製造業では、人手不足を補うために外国人を雇用する企業が増えています。
外国人を雇う際に気になるのは、「どのような在留資格を持っている外国人なら雇えるのだろうか」ということではないでしょうか。
外国人が製造業界で働けるかどうかは、取得している在留資格によって決まり、さらに、在留資格の種類によって就業できる仕事は異なってきます。
そこで本記事では、製造業で外国人を雇用するメリットとともに、雇用の際に必要となる在留資格や留意点などについて、わかりやすく解説します。
製造業が外国人労働者を雇う4つのメリット
製造業において、外国人を雇うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
主なものとして以下の4つが挙げられます。
- 人手不足の打開策になる
- 新たな事業展開の足がかりになる
- 社員全体の労働意欲向上につながる
- 海外進出の可能性が視野に入る
それぞれ詳しく見てみましょう。
メリット①:人手不足の打開策になる
万年人手不足といわれている製造業。
経済産業省が製造業を対象に実施した調査(2016年・2017年)によりますと、「(人材確保は)大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」と回答した企業が、22.8%から32.1%に増えています。
この人手不足の問題を解消するために注目されているのが、外国人労働者の受入れです。
製造業に従事している外国人労働者の割合は、2020年時点で約50万人と、毎年増加してきています。
このように、外国人労働者は、製造業にとって人手不足を補う存在として期待されています。
とりわけ、若い外国人を雇うことは、長期的な人手不足の課題を解消することにつながるでしょう。
参考記事:製造業はなぜ人手不足?原因と人材定着・生産性向上に向けた対策を紹介
メリット②:新たな事業展開の足がかりになる
現状を打開するために、皆で知恵を出し合ってもなかなか良いアイデアが生まれないことがあります。
その時に、役に立つ可能性として考えられるのが、外国人社員の意見です。
外国人には、日本人にはない考え方や習慣を持っています。
そこから生まれたアイデアが課題の解決につながったり、新製品を生み出すきっかけになったりするなど、事業の発展に貢献することが期待できます。
メリット③:社員全体の労働意欲向上につながる
外国人の雇用は、職場環境をプラスに変える可能性があります。
その理由は、外国人労働者が持つ独自の価値観と、仕事に対する意欲。
日本人からすると面白みのない作業でも、外国人はやりがいを感じることがあります。
また、母国に残してきた家族に仕送りするために、必死に働く外国人もいます。
意欲的に作業に打ち込む姿を見て「よし、自分も初心に帰ろう」と、やる気になる日本人社員も出てくるでしょう。
労働者のモチベーションが上がると、生産性が向上しやすくなり、その結果、会社の利益アップにもつながります。
メリット④:海外進出の可能性が視野に入る
外国人労働者を雇うということは、海外進出に有利になることが期待できます。
日本市場は縮小傾向にあるといわれていて、製造業も例外ではありません。
海外に販路を見出す企業が増加傾向にある中、将来海外進出もあり得ると考えておいた方が得策でしょう。
海外とネットワークを構築する場合、外国人社員がいると、よりスムーズになることがあります。
例えば、外国人労働者の母国に進出する場合、その国の言語や文化に精通していることから、交渉役として活躍してくれる可能性が高まります。
外国人が製造業に従事するために必要な在留資格とは?
外国人が製造業に従事するためには、特定の在留資格が必要です。さらに、担当する作業によって必要な在留資格が異なります。
製造業の仕事は、単純作業または技術職の2種類に大きく分けられます。
前者は、製造ラインなど工場の現場で行われる作業を指します。一方後者は、バックオフィスやエンジニアリングといった、専門性の高い仕事のことです。
単純作業を「現場(製造ライン)部門」、技術職を「技術部門」と「事務部門」に分けて、それぞれどのような仕事が該当するのか見てみましょう。
「現場(製造ライン)部門」
単純作業とはいわゆるマニュアルワークのことで、単純作業者は、現場で指示通りに作業する人を指します。
製造業の場合、
- 仕分け
- 組み立て
- 梱包
- 検査
- 検品
といった作業が、単純作業にあたるでしょう。
「技術部門」
エンジニアリングには、幅広い意味がありますが、簡単にいうと「ものづくりの科学技術」のことです。
製造業におけるエンジニアの仕事は
- 製品企画
- 基礎研究
- 品質管理
- 機械設計
- 生産技術
など、多岐にわたります。
「事務部門」
製造業の仕事には、ものをつくるだけでなくバックオフィス業務も含まれています。
バックオフィスには、「後方支援」という意味があり、「バックオフィス業務」とは、直接利益につながらない業務のことをいいます。
- 総務
- 一般事務
- 経理
- 人事
- 広報
- マーケティング
などが、バックオフィス業務として挙げられます。
このように、製造業にはさまざまな仕事があります。
外国人労働者を雇う場合は、どの仕事をしてもらいたいかを明確にしたうえで、必要な在留資格を確認することが大切です。
次の章から、現場作業と技術職に必要な在留資格について、それぞれ詳しく説明します。
現場(製造ライン)部門に従事するために必要な在留資格とは
現場(製造ライン)の業務に就く外国人に必要な在留資格は、以下の2種類です。
- 「技能実習1・2・3号」
- 「特定技能1・2号」
どのような在留資格なのか、詳しく見てみましょう。
技能実習1・2・3号
「技能実習」とは、「我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う人づくりに寄与することを目的として、1993年に創設された制度」です。
参考記事:技能実習生とは|外国人技能実習制度のあらましや要件・受入れ方法等を解説
技能実習は、1号・2号・3号とさらに在留資格が細分化されており、各区分に応じて「技能実習計画」で定められた技能を習得していきます。
- 技能実習1号:入国後1年目の技能を習得する活動
- 技能実習2号:入国後2・3年目の技能等に習熟する活動
- 技能実習3号:入国後4・5年目の技能等に熟達する活動
ただし、技能実習2号・技能実習3号への移行対象職種は、以下の86職種158作業と法令で定められていますので、自社の作業・業務内容をしっかりと確認しましょう。また、技能実習1号から2号、2号から3号へ移行するためには、技能検定試験(実技・学科)に合格する必要があります。
なお、技能実習2号・3号を良好に修了した方は、次にご紹介する特定技能へ一定の条件を満たすことで移行することができます。
特定技能1・2号
「特定技能」は、深刻な人手不足を解消するため、2019年に新たに創設された在留資格です。12の特定産業分野において、単純労働を含めた作業に外国人労働者が従事可能となりました。
●特定技能産業分野(12分野)
技能実習のように、特定技能1号と特定技能2号と2つの区分に分かれており、熟達した技能を有すると認められた場合、特定技能2号の在留資格へ移行することが可能です。
特定技能2号には、在留期間に上限は設定されておらず(特定技能1号は最長5年間)、家族の呼び寄せも可能になります(特定技能1号は不可)。
参考記事:特定技能2号が業種拡大へ!事業主が押さえておきたいポイント
特定技能1号の在留資格を得るためには、分野ごとに実施される特定技能評価試験と日本語能力試験(N4相当)に合格する必要があります。
しかし、技能実習2号と3号を良好に修了した方は、技能実習時と同じ産業分野に限り、上記の試験が免除されますので、現在技能実習2号・3号で雇用している受け入れ企業様は、実習期間満了とともに、特定技能へ移行させることが可能です。
参考記事:在留資格・特定技能1号取得に必要な技能試験・日本語試験について解説
技術部門・事務部門に従事するために必要な在留資格とは
技術部門と事務部門の雇用に必要なのは、「技術・人文知識・国際業務」と呼ばれている在留資格です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人は、
- 技術(管理・設計・研究などの仕事)
- 人文知識(広報・経理・総務などの仕事)
- 国際業務(翻訳・通訳などの仕事)
の3分野で就業できます。
つまり、エンジニアリング業務やバックオフィス業務において外国人を雇う場合、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要であるということです。
ただし、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持った外国人は単純作業に従事することはできない点に注意しましょう。
「技術・人文知識・国際業務」は、一定の条件を満たした外国人が取得可能です。具体的には以下1又は2のいずれかと3の要件を満たしている必要があります。
- 従事しようとする業務について、関連する科目を専攻して大学もしくは専修学校の専門課程を修了している
- 従事する業務について、10年以上の実務経験を有すること(大学等での関連する科目を専攻した期間を含む。)
- 日本人が従事する場合に受け取る報酬と同等額以上の報酬を受けること。
参考記事:外国人のエンジニアを日本で雇用する方法!就労ビザの種類や注意点を解説
例外:3種類の在留資格がなくても製造業で働ける外国人はいる
実は、単純作業者や技術職に特化した在留資格がなくても、雇用できる外国人はいます。
それは、以下のような、いわゆる「身分系」と呼ばれる在留資格を有する方になります。
- 永住者
- 定住者
- 日本人の配偶者
上記に区分される外国人に就労規制は課されていません。
そのため、日本人と同じように製造業においても単純作業を含めて従事・雇用することが可能です。
その他にも、在留資格「留学」、「家族滞在」を取得されている方は、アルバイト形態であれば雇用することが可能です。ただし、「資格外活動許可」を得ている場合に限られ、かつ労働時間は週28時間以内と制限されている点は押さえておきましょう。
特定活動46号について
「特定活動46号」とは、外国人留学生の雇用機会を広げる目的で創設された在留資格です。
特定活動46号を持つ外国人は、管理業務や翻訳業務、接客業務などの仕事に就くことができます。「技術・人文知識・国際業務」と似ていますが、一部単純作業にも従事することが可能です。ただ、単純作業にのみ従事させることはNGなので、あくまで「日本語や日本に関する知識を生かした仕事に従事する」という前提は必須となってきます。
特定活動46号を付与される要件には、
- 日本の大学または大学院卒業・修了者
- 日本語能力試験(JLPT)のN1合格者(または、「BJTビジネス日本語能力テスト」で480点以上獲得した者)
などがあります。
外国人を雇用する際の留意点
外国人を雇う場合、以下の点に留意しましょう。
- 就業可能な作業内容は細かく規定されている場合がある
- 申請は必ず通るとは限らない
- 労働者の選考は慎重に行う
- 特定技能協議会に加入する(特定技能の場合)
留意点①:就業可能な作業内容は細かく規定されている場合がある
本記事では、わかりやすさを優先するため「技術部門ならこの在留資格が必要」というふうに、簡潔に説明しました。
しかし、実際はもっと複雑です。
例えば、「技能実習」の就業可能範囲は、産業分野や職種だけでなく、作業内容まで法律で細かく定められています。また、特定活動46号の場合、単純作業は可能であるものの、それだけに従事させるのはNGとされています。
雇用する前に、従事させたい仕事の内容をできるだけ細かく決めて、在留資格の要件と照らし合わせることが望まれます。
留意点②:申請は必ず通るとは限らない
外国人労働者の雇用を申請しても、不許可になることがあります。
その理由として多いのが、書類の不備です。
揃えたつもりでも、取りこぼしている場合があります。申請する際は、二重三重とチェックするようにしましょう。
国外から呼び寄せる場合、上陸許可が下りないということも、よくあるケースです。
これは、在留資格の取得に必要な上陸許可基準を満たしていないことが理由として考えられます。
不許可となった場合は、不備を修正し再申請ということとなり、時間がかかります。
人材紹介会社の中には、必要書類の申請サポートを行っているところもありますので、不安な場合はこうしたサービスの利用を検討するとよいでしょう。
参考記事:技人国人材の就労ビザが不許可になる理由|事例や対処法・企業の注意点も解説
留意点③:労働者の選考は慎重に行う
外国人労働者の募集は、
- 自社のSNSから募集をかける
- ハローワークを利用する
- 求人広告サービスを利用する
- 人材会社から紹介してもらう
など、複数の方法があります。
特に独自で雇用する際は、必ず保有している在留資格を確認するようにしましょう。
故意・過失にかかわらず、必要な在留資格を有していないのに雇用してしまった場合、雇用主は「不法就労助長罪」に問われることがあります。
確認と同時に、その書類が本物であるかどうか、自社での業務に従事可能な在留資格かどうかという点も留意しましょう。
外国人の中には、偽造した在留カードを提示する者がいるので注意が必要です。
法務省では、偽造在留カードの見分け方について情報を提供していますので、参考にぜひ参考にください。
・参考:『「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方』(法務省)
留意点④:特定技能協議会に加入する(特定技能の場合)
製造業の場合、「特定技能」の在留資格を持つ外国人を受入れた場合、経済産業省が組織する、協議会に加盟しなければなりません。
在留資格申請前に加入しなければならず、自社の製造品目によっては、加入が断られるケースもあったりします。(自社の製造品目が合致せず、協議会に加盟できないことが理由で、特定技能外国人の受け入れができないケースもあったりします。)
参考記事:【特定技能】製造業(製造3分野)の協議会とは|概要・入会手続き等を解説
まとめ
製造業における外国人労働者が必要な在留資格についてご紹介しました。
製造業における外国人労働者の仕事を、「現場(製造ライン)部門」「技術部門」「事務部門」の3種類に分けた時に必要となる在留資格は、以下の3種類でした。
- 技能実習1・2・3号
- 特定技能1・2号
- 技術・人文知識・国際業務
外国人労働者の雇用は、製造業全体を底上げしてくれるなどのメリットはありますが、募集から在留資格の確認、必要書類の作成・手続きまで自力でやろうとすると、労力と時間がかかります。
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