所は中分類22[224]に分類される) |
2465 | 金属熱処理業 | 他から受入れた金属製品、機械部分品の焼入れ、焼なましなどの熱処理を行う事業所 |
2469 | その他金属表面処理業 ※(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る) | 金属張りおよび研磨、陽極酸化処理などを行う事業所 |
248 | ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業 | ボルト、ナット、リベット、小ねじ、木ねじ、スパイク、テーパピン、平行ピン、割ピン、びょう、ターンバックル、座金などを製造する事業所 ※(ただし,同様な製品を製造する圧延業は中分類22に分類される) |
25 | はん用機械器具製造業 ※(ただし、2591消火器具・消火装置製造業を除く) | はん用的に各種機械に組み込まれ、あるいは取り付けをすることで用いられる機械器具を製造する事業所 |
26 | 生産用機械器具製造業 | 物の生産に供される機械器具を製造する事業所 |
27 | 業務用機械器具製造業 ※(ただし、274医療用機械器具・医療用品製造業、276武器製造業を除く) | ○業務用およびサービスの生産に供される機械器具を製造する事業所 ※(主な製品は事務用機械器具、サービス・娯楽用機械器具、計量器、測定器、分析機器および試験機、測量機械器具、理化学機械、医療機械器具および医療用品、光学機械器具およびレンズ,武器など) |
28 | 電子部品・デバイス・電子回路製造業 | 電気機械器具、情報通信機械器具などに用いられる電子部品、 デバイスおよび電子回路を製造する事業所 |
29 | 電気機械器具製造業 ※(2922内燃機関電装品製造業を除く) | 電気エネルギーの発生、貯蔵、送電、変電および利用を行う機械器具を製造する事務所 ※(民生用電気機械器具を製造する事業所も含む) |
30 | 情報通信機械器具製造業 | 通信機械器具および関連機器、映像・音響機械器具、電子計算機および附属装置を製造する事業所 |
3295 | 工業用模型製造業 | 材料のいかんを問わず,工業用の模型を製造する事業所 |
特定技能外国人が従事できる業務について
特定技能外国人材が従事できる業務(業務区分)は、2022年8月30日に特定技能制度が改正されたことで、これまでの製造業分野の19業務区分が3つに統合されました。
それぞれの業務区分と対象となる技能等は、以下のようになっています。
業務区分 | 対象となる技能 | 定義 | 業務の共通性 |
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機械金属加工 | 鋳造 | 指導者の指示を理解し、または自らの判断により、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事 | 素形材製造や機械製造に必要な材料、工場内の安全性に関する基本的な知識・ 経験等に基づく、加工技能および安全衛生等の点で関係性が認められる |
鉄工 |
塗装 |
ダイカスト |
機械加工 |
電気機器組立て |
金属プレス加工 |
仕上げ |
機械検査 |
工場板金 |
プラスチック成形 |
機械保全 |
鍛造 |
溶接 |
工業包装 |
電気電子機器組立て | 機械加工 | 指導者の指示を理解し、または自らの判断により、電気電子機器等の製造工程、組立工程の作業に従事 | 電気電子機器や部品、工場内の安全性に関する基本的な知識・経験等に基づく、加工技能および安全衛生等の点で関係性が認められる |
プリント配線板製造 |
仕上げ |
機械検査 |
プラスチック成形 |
機械保全 |
電気機器組立て |
工業包装 |
電子機器組立て |
金属表面処理 | めっき | 指導者の指示を理解し、または自らの判断により、表面処理等の作業に従事 | 表面加工に用いる薬品や工場内の安全性に関する基本的な知識・経験等に基づく、加工技能および安全衛生等の点で関係性が認められる |
アルミニウム陽極酸化処理 |
※参照元:
製造業における特定技能外国人材の受入れについて(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
特定技能外国人材制度(製造業分野)の制度改正について
制度改正前は、例えば「機械加工」や「機械検査」の区分で雇用した特定技能外国人を「仕上げ」の業務に従事させることができませんでした。
しかし、今後は上記の区分で雇用した特定技能外国人を、仕上げ業務に従事させることができるようになります。
業務区分が統合されたことにより、外国人労働者が従事できる業務の範囲が広がったことは、制度改正において特に注目すべきポイントです。
人事面で柔軟性が生まれ、優秀な人材に働いてもらえる場面が増えるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
製造業における特定技能人材の受入条件
製造業における特定技能人材の受入れにあたっては、受入企業側・外国人側が満たすべき条件があります。
以下、受入企業側・外国人側それぞれで知っておきたいポイントについて解説します。
受入企業側の要件
特定技能人材の受入れにあたり、受入企業側に求められる要件は、以下のようになっています。
業種 | ・素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業であること |
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待遇 | ・日本人と同等以上の給与 ・希望があった場合の休暇取得許可 ・雇用契約終了時の帰国費用の支弁(特定技能外国人が負担できない場合) 等 |
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法令遵守 | ・労働、社保、租税ほか関係法令遵守 ・非自発的離職や行方不明を発生させていないこと ・支援体制の整備(登録支援機関へ委託も可) 等 |
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協議会 | ・経済産業省が組織する「協議会」への加入 |
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受入人数 | ・49,750人(令和5年度末までの5年間) |
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雇用形態 | ・直接雇用のみ(派遣は認めない) |
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※参照元:製造業における特定技能外国人材の受入れについて(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
詳細は後述しますが、注意しなければならないポイントとして、経済産業省が組織する「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会)」への加入が必要な点があげられます。
仮に、協議会に参加せずに在留資格変更許可申請を行ってしまった場合、許可が下りないおそれもありますから注意しましょう。
協議会について詳しく知りたい方は以下の記事を併せてご覧ください。
⇒【特定技能】製造業(製造3分野)の協議会とは|概要・入会手続き等を解説
外国人側の要件
特定技能人材の受入れにあたり、外国人側に求められる要件は、以下のようになっています。
業務 | ○以下の業務区分に従事していること ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・金属プレス加工 ・鉄工 ・工場板金 ・めっき ・アルミニウム/陽極酸化処理 ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・電子機器/組立て ・電気機器/組立て ・プリント/配線板製造 ・プラスチック/成形 ・塗装 ・溶接 ・工業包装 |
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技能水準 | ○日本語試験および当該業務区分の技能試験の合格者であること ※(技能実習2号修了者は、その修得した技能と関連性が認められる業務区分の試験および日本語試験が免除) ・特定技能1号のみ |
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※参照元:製造業における特定技能外国人材の受入れについて(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
特定技能外国人が従事できる業務に従事していて、技能水準を満たしている人材であることが、求められる要件となります。
受入企業・外国人の双方が要件を満たしたら、地方出入国在留管理局へ申請が必要です。
製造業の特定技能人材を雇用する際の流れと注意点
製造業において、特定技能人材を雇用する際は、大きく6つのステップを踏みます。
以下、雇用時の注意点も含め、雇用時の流れについてご紹介します。
一般的な雇用の流れ
受入企業側が、受入要件を満たした特定技能外国人を雇用する場合、採用活動から雇用まで以下のステップを踏むのが一般的です。
①「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する
製造業特定技能外国人材受入協議・連絡会とは、特定技能制度の適切な運用を図るために設置された協議会です。
特定技能外国人の受入れを行う企業は、出入国在留管理庁への在留諸申請前に、協議会に加入します。
②人材募集や面接を行う
協議会への加入後は、日本人を採用・雇用する場合と同様に、外国人材の採用活動を進めます。
人材選考のプロセスでは、特定技能ビザ申請の要件について確認が必要です。
③雇用契約を結ぶ
特定技能外国人と雇用契約を結ぶ際は、給与・休日などの待遇を日本人と同様にしなければなりません。
また、特定技能外国人を雇用する際は、出入国時のサポートや生活状況の把握も求められます。
④支援計画の策定
1号特定技能外国人を雇用する際は、当該外国人が日本で安心して働けるよう、以下10項目につき支援計画の策定が求められます。
○入国前の生活ガイダンス提供
○入出国時の空港等への出迎え・見送り
○住居確保に向けた支援の実施/保証人となること
○在留中の生活オリエンテーションの実施
※(預貯金口座の開設、携帯電話の利用に関する契約に係る支援を含む)
○生活のための日本語習得の支援
○相談・苦情への対応
○履行すべき各種行政手続きについての情報提供・支援
○外国人と日本人の交流促進に係る支援
○外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合において、他の本邦の公私の機関との特定技能雇用契約に基づき、特定技能1号の在留資格に基づく活動を行えるようにするための支援
○定期的な面談の実施/行政機関への通報
⑤ビザ申請
支援計画の策定が終わり、支援計画書を作成したら、その他の必要書類と一緒に出入国在留管理庁へビザの申請を行います。
⑥入国・就労開始
無事、ビザの申請が完了したら、外国人の入国・就労開始となります。
各種手続きが完了したこのタイミングが、外国人労働者と関係性を築く、本格的なスタートラインになります。
雇用時の注意点
特定技能人材を雇用する際は、以下の点につき、特に注意が必要です。
○特定技能外国人の受入企業は、もれなく協議会の構成員になることが求められる
○ビザ申請時、書類に不備があると追加資料を要求されるため、事前に必要書類を確認しておく
○支援計画の策定はかんたんではない
特定技能外国人の受入企業は、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会)の構成員になることが求められ、これは必須条件となります。
在留資格取得許可申請前までに入会手続きを済ませる必要があるため、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。
ビザの申請時は、万一書類に不備があると追加資料を求められます。
面倒な手間を避けるためにも、企業担当者は入念に必要書類を確認する必要があります。
支援計画は、日本語で作成するだけでなく、当該外国人が十分に内容を理解できる言語でも作成して、その写しを渡さなければなりません。
自社にノウハウがない場合、支援計画を策定するだけでも、大変な労力が要求されます。
登録支援機関への委託契約を検討
ここまでお伝えしてきた内容について理解し、企業が自力で手続きを進めるのは、ノウハウを蓄積している場合を除いて難しいでしょう。
しかし、必ずしも企業が自力で特定技能外国人の雇用手続きを進める必要はなく、登録支援機関に必要な業務を委託することも可能です。
まとめ
製造業における特定技能外国人の採用は、他の分野に比べて手続きの順序が重要です。
制度改正などの動きもあり、ノウハウがない中で雇用手続きを続けるのは、ただでさえ人的リソースに限りがある企業担当者にとっては大きな負担になります。
登録支援機関であり、人材紹介のノウハウを持つFactory Labのルーツは、人手不足に悩んでいた製造業の会社にあります。
Factory Labは、海外人材の採用を課題に持つ経営者様・人事担当者様の立場に寄り添いながら、問題解決に向けてご提案いたします。