エンジニア人材の不足が現実のものとなっている日本では、外国人エンジニアの採用を課題としている企業も多く見られます。
しかし、国籍が異なる人材を採用することに、抵抗感を抱いている経営者の方・企業担当者の方は多いのではないでしょうか。
実際のところ、日本で働いている外国人の国籍には、ある一定の特徴が見られます。
この記事では、日本で働いている外国人エンジニアについて、労働人口が特に多い国の情報を中心にご紹介します。
日本で働く外国人エンジニアの国籍
日本で働いている外国人エンジニアの国籍を紐解くにあたり、参考にしたい統計情報が『「外国人雇用状況」の届出状況表一覧』です。
まずは、2021年(令和3年10月末現在)の情報をベースに、日本で働く外国人エンジニアの国籍について考察していきます。
専門的・技術的分野の在留資格における国籍
外国人エンジニアが、日本でエンジニアとして働くためには、技術・人文知識・国際業務ビザの取得が必要です。
そこで、技術・人文知識・国際業務ビザに絞って国籍別の人口を洗い出してみると、以下のような数字となっています。
上記の数字を見ると、中国人労働者が就労人口としては非常に多く、ベトナム人労働者は中国人労働者のおよそ6割となっています。
欧米からの就労者はそれほど多くなく、上位3位を中国・ベトナム・韓国の3ヶ国が占めている状況です。
製造業の在留資格における国籍
次に、製造業に従事している外国人の国籍について見ていきましょう。
製造業の国籍別の人口は、以下のような数字となっています。
製造業という業種でくくると、ベトナム人の就労人口が非常に多くなっています。
また、技術・人文知識・国際業務ビザのケースに比べると、韓国やG7等の就労者は少数派です。
実際、ベトナム・中国の就労者は、技能実習ビザで来日している人材も多い傾向にあります。
よって、製造業かつエンジニアという形で分類を試みるのであれば、ベトナム・中国の人材を中心に採用するイメージになるでしょう。
ITエンジニアに関してはどうか?
IoTの普及にともない、ITシステム開発や基盤系開発の実績を持つ人材のニーズは高まっています。
そのため、外国人エンジニアの国籍や就労人口について論じるのであれば、ITエンジニアに関しても触れておく必要があります。
「外国人雇用状況」の届出状況表一覧の情報だけでは、ITエンジニアの就労人口だけをピックアップして算出することは難しくなります。
ただ、情報通信業に従事する外国人材の就労人口は把握できるため、こちらも参考情報としてご紹介します。
情報通信業の就労人口を見てみると、中国人が多いのは先の2ケースと変わりません。
しかし、次いで登場する国は、韓国とG7等、次いでベトナムとなっています。
よって、ITエンジニアに限っては、中国だけでなく韓国の人材にも注目すべきと言えるでしょう。
ここまでお伝えしてきた情報をもとに、この記事では、
上記3ヶ国の人材をエンジニアとして雇用するケースについて、特徴・メリット・雇用時の注意点をご紹介します。
外国人材として中国人エンジニアを雇用するケース
技術・人文知識・国際業務人材としても、製造業や情報通信業でも存在感を見せている中国人材は、外国人エンジニアとしてどのような特徴を持っているのでしょうか。
詳しく解説していきましょう。
中国人エンジニアの特徴
中国は、全人口の90%以上が漢民族で構成されている一方で、50以上の民族からなる多民族国家という顔も持っており、文化の壁を超えたコミュニケーションを要求される国の一つに数えられます。
システム開発業務を海外の開発会社等に委託する「オフショア開発」において、日本語によるコミュニケーションは重視されますが、その中で日本語能力に定評があるのは中国人ITエンジニアであるという声も聞かれます。
2023年現在、中国は経済的に大きな成長を遂げ、世界屈指の大国となっています。
日本国内とは比較にならないスピード感で成長を続けていて、英シンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター」は、2028年までにアメリカを抜いて世界最大の経済大国になると予測しています。
こういった事情もあって、中国ではエンジニア自身が「努力しなければ置いて行かれる」環境となっています。
よって、最新技術を積極的に取り入れるスタンスはもちろん、スキルの習得・習熟にも熱心なため、自社で採用できれば職場に刺激を与えてくれることが期待できます。
中国人エンジニアを採用するメリット
中国の就活事情が過酷なこともあり、地理的に近い日本での就職を目指している中国人は一定数存在しています。
また、中国の大学入試では、外国語科目として日本語を選択している学生が増えているという事情から、受験勉強を通して日本語がうまくなった人も少なくありません。
その他、そもそも「日本が好きだから日本で働きたい」と考える人もいます。
具体的な理由としては、治安の良さ・清潔さ・食品の安全性などがあげられます。
中国人エンジニアを自社で採用できれば、中国の成果主義で鍛えられてきた人材の熱意を、現在働いている社員に伝えることにつながります。
もちろん、ITスキルなども高い傾向にあるため、企業としては安心して雇える人材と言えるでしょう。
中国人エンジニアを採用する際の注意点
中国人エンジニアにとって、転職は日本よりも一般的です。
仮に新卒入社であったとしても、2~3年の短期契約で働くケースが多く見られます。
日本の場合、数度の転職を経験している人材は敬遠されることもありますが、中国人エンジニアは転職をキャリアアップと考える文化の中で仕事をしています。
その一方でプライベートも大切にするため、上司や職場仲間との飲み会などは積極的に参加しない人もいますから、日本人との考え方の差を把握した上で採用したいところです。
また、給与面などで気になることがあれば、上司などに直接意見することも珍しくありません。
よって、直属の上司は「仕事上の貢献度」を明確に説明できる基準を設けておくとよいでしょう。
外国人材としてベトナム人エンジニアを雇用するケース
日本では、技能実習生として働くベトナム人が多く、過去に日本で働いた経験を持つベトナム人も少なくありません。
続いては、ベトナム人エンジニアの特徴・採用メリット・注意点について解説します。
ベトナム人エンジニアの特徴
ベトナムは、国をあげてエンジニア育成に取り組んでいる国の一つで、理数系に重きを置いた実践的な教育プログラムを組んでいます。
そのため、技術レベルが高いエンジニアを探しているなら、ベトナム人を雇うのがよいという意見も聞かれます。
ベトナム人は、日本人と似たメンタリティを持っているとされますが、大陸的な気質も持ち合わせています。
具体的には、思っていることはハッキリ言う、意見を言わないことは意見がないのと同じ、といった、欧米的な感覚を持っている人が多く見られます。
もちろん、全員がそうとは限りませんが、少なくとも「日本人と同様のメンタリティを持っている」と勘違いしないように注意したいところです。
ただ、バイクなど多くの分野で日本製品が親しまれているため、日本になじみのあるベトナム人も多いはずです。
ベトナム人エンジニアを採用するメリット
ベトナムを含む東南アジア諸国は、中国に次ぐ拠点候補となっており、これまで中国の沿岸部に製造工場・拠点を建てていた日系企業も注目しています。
技能実習生として日本にやって来たベトナム人は、実習後はベトナムに帰国するため、過去に日本で教育を受けた人材に出会える可能性があります。
そういった人材に対して、日本はアプローチしやすい立場にあります。
技能実習生に人気のある業種の一つに製造・機電系分野があげられ、世界的に求人倍率が高まる製造・機電系エンジニアの採用に動く上で、日本企業は有利な立場にあると言えるでしょう。
また、ベトナムの全人口における若年層の多さは、高齢化が進む日本にとっては非常に魅力的な要素です。
英語に堪能な人材もいるため、他国人材との橋渡しをしてくれるような、貴重な人材に成長してくれる可能性は十分あります。
ベトナム人エンジニアを採用する際の注意点
ベトナムの地場企業・外資系企業などは、総じて日本企業よりも内定を出すスピードが早い傾向にあります。
面接後にすぐ内定が出て、その7日後には働いているケースも珍しいことではありません。
また、日本で働いた経験があっても、残念ながら日本語レベルがそれほど高くない人材もいます。
漢字を使う中国や、文法が似ている韓国と比較して、日本語を勉強するハードルが高い点も一因と考えられます。
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弊社の紹介で採用されたベトナム籍CADエンジニアのインタビュー動画はこちらです。
⇒【インタビュー動画】外国人CADエンジニアでの初の採用!言語の壁は大丈夫ですか? - 三興工業株式会社(人材編) -
日本語力が心配な企業様は、ぜひご覧ください!
その他、ベトナム人エンジニアは収入を増やすための転職に前向きで、基本的に付き合いで残業をすることもありません。
こういった特徴については、自社で働く日本人スタッフに周知しておく必要があります。
外国人材として韓国人エンジニアを雇用するケース
かつて「近くて遠い国」とも言われた韓国は、日韓ワールドカップや韓国ドラマ・K-POPなどを通じて、急速に日本との距離を狭めています。
続いては、韓国人エンジニアの特徴・採用メリット・注意点について解説します。
韓国人エンジニアの特徴
韓国は、日本以上の学歴至上主義であり、自国での就職事情も厳しく激しいものです。
そのため、職を求めて国外で働こうと考える人材は多く、エンジニアも増加傾向にあります。
国内のエンジニアの年収は500万円程度ともいわれ、日本と同程度と考えられます。
ただ、仕事に対する考え方は「スピード勝負」で、決断しながら考えるタイプの人材が多く見られます。
IT分野に関しては、実質的に日本の先輩といっても過言ではなく、例えばLINEは韓国発のサービスです。
キャッシュレス化も早い段階で進んでおり、そのような環境で育ってきた韓国人エンジニアは、日本企業にとって不足している部分を補ってくれることが期待できます。
韓国人エンジニアを採用するメリット
韓国政府は、1990年代後半から、ブロードバンド回線と国民へのパソコン普及を推進しています。
その結果、ITリテラシーが高い人材が多いため、環境を問わず早期の活躍が期待できるでしょう。
言語の面では、日本語と韓国語は文法が似ており、読み方が多少違っても同じ意味合いの単語が存在するケースは珍しくありません。
※(新聞=シンモン、簡単=カンダン など)
その上、高校進学後に第二外国語の習得が始まり、就職を見越して大学時代から日本語を勉強する人も多いため、比較的日本語を流ちょうに話す人材が見つかりやすいものと推察されます。
競争で生き残るために長時間労働をすることに抵抗がない、儒教の影響から年功序列制に理解があるなど、メンタリティも日本人と似たものを持っています。
ある意味、日本の文化にもっともなじみやすい外国人材と言えるかもしれません。
韓国人エンジニアを採用する際の注意点
韓国人が、日本人と似たメンタリティを持っているとはいえ、それでも感情表現はストレートな部類に入ります。
自己主張も強めのため、日本人と同じレベルで空気を読む働き方を期待しているなら、その点は難しいかもしれません。
また、意思決定の早さは、ビジネスにおいて諸刃の剣となります。
ベンチャー企業など、フットワークが軽い職場ならそれでも問題ないかもしれませんが、製造業で一定規模の工場を持つ企業で働く場合、必ずしもそのスピード感が受け入れられるとは限りません。
そして、韓国には徴兵制度があるため、すでに兵役を終えている・または免除されている人材かどうかを確認することも、採用を検討する上では重要なポイントです。
ただし、政府に認められた研究所で一定期間働けば、兵役が免除になる技術者優遇制度もあります。
まとめ
日本で働く外国人は、地理的な事情もあり、アジア圏の人材が多く見られます。
特に・中国・ベトナム・韓国の人材は、エンジニアとして魅力的な性質を備えています。
しかし、日本企業で雇用するとなると、それぞれの国の事情について理解した上で採用を決断する必要があるため、その点には注意が必要です。
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