外国人労働者が、在留資格「特定技能1号」を取得するためには、
- 技能試験(特定技能分野の知識やスキルをはかるため)
- 日本語試験(語学力をはかるため)
これら2つの試験で合格点をとる必要があります。
他の特定技能1号を取得する選択肢としては、技能実習を良好に3年間進め、特定技能1号へと移行する方法もあります。
職種と作業内容につき、移行する特定技能1号の業務と関連性が認められる場合、自社で働いてくれている技能実習生を継続して雇用するには、技能試験と日本語試験が免除されます。
この記事では、技能実習生や外国人労働者を雇用している企業の経営者の方・人事担当者の方向けに、
- 在留資格「特定技能1号」の概要
- 技能検定試験、日本語検定試験の概要や求められるレベル
- 技能試験の受験資格拡大
上記について解説します。
在留資格「特定技能1号」の概要
特定技能制度は、生産性向上・国内人材確保のための取り組みを行ってもなお、人材を確保することが難しい産業・分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受入れるために設けられた制度です。
以下、特定技能1号の概要についてお伝えします。
特定技能1号についておさらい
特定技能は、特定技能1号と特定技能2号という、2種類の資格に分かれています。
特定技能1号は、技能・日本語能力ともに、即戦力になれるレベルの外国人労働者であることを認める在留資格となっていて、各種条件は以下の通りです。
※出典元:出入国在留管理庁|特定技能ガイドブック
特定技能人材を受入れる際に注意すべき点としては、出入国時の送迎や住居確保など、人材がスムーズに働けるよう支援を行うことがあげられます。
自社に受入れのノウハウがない場合、登録支援機関にサポートを依頼することも検討する必要があります。
特定技能1号の受入れ分野は12分野
特定技能1号の受入れ分野は、以下の12分野となっています。
なお、いわゆる製造3分野に関しては、2022年4月の閣議決定によって、以下の通り改められました。
閣議決定により、3つの分野が1つの分野にまとまり、特定技能1号における12分野の一つに変更となっています。
受入れ12分野の大まかな概要
統合された分野も含め、特定技能1号の受入れ12分野は、それぞれ人材基準が異なります。
以下、出入国在留管理局の特定技能総合支援サイトや各省庁サイトの情報を参考に、各分野の人材基準など をご紹介します。
介護
介護分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
介護分野における特定技能外国人の受入については、厚生労働省が管轄しております。
基本的に毎月国内外で試験が行われているので、外国人を雇うチャンスが多い分野の一つと言えるでしょう。
ビルクリーニング
ビルクリーニング分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入については、厚生労働省が管轄しております。
技能評価試験に関しては、海外での試験実施は不定期となっていますが、2022年4月に行われた国内試験の合格率は81.2%となっているので、比較的合格しやすい分野と言えるかもしれません。
建設
建設分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
建設分野では、2022年8月から業務区分の統合がなされ、新業務区分で同じ区分内であれば柔軟に仕事ができるようになっています。
試験内容や合格率は分野によって異なりますが、これまでの業務区分のいずれかの資格を持っている人材には、統合後の業務区分内に存在する職種につき、技能試験の合格なしで仕事をしてもらうことができます。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
製造業分野でも、2022年8月から業務区分が3つになり、統合された業務区分に存在する職種の特定技能外国人なら、技能試験に合格しなくても転職・兼業ができます。
これまでの業務区分が19区分と多かったわけですが、今後は3つになることもあり、製造業分野での受験者減少が予想されます。
造船・船舶工業
造船・船舶工業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
造船・舶用工業分野の特定技能1号試験は、試験監督者が申請者の希望する場所に派遣される形で、国内試験が実施されます。
ただし、溶接に関しては集合試験が実施されるケースもあります。
自動車整備
自動車整備分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
自動車整備分野の技能試験は、日本以外ではフィリピンのみが実施国となっています。
航空
航空分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
試験の実施回数が少なく、海外ではフィリピン以外にモンゴルで試験が実施されています。
宿泊
宿泊分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
宿泊業技能測定試験に関しては、2022年度において日本政府が特定技能試験の受験料を半額負担することが決まりました。
そのため、宿泊業の特定技能試験の受験者負担額は、通常の受験料7,700円から3,850円となっています。
農業
農業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
農業の分野は、現場での労働力不足が深刻になっていることから、数多くの国で試験が実施されていることがうかがえます。
試験の合格率が高い反面、特定技能人材が受入機関を見つけられるかどうかが、今後の人材充実において課題と考えられます。
漁業
漁業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
全体的に受験者数が少なく、漁業分野に比べると養殖業の合格率が低いケースが目立ちます。
漁業分野で特定技能外国人を探す場合、インドネシア人の比率は多いものと推察されます。
飲食料品製造業
飲食料品製造業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
農林水産省の「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」によると、飲食料品製造業分野の特定技能外国人受入れ状況は、2022年9月末現在で12分野最多の35,891人となっています。
受験者が多く、国内試験の場合は所定の登録をしなければ申し込みができないことから、企業が受験希望者のサポートをするなら早いうちに準備を進める必要があるでしょう。
外食業
外食業分野の定義・人材基準・実施国・担当省庁は、以下のようになっています。
農林水産省の「外食業分野における特定技能外国人制度について」によると、外国人材の受入れ状況の内訳の半数以上が「資格外活動(留学生・家族滞在等)」となっていて、技能実習生の受入れ自体がほとんどない状況です。
そのため、特定技能1号を取得した外国人材のニーズは高いものと推察されます。
特定技能1号の日本語検定試験について
特定技能1号の日本語検定試験は、次のいずれかの試験に合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(A2)
- 日本語能力試験(N4)
以下、それぞれの試験について解説します。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テストは、JFT-Basicとも呼ばれ、日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定する試験です。
具体的には、
「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」
があるかどうかを判定するためのテストです。
特定技能1号に必要なレベルは「A2」で、合格者は以下のような日本語力を持つ人材と判定されます。
テストの構成は「文字と語彙」・「会話と表現」・「聴解」・「読解」の4つのセクションで構成されており、テストはCBT形式となっています。
問題は、各国のテスト会場でコンピューターを介して出題され、受験者はコンピューターの画面に表示される問題やヘッドホンに流れる音声をもとに、画面上で回答する形になります。
結果はテスト終了時の画面に表示され、総合得点と判定結果が確認できます。
なお、試験日は原則として毎月実施となっています。
日本語能力試験
日本語能力試験は、受験者につき以下の能力をはかるための試験です。
特定技能1号を取得するにあたり求められるレベルは「N4」で、合格者は以下のような日本語力を持つ人材と判定されます。
N4の試験科目は「言語知識(文字・語彙)」・「言語知識(文法)・読解」・「聴解」となっており、テストはマークシート式となっています。
試験は毎年7月と12月に行われ、合格者には日本語能力認定書が送られます。
技能試験の受験資格拡大について
特定技能制度の国内試験は、2020年4月1日から受験資格が拡大されています。
以下、2020年3月31日以前、2020年4月1日以降、それぞれの受験資格を比較してご紹介します。
2020年3月31日までの国内試験の受験資格
特定技能制度において、2020年3月31日までの国内試験では、以下の条件に該当する人の受験が認められませんでした。
※出典元:出入国在留管理局|試験関係
退学・除籍・失踪などはともかく、中長期在留者の経験がなければ受験できないというのは、外国人材にとって高めのハードルだったものと考えられます。
2020年4月1日以降の国内試験の受験資格
2020年4月1日以降は、基本的に在留資格を有している人は誰でも受験が可能になりました。
よって、在留資格「短期滞在」で日本に在留する人でも、中長期滞在歴がなくても受験が可能となっています。
ただし、不法残留者など、在留資格を有していない人は引き続き受験が認められません。
自社の外国人労働者のサポートは必要?
特定技能制度において、仮に外国人材が試験に合格できたとしても、それだけで「特定技能」の在留資格が付与されることは保証されません。
試験合格者の在留資格認定証明書交付申請、または在留資格変更許可申請がなされたとしても、諸々の事情により在留資格認定証明書の交付・在留資格変更の許可を受けられない可能性があるからです。
各種手続きや納税の観点から不備があれば、証明書の交付が遅れたり、在留資格変更が認められなかったりする可能性は十分あります。
そのため、自社でも外国人労働者の受験やその後のサポート体制を整えておかないと、思わぬトラブルが生じてしまうおそれがあるのです。
まとめ
特定技能の資格を取得した外国人を雇う場合は、単純に資格を取得していることの確認だけでなく、実際に在留資格変更の許可が受けられるかどうかも把握する必要があります。
そのため、特定技能人材の採用経験に乏しい企業が対応するのは、難しいと言わざるを得ません。
特定技能1号外国人を自社で雇用したいと考えるなら、人材紹介のノウハウが豊富な登録支援機関を活用することで、採用を効率化できます。
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