外国人が日本で生活する際は、日本人と同じように、銀行の口座開設は普段の生活を円滑にする上で大切なものです。
給与の受け取りや光熱費の支払いなど、日本では銀行口座を中心にお金が回る仕組みが出来上がっているため、外国人が日本で仕事をする上で、銀行口座の存在は重要です。
この記事では、外国人の口座開設に関する手続きを知りたい企業担当者向けに、
上記内容について解説します。
外国人の銀行口座開設に必要な条件
外国人が、日本で銀行口座を開設するためには、次の2種類の条件を満たさなければなりません。
以下、それぞれの条件について解説します。
仕事や留学のため、日本に6ヶ月以上滞在していること
外国人が日本で銀行口座を作る際は、外国為替および外国貿易法上の「居住者」に該当する必要があります。
具体的には、日本に入国してから6ヶ月以上滞在していることが条件です。
在留期間が6ヶ月未満の場合、その外国人は「非居住者」とみなされ、非居住者円預金という特殊な口座しか開設できません。
取引店以外の支店での預入・引出は認められないなど、一般的な普通預金と比べてかなりの制限がつくため、例えば母国の家族に仕送りすることもできません。
例外的に、ゆうちょ銀行など一部の銀行に関しては、在留期間が3ヶ月以上の人は普通口座を作ることも可能です。
はじめて日本で口座を開設するなら、ゆうちょ銀行をおすすめします。早い場合、当日でも開設可能です。
ただし、在留資格によっては、在籍の事実や勤務実態等の確認のため、在留カードと学生証・社員証等の提示を求められる場合があります。
銀行口座が開設できていない状況で、母国の家族に送金をしたい場合は、資金移動業者を頼り送金する方法も選べます。
注意点としては、資金移動サービスで送金できる金額に「1回100万円以下」という制限があること、送金が可能な国・地域や取扱拠点は業者により異なることがあげられます。
住民票を取得していること
外国人の銀行口座開設には、在留期間が6ヶ月以上あることに加えて、住民票を取得していることも条件となります。
そのため、在留資格によっては、住民票が取得できない可能性があります。
例えば、在留期間が3ヶ月未満(90日以下の観光ビザなど)の人は、在留カードが発行されないので、そもそも住民登録ができず住民票が取得できません。
逆に、入管法上の在留資格をもって日本に中長期間滞在する中長期在留者は、在留カードを持って居住予定の市区町村に転入の届出をすることになっているため、住所が決まっているなら住民票の取得自体は可能です。
口座開設が認められないケース
上記の条件を満たしていた場合でも、口座開設が認められないケースとしては、以下のようなものが考えられます。
実店舗で口座開設を検討する場合は、自宅・勤め先の近隣店舗のほか、勤め先指定の店舗での口座開設が認められています。
しかし、普段の生活圏外から大きく離れた銀行、例えば東京都で暮らしている人が北海道の銀行の口座を作ろうとすると、特別の事情が認められない限り口座が作れないケースがほとんどです。
また、一つの銀行につき個人が作れる口座は、原則として1つだけです。
銀行側には、手続きミスの予防・休眠口座の増加抑制のほか、金融犯罪に至るリスクを避けたいという思惑があるからです。
そして、そもそも在留期間が3ヶ月未満であれば、ゆうちょ銀行を含む各種銀行で銀行口座を開設することはできません。
当然ながら、外国人はこのようなルールを知らずに入国することが多いため、受入企業側でもしっかり説明・サポートしたいところです。
外国人の口座開設に必要な書類等
実際に外国人が口座開設を進める場合、いくつか必要なものがあります。
以下、銀行口座開設時に必要なものをご紹介します。
印鑑
海外の人材から見て、日本国内での契約で特徴的なものの一つに、契約時に「印鑑が必要」な点があげられます。
最近では日本でも、印鑑レス口座を作成できる銀行が増えてきていますが、その一方で印鑑が必要な金融機関も少なくないため、長期にわたり働いてもらう人材には印鑑が必要です。
外国人の母国によっては、印鑑を必要とするタイミングがなく、印鑑の必要性を疑問視する人材も少なくありません。
しかし、口座開設以外の契約、例えば借りる部屋の賃貸契約・携帯電話の契約などで押印を求められる機会も多いことから、外国人材が自身で用意することに難色を示した場合は、企業側で提供するのも一手です。
ちなみに、外国人向けハンコは、カタカナもしくはアルファベットの書体を選ぶことが多く見られます。
アルファベット以外の、多言語のバリエーションに対応している業者もあるため、外国人材から希望を聞いておくとよいでしょう。
携帯電話(電話番号)
印鑑を用意したら、次は日本国内で使える携帯電話・または電話番号を確保します。
電話番号は、銀行口座開設時も連絡先として銀行側に教える情報なので、国内の業者と契約を結んでおきます。
Skypeなどのコミュニケーションアプリが進化したことによって、自国にいる家族と話す場合、ビデオ通話等で会話するケースが増えました。
そのため、そもそも電話番号を持たない外国人も少なくないので、受入企業もレクチャーする準備を整えておきましょう。
注意点として、国内で携帯電話の契約および電話番号の取得を進める場合、大手キャリア等では本人確認書類のほか補助書類の提出を求められることがあります。
その際、預金通帳と届印が必要になる可能性があり、外国人が単独で契約するのが困難な条件となっています。
よって、外国人の携帯電話・電話番号の契約に関しては、以下の選択肢を検討する必要があるでしょう。
また、プリペイドSIMが一般的な国から来た外国人は、利用した分だけお金を支払うポストペイド型SIMに馴染めず、トラブルに発展してしまうリスクがあります。
こういった点を踏まえて、受入企業は何らかの形で外国人材をサポートしたいところです。
本人確認書類
本人確認書類は、口座開設の申請方法や銀行の方針によって、何を・どれだけ用意すべきかが異なります。
具体的には、以下のような書類が該当します。
・在留カード
・特別永住者証明書
・パスポート
・住民票の写し
・住民票記載事項証明書
・公共料金の領収書(電気・ガス・水道など)
銀行によって、認められる書類・認められない書類が異なるケースも考えられることから、口座開設を予定している銀行の方針について、企業側が事前に情報を集めておくと、外国人材の口座開設がスムーズです。
外国人の口座開設手続きの基本的な流れ
必要書類等が一通りそろったら、口座開設手続きを進めていきます。
以下、基本的な手続きの流れや注意点についてご紹介します。
窓口での手続き
銀行口座を開設する上での基本的な手続きとしては、窓口での手続きがあげられます。
担当者とのやり取りを行いながら口座開設ができ、銀行によっては外国語対応ができるスタッフがいるケースもあるため、基本的には窓口での手続きをおすすめします。
手続きの流れ自体はそこまで難しくなく、あらかじめ確認しておいた必要書類を提示した上で、申込書に必要事項を記入するだけです。
ただ、外国人材だけで手続きを進めようとすると、コミュニケーションがうまく取れず断念するおそれもあるため、受入企業の担当者が同行するか、または登録支援機関に委託しましょう。
タイミングによっては、銀行が混雑する状況で手続きを進めることも考えられます。
よって、あらかじめ時間がかかることを伝えておいたり、忙しくない時間を選んだりするのがベターです。
申込手続き全般の注意点として、氏名・住所・電話番号を担当者から確認された場合に備えて、日本語での読み書きができるよう準備しておきたいところです。
また、キャッシュカードの暗証番号を決める必要があるため、
上記の点についても説明しておきましょう。
郵送による手続き
口座開設に関しては、窓口での手続きだけでなく、郵送での手続きが認められている金融機関もあります。
必要書類を用意して、銀行が定める申込書に記入を済ませたら、銀行宛に郵送する流れです。
その際、ミドルネームを持つ外国人の場合は、英語版の申込書が必要なこともあります。
郵送手続きを進める際は、受入企業側でどんな申込書を使うのか、あらかじめ確認した方が安心です。
インターネットによる手続き
外国人材にとって難易度は高い部類に入りますが、インターネットによる口座開設もできないわけではありません。
ただし、ネット銀行の場合、海外からの入送金ができない銀行も多いので、実店舗を構えている銀行の手続きを検討した方がよいでしょう。
一般的な流れとしては、アプリまたはWebサイトから顧客情報を入力して、本人確認書類を送付後、キャッシュカードを受け取るイメージです。
外国人材には、自力で手続きを進められるレベルの日本語力が求められるので、もし人材の日本語に不安があるようなら、英語に対応している銀行を選ぶ必要があるでしょう。
外国人の口座に関する注意点
外国人が日本で口座を開設した後、その口座を同じ形でずっと使い続けるとは限りません、
以下、外国人の銀行口座に関する注意点をいくつかご紹介します。
口座開設時に提供した情報を変更するケース
これまで日本で暮らしていた住所が、転勤や寮への入居等の理由で変更された場合、外国人も金融機関に連絡を入れなければなりません。
日本人でも意外と忘れがちなポイントなので、電話番号なども含め、口座開設時に金融機関に提供した情報が変更された場合は、金融機関に新しい情報を伝えるようにしましょう。
また、例えば技能実習生が特定技能へと移行する場合など、外国人は在留資格や在留期間に変更が生じる可能性がある。
期間更新後の情報を提供しないと、口座が凍結される可能性があるため、忘れずに金融機関に連絡しましょう。
外国人材が帰国するケース
在留中に外国人材が開設した銀行口座は、当人が帰国することになった場合、口座を解約する必要があります。
再入国の予定がある場合は、引き続き銀行口座を利用する可能性があるため、金融機関に対応を相談することが大切です。
仮に、預金額が0円であったとしても、解約はしなければなりません。
使わない口座がそのままになっていたり、帰国予定者が口座を売却したりすると、その口座が振り込め詐欺・犯罪収益の受け渡しなどに利用されるおそれがあるからです。
当然、問題が発覚すれば、外国人材が処罰または入国停止の処分などを受けることが予想されます。
そのため、外国人材が帰国する際は、受入企業が口座解約を促しましょう。
解約手続きに関しては、金融機関に確認しながら進めれば問題ありません。
一般的には、通帳・キャッシュカード・印鑑・在留カード等を提出して、所定の手続きを済ませて終了です。
注意点として、携帯電話料金、電気・水道・ガスなどの公共料金、インターネット料金、クレジットカードの利用料金等の引き落としがまだ終わっていない場合は、銀行口座を解約しないよう注意しましょう。
料金が未払いのまま帰国してしまうと、信用情報機関に不払いとして記録され、日本に再入国した際にクレジットカードの申込・住宅ローンの申込・携帯電話の契約等ができなくなるリスクがあります。
もし、解約を失念したまま5~10年放置した場合、休眠預金として利用不可の扱いとなるおそれがあります。
口座解約に関しては、受入企業側でも働きかけ、放置状態にならないよう気を付けましょう。
犯罪行為とは知らず巻き込まれるケース
日本に来て間もない外国人にとって、日本の金融に関するルールを知る機会はほとんどありません。
母国で個人が口座を持つ習慣がない場合、事の重大さが分からないこともあるため、以下のケースにつき受入企業側で注意喚起を徹底しましょう。
まとめ
外国人の雇用に関しては、口座開設以外にも、煩雑な手続きが多く見られます。
ノウハウがない中で、自社の採用担当者が手続きを進めようとすると、抜け・漏れ等のリスクが生じます。
確実に手続きを進めたいなら、登録支援機関を利用するのが安心です。
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