2019年にみずほ情報総研株式会社が行った「IT人材需要に関する調査」によると、2018年時点で22万人のエンジニア不足が報告されています。
また、生産性が上昇せず、需要の伸びが高まれば、78万人以上の人材が不足すると予想されています。
エンジニア不足を経営課題とする企業は増加していて、中途で優秀なエンジニアを採用できないケースは、決して珍しいことではありません。
この記事では、優秀なエンジニアを中途採用するのが難しい理由と、その解決策について解説します。
求人が理由でエンジニアを採用できない場合
応募者と自社とをつなぐ最初の段階が、エンジニア人材を募集するための求人掲載です。
ここでポイントを抑えた求人を作成できないと、そもそも応募者が集まらないので、まずは求人の作り込みに力を入れるため、以下のポイントを押さえましょう。
エンジニアの流動性が低いことの自覚がない
エンジニア職は、多くの企業で応募をかけている、いわゆる「売り手市場」に属する職種です。
優秀な人材は、その分だけ待遇もよくなる傾向にありますし、現職でも手放さないよう待遇を良くせざるを得ないのが現実です。
働いている現場・所属している会社での働き方に満足しているなら、基本的にエンジニアも転職は考えないでしょう。
逆に、仕事で稼ごうと思っているエンジニアなら、企業・組織に属さないフリーランスの立場で仕事をした方がよいと考えるかもしれません。
こういった事情から、転職市場において、総じてエンジニアの流動性は低いものと考えられます。
転職市場にいるわずかな候補者の中から、自社のニーズに合致する人材を探さなければならないので、当然ながら採用活動は難航することが予想されます。
にもかかわらず、通り一辺倒の文章やレイアウトで求人情報を構成しても、残念ながら誰の目にもとまらないでしょう。
求人情報の掲載媒体・露出方法をこれまで工夫していなかったという企業は、採用活動における力の入れ方から改善する意識を持つことが大切です。
将来の成長に賭けて採用するのが難しい
エンジニアは、日々成長を求められる職種の一つであり、非常にスピーディーな成長を求められます。
例えば、製造業においてIoT技術を要求される場面は増えてきており、過去に身につけた技術が役に立たなくなってしまう可能性は十分あります。
そのため、実務経験そのものは十分であっても、自社の経営戦略において必要とされる技術を持っていないエンジニアは、基本的に採用することができません。
将来的に、エンジニア自身が勉強すれば追いつけるかもしれませんが、採用段階で企業・市場の側で求めているレベルに届いていない人材を採用することは、経営者・採用担当者にとっては勇気のいることですよね。
若年者を採用して、世代交代を図るのであれば、長きにわたり働いてもらえる人材を確保できるかもしれません。
しかし、転職市場が活発化している日本において、終身雇用を想定した若年者の採用は現実的ではありません。
こうしたジレンマから、多くの企業は技術と向上心のある人材を探そうと試みるわけですが、中途採用者に成長性を期待すると、キャリアがある分どうしてもマッチングは難しくなるでしょう。
採用活動が思わしくない事態におちいる前に、どんな人材を雇うのか、明確にイメージを固めておくことが大切です。
「欲しい人材」にフォーカスした求人を出せていない
古巣を離れて転職を希望するエンジニアは、やはり現職では解決できない問題を解決するために、転職を検討しているものと考えてよいでしょう。
レバテックキャリアによるITエンジニアの転職意識調査によると、エンジニアが転職を決めた理由のトップは「収入アップのため」で、次点は「会社や業界の将来性に不安を感じて」という結果が出ています。
転職を希望するエンジニアを受け入れる立場としては、こういったニーズを踏まえ、同エリア・同業他社の求人に比べて優れている、何らかのメリットをアピールする必要があります。
たとえ、自社で同業他社と同じ水準の給与を出せなかったとしても、事業内容を詳細に説明したり、スタッフの働いているところを紹介したり、事業や職場に興味を持ってもらえるようなアピールは可能です。
あるいは、スキルアップという観点から、新入社員のサポート体制が充実している点を伝える方法もあるでしょう。
どんな形であっても、事業や仕事の面白さ・働き手にとってメリットのある社内制度などが紹介できないと、なかなか求職者は興味を持ってくれません。
それなりの規模の企業で勤めているレベルのエンジニアを招き入れたいと思うなら、給料・福利厚生の面で対抗することは中小企業では難しいはずです。
求職中のエンジニアの中には、応募段階から中小企業の案件を除外して考えている人も少なくありませんから、転職エージェント等を介してでもエンジニアとのパイプをつなぐ努力が求められます。
応募・面接後にエンジニアを採用できない場合
書類選考から面接にまで進むものの、採用に至らないケースが多い場合は、応募者と自社とのギャップを理解して原因を究明する必要があります。
以下、考えられる理由について、主なものをご紹介します。
欲しい人材像を明確にしていない
採用担当者・人事側としては、人材を欲している現場のニーズを正しく汲み取らないと、ミスマッチが発生してしまうことを理解しておきたいところです。
採用人数に限りがある中小企業の場合、単純にスキル要件を満たしていれば採用できるケースばかりとは限りませんから、メンタリティやキャリアパスに関しても詰めておくとリスクを減らせます。
自社の魅力を求人情報の中で打ち出すことに成功していても、応募者が企業のニーズを満たしているとは限りません。
どんな人を必要としているのかは、募集要項の中で「可能な限り具体的」に記載しておくべきです。
アイデアマンを募集したいのか、職人気質の人材が欲しいのかによっても、訴求の方向性は変わってきます。
現場でのディスカッションが活発な職場なら、相手のことを考えながら意見を主張できる人材が求められるでしょうし、逆に協調性を重視するならコミュニケーション能力が高い人材を判断する方針を固めた方が賢明です。
一口にエンジニアといっても、それぞれに個性があり、企業とのマッチングは一筋縄ではいきません。
現場のニーズを汲み取りながら、人材獲得に向けてイメージを構築しましょう。
採用活動において一貫した方針がない
採用活動の成功において、戦略は重要なポイントの一つであり、どのような企業も無視できないものです。
特に、採用活動全体における一貫した方針(採用コンセプト)を固めていないと、なかなか欲しい人材には出会えないことが多いでしょう。
製造業でエンジニアを採用する場合、自社の事業内容や課題に即して人材を採用するはずです。
その際、経験が少ない人材でも採用するのか、それともベテランを採用するのかを決めるだけでも、方針に差が生じてくるのは間違いありません。
また、欲しいエンジニアのスキルが、将来的に陳腐化することも想定して採用する必要もあるでしょう。
現状の厳しさを乗り越えるための採用なのか、それとも自社を長期にわたり永続させていくための投資なのか、その点について考えるだけでも選択肢が変わってきます。
もちろん、自社の企業理念やビジョンに即した人材を雇用することは大前提です。
出る杭を伸ばしていくのか、職場の調和を大切にしたいのか、自社の社風も加味しながら採用方針を決めましょう。
選考が遅く辞退につながってしまう
エンジニアに限った話ではありませんが、選考スピードの遅さは採用コストを高める結果につながります。
他にも応募できる企業があるなら、求職者が「A社はダメそうだからB社を受ける」と考えるのは自然なことですから、スピード感のある採用ができない企業は、それだけで取り残されてしまいます。
選考スピードが遅くなる理由の一つとして、応募から採用に至るまでのプロセスに何らかの問題があることが考えられます。
あるいは、部課長クラスや経営者のジャッジが遅くなってしまうケースも想定されるでしょう。
実際のところ、採用コンセプトが明確になっているなら、それほど採用までに時間がかかることは考えにくい話です。
応募者に求める要素が多い、あるいは具体的に定まっていないと、採用活動の効率は落ちるものと推察されます。
極端な話、自社の側からオファーを出すくらいの積極性がないと、人材は集まらないものと考えるべきです。
面接から採用まで1週間かけているような状況だと、その間にライバルに人材を取られてしまう時代が到来しているのです。
内定・採用後にミスマッチが生じる場合
面接から内定・採用までの流れはスムーズなのに、新しいエンジニアが働き始めてから短期間で職場を離れてしまう場合、情報のすり合わせが不十分だった可能性が考えられます。
続いては、内定・採用後にミスマッチが生じているケースについて解説します。
社風を十分に理解していない
応募者だけでなく採用担当者にも言えることですが、自社の社風を正しく理解して、応募者にシェアすることは重要なポイントです。
人間関係や現場の雰囲気・業務の進め方に関する情報は、応募者が職場になじめるかどうかを判断する上で、非常に大切なものだからです。
年齢やキャリアを問わず、意見交換を積極的に行いながら仕事を進めたいのか。
それとも、ある程度の裁量がある状態で、淡々と自分のやるべきことをこなしていきたいのか。
エンジニアの性格や仕事の進め方は、人それぞれです。
自社の環境にマッチしない人材を採用してしまうと、採用から間もないうちにパンクしてしまったり、周囲と衝突してしまったりするおそれがあります。
社風を説明するにあたっては、若手・ベテラン・管理職・経営陣がそれぞれの意識をすり合わせた上で、共通項をまとめてから求人情報・面接等で説明するのがよいでしょう。
必要なスキルがまとまっていない
エンジニアが働く現場において、求められるスキルはさまざまです。
誰が、どの仕事に従事するのかによって、同じ部門でも求められるスキルに違いが生じることも珍しくありません。
スキル面での要件は、採用担当者と現場側で十分な意思疎通が行われていないと、ミスマッチが生じる可能性が高くなります。
設備の立上げ業務に携わるのか、性能改善やコストダウンに関わるのかによっても、求められる経験やスキルには違いがあるでしょう。
また、応募者が現在身につけているスキルだけで必要十分なのか、入社後も新しい分野について学んでもらいたいのかによっても、欲しい応募者の適性や年齢層などが変化します。
総じて、応募者に求めるスキルが十分にまとまっていないと、将来的に問題が発生してしまうリスクは十分あります。
即戦力として期待されていたはずなのに、採用後にスキル習得が必要だとわかると、せっかく採用した人材が別の企業のオファーを受けてしまうかもしれません。
必要に応じて、実際に現場を見てもらってから判断するなど、採用する人材とスキルのマッチングを事前に確認できる体制を整えておきましょう。
任せたい業務内容が明確でない
エンジニアとして、スペシャリストを目指したいのか、ゼネラリストを目指したいのかは人それぞれです。
一般的に、エンジニアはスペシャリストを目指す人材が多いと思われがちだが、社員の数が少ない場合など、複数の業務を同時にこなさなければならないケースは往々にして存在します。
自分の経験やスキルを掘り下げていきたい人材は、役職にこだわらず、自分の得意分野・専門分野を究めたいと考えるでしょう。
しかし、複数の部署を経験している人材の場合は、工場長など役職者を目指して応募することも考えられます。
プレーヤーとマネージャーは、当然ながら求められる能力に違いがあります。
マネジメント業務を任せたくて人材を採用している企業が、優秀なプレーヤーを採用しても、明確に指示を出すのは難しいかもしれません。
開発以外のスキルについてヒアリングが不十分だと、その分ミスマッチのリスクが高まってしまうでしょう。
応募者が自社に求めることと、自社が応募者に求めることのすり合わせを行うためには、任せる業務の範囲を具体化することが有効です。
まとめ~欲しいエンジニアを採用するための解決策
ここまで紹介してきた事情を踏まえ、欲しいエンジニアを採用するためには、次の点にポイントを絞って採用活動を進めることが大切です。
自社に応募してくれたエンジニアを大切にしつつ、お互いのニーズのマッチングを丁寧に確認することで、安定した採用につなげていきましょう。
どうしても日本人エンジニアの採用が難しいなら、以下の記事を参考に、外国人エンジニアの採用にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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