自社で外国人を雇用するにあたり、その人がどんな在留資格で日本に滞在しているのか確認することは、後々の雇用トラブルを防ぐ上で重要です。
しかし、中には聞き馴染みのない在留資格や、詳細がよく分からない特殊な在留資格も少なくありません。
「特定活動」という在留資格もその一つで、日本で認められている特定活動の種類は数多く存在しています。
この記事では、在留資格・特定活動の詳細に加えて、特定技能1号への移行予定者に関する特例措置、雇用時の注意点などを解説します。
特定活動とは
在留資格「特定活動」についてかんたんに説明すると、いわゆる「イレギュラーケース」に対応するための在留資格です。
特定技能や技術・人文知識・国際業務などといった、メイン扱いの在留資格ではない点に注目すると、理解しやすいかもしれません。
「在留資格を分類できない人」のための在留資格
一般的に、在留資格とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)における別表第一・第二に掲げられた資格のことをいいます。
しかし、ルールを厳密に適用すると、その中にある在留資格のいずれにも分類できない活動に従事している外国人は、日本に在留できないことになりますよね。そこで、現在ある在留資格のどれにも当てはまらない活動に従事する外国人については、特定活動の在留資格が適用されるようになりました。一般的な在留資格に当てはまらない外国人が、日本に滞在するための仕組みと考えると、イメージしやすいかもしれません。
特定活動に関する決定権は法務大臣が持っていて、法改正によることなく、在留可能な活動の種類を増やせます。
比較的最近の例としては、新型コロナウイルス感染症によって、帰国が困難になった人向けの特別措置があげられます。
一般的な在留資格に比べると、柔軟な対応ができる点において、特定活動は特殊です。また、特定活動のすべてが就労を認めているわけではないので、企業が特定活動の在留資格を持つ人材を雇用する際には注意が必要です。
特定活動の種類について
特定活動は、一定の職種ではなく、個人の事情に応じて在留許可が認められます。
また、根拠となる法律等も異なり、大きくは以下の3種類に分類されます。
以下、それぞれのケースについてご紹介します。
入管法で規定されているもの
入管法上で規定されている特定活動は、次の3種類が該当します。
上記のケースに該当する外国人とやり取りするケースは、多くの企業にとっては非常に珍しいことですから、外国人の雇用において重要性は薄いものと考えてよいでしょう。
法務省の告示によるもの(告示特定活動)
特定活動の種類がもっとも多いのが、法務省の告示によるもの・告示特定活動です。
告示特定活動は、流動性がある在留資格のため、状況により増減します。
法務省の“在留資格「特定活動」告示一覧”によると、2023年1月時点では以下の特定活動が存在します。
一般的に、告示特定活動は「○号告示」といったように、告示の番号で呼ばれます。
上記内容も、あくまでも2023年1月時点での情報なので、将来的に追加・削除される可能性は十分あります。
その他(告示外特定活動)
上記の在留資格すべてに当てはまらなかった外国人の活動内容は、告示外特定活動に分類されます。法務大臣が、外国人の諸々の事情を勘案した結果、活動を認めたケースが該当します。
具体的なケースとしては、以下のような告示外特定活動があげられます。
企業の採用活動において重要な特定活動とは
特定活動には様々な種類があるため、自社で外国人の採用を想定して在留資格をチェックする場合、その特定活動が就労可能かどうかを確認する必要があります。
これから特定活動人材も含めた外国人採用を検討するのであれば、以下のケースに注目しましょう。
日本で働きたいと考えている学校の卒業生
日本の大学・専門学校を卒業する前に就職先が決まらず、卒業後も就職活動を継続している外国人は、特定活動の在留資格を取得しています。
留学生が学んだ分野の仕事を任せられるのであれば、その人材が技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得した後、自社で働いてもらえるでしょう。
対象となる人材は、以下の3通りです。
国家戦略特別区域(国家戦略特区)とは、第2次安倍内閣の中核を担う成長戦略で、世界で1番ビジネスがしやすい環境の創出を目的としたものです。海外の大学・大学院を卒業・修了し、日本語教育機関を卒業した後も日本で就職活動を行う際は、就職活動のための在留資格が最大で1年間認められます。
特定活動46号
2019年5月に告示された資格で、留学生である外国人材を、そのまま日本国内で採用するケースが当てはまります。
外国人の就労が難しいとされる、接客業務・製造業務に従事できる特定活動です。
ただし、比較的条件は厳しめで、許可にあたり以下の条件が課せられています。
単純な接客・製造業務に従事することは可能ですが、それだけを業務内容とするのは認められません。
単純な製造業務に従事できるのは「特定技能」ビザです。詳しくはこちら⇒製造業の特定技能外国人受入れ|製造3分野の統合についても解説
翻訳・通訳要素のあるコミュニケーション、商品企画や技術開発といった専門知識を活かせる業務に従事するイメージになるでしょう。具体的には、飲食店ならフロアマネージャーとして、スタッフ指導やシフト管理に携わる形です。観光案内を行うタクシードライバーなら、観光プランの企画立案に加えて、ドライバーとして観光案内も行う人材が対象となります。
在留期間は5年・3年・1年・6ヶ月・3ヶ月のうち、いずれかに決定されます。留学からの変更、初めての在留期間更新に関しては、1年の在留期間が認められます。
職場に関しては、基本的に日本の公私の機関であれば問題ありません。ただし、派遣での働き方、法制限のある業種、風俗業等は認められません。
ワーキングホリデー
ワーキングホリデーとは、休暇目的で入国した外国人が、滞在期間中における旅費・滞在費を得るための就労を認める制度のことです。
日本と協定等を結んでいる国・地域の外国人が対象となり、ワーキングホリデー査証の発給要件は、以下の8つが該当します。
在留できる期間は1年または6ヶ月で、期限の延長・在留資格の変更は原則不可です。
よって、ワーキングホリデー人材を正社員として雇用する場合、いったん日本から出国してもらった後で就労ビザへの切り替えが必要になります。
その他、税率に関しても居住者とルールが異なります。ワーキングホリデー人材は、所得税法上は非居住者という扱いになり、日本国内で稼いだ収入にかかる所得税率は20.42%となるので注意しましょう。
特定活動9号(インターンシップ)
インターンシップとは、学業の一環として、日本の企業で報酬をもらいながら実習を行う活動のことです。
インターンシップとして、特定活動の在留資格が認められる主な要件は、以下のようなものがあげられます。
インターン学生を受け入れる場合、総じて日本語でのコミュニケーションを取りやすい学生を探しやすく、意欲の面でも高い人材に出会える可能性が高いでしょう。しかし、単純作業を主体とした業務を任せることはできませんし、当人の就業意識はそれほど高くないケースも多く見られます。
在留期間も、1年を超えず、かつ大学の修業年限の1/2を超えない期間となっているため、長期的な戦力として期待するのは難しいでしょう。ちなみに、報酬のないインターンシップについては、90日未満なら「短期滞在」の在留資格となり、90日以上は「文化活動」となります。
サマージョブ
サマージョブとは、外国の大学に在籍する外国人が、その大学の長期休暇を利用して日本で仕事をする制度のことです。サマージョブという名称の通り、主に夏季休暇が想定されていますが、必ずしも夏季休暇のみに限られません。
外国人材がサマージョブに従事するためには、日本の受入機関側で、受入態勢や指導体制が確保されていることが条件です。
安価な外国人労働者の供給源として、悪用されることのないよう、審査も厳格になりがちです。
もっとも、在留期間は3ヶ月を超えることができないので、長期的な労働者として期待はできません。ただ、企業としてはインターンシップよりも負担を少なくして外国人学生と接点を持てるので、メリットは十分あると言えるでしょう。
難民
入管で難民申請を行い、難民であると認められた外国人は、定住者の在留資格が与えられます。具体的には、戦争等の理由で迫害を受け、日本に逃れてきた人が対象です。
定住者の場合、入管法上で活動に制限は設けられていないので、日本人同様に就労することは可能です。ただ、認定される人数は少ない傾向にあり、日本語教育などの問題もあります。
逆に言えば、企業が積極的に難民に就労の機会を与えられれば、社会的評価は高まるものと予想されます。
自社で雇用の準備が可能なら、積極的に採用の機会を設けたいところです。
特定活動と特定技能の関連性について
特定技能1号の在留資格に変更を希望している人材に関しては、就労を予定している受入機関で働きながら移行準備を行えるよう、特定活動(4か月・就労可)への在留許可申請ができます。この仕組みは、在留期間の満了日までに必要書類をそろえられないなど、移行のための準備に時間を要するケースを想定してのことです。
ただし、上記の特定活動で在留中に、受入機関の変更を理由に再度特定活動の在留資格に変更することは、原則として認められません。
しかし、申請人の責めに帰すべき事由によらず、従前の受入機関での就労が困難になってしまった場合は、その限りではありません。
まとめ
在留資格「特定活動」は、活動内容が幅広く、しかも告示次第で増減する在留資格です。
不安定な資格であり、企業側がすべてのケースを網羅することは困難なため、採用活動にあたっては専門家の手を借りながら慎重に行いましょう。
外国人材の採用を積極的に進めたいなら、人材紹介のプロの力を借りるのが近道です。
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