1号特定技能外国人の雇用に関しては、受入をスタートさせた後も、諸々の手続きが求められます。
その中の一つが「定期報告」で、四半期に一度、特定技能外国人に関する書類を入管に提出しなければなりません。
特に、初めて特定技能外国人を雇用した企業にとっては、具体的な報告の流れや注意点がイメージできないのではないでしょうか。
この記事では、そんな定期報告の内容や、作成のポイントについて解説します。
特定技能の定期報告とは
特定技能の定期報告は、年度あたり4回の報告を行う必要があり、登録支援機関に支援を委託しているかどうかで企業側の必要書類が変わってきます。
以下、定期報告の概要についてご紹介します。
定期報告の提出期間について
定期報告は、四半期に一度必ず行うもので、提出期間は以下の通り定められています。
例えば、第3四半期の定期報告は、10月15日までに届出が必要になります。
登録支援機関に委託しているケースの必要書類
登録支援機関のサポートを受けている場合、企業側が提出する書類は以下の通りです。
参照:特定技能所属機関(受入れ企業・事業主の方)による定期届出 提出資料一覧表
報酬の支払いを通貨払いにしている場合は、報酬支払証明書が必要になります。
原則として、届出が遅延することは認められませんが、万一遅延した場合はその理由を記載した「報告遅延理由書」の提出が求められます。
自社支援を実施しているケースの必要書類
登録支援機関に支援を委託せず、自社支援を実施している場合、企業側が提出する書類は以下の通りです。
相談・苦情対応が発生した場合、定期面談を実施した場合などに、別途書類を提出する必要がある点に注意しましょう。
理由書に関しては、基本的に登録支援機関に委託しているケースと同様です。
特定技能の定期報告における書類作成のポイント
特定技能の定期報告において、企業は必要に応じて様々な書類を作成・提出しなければなりません。
以下、それぞれの書類につき、作成のポイントをご紹介します。
登録支援機関に委託しているケースの書類について
登録機関に委託していても、受け入れ企業から提出が必須の書類も多いので、届出の中で間違えやすいポイントを押さえた作成が重要です。
以下、それぞれの書類作成におけるポイントをまとめました。
①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号)
受入れ・活動状況に係る届出書には、届け出る対象期間に在籍していた、特定技能外国人の情報について記載します。
具体的な届出事項としては、以下のようなものがあげられます。
届出書作成のポイント
届出書の“5 雇用状況に関すること”については、具体的な従業員の人数を記載する欄が設けられています。
つまり、在籍者数・新規雇用者数・離職者数・行方不明者数を数字として記載する必要があります。
カウントする従業員は、フルタイムで就労している人が対象です。
特定技能所属機関(企業)が雇用するすべての従業員が対象となるので、特定技能外国人が働いている事業所以外の事務所に勤務する従業員も含まれます。
また、在籍者数・新規雇用者数に関しては、届出対象期間内に「就労」を始めた人が対象となるので、単純に雇用契約を締結しただけの人は人数に含まれません。
“10 特定技能外国人の受入れに要した費用の額”については、①・②それぞれの費用としてどのようなものが該当するのか、イメージが湧かない人も多いかもしれません。
上記の①に関しては、例えば登録支援機関への支援委託手数料、日本語学習のための教材費などが該当します。
続いて②は、参考書式第1-16号「雇用の経緯に係る説明書」に記載した費用が含まれます。
具体的には、紹介手数料・ビザ申請費用などが該当しますが、渡航費用や住居の準備費用に関しては外国人が負担するケースもあるので、その場合は外国人負担分と分けて記載します。
なお、法人の場合は本店・本社から1部提出し、個人事業主の場合は事業主が1部提出します。
②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号別紙)
特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況に関しては、記載事項が一つひとつ区分されているので、どこに何を記載すべきなのか比較的分かりやすいはずです。
氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留カード、活動日数、給与など、対象期間内に受入れた特定技能外国人の情報を記載していきます。
給与等の額を記載する際は、給与等の額を計算するタイミングに注意しましょう。
あくまでも、届出の対象期間において「該当する月」に支払われた額を記載するので、賃金の締切日は関係ありません。
例えば、毎月20日締めの翌月10日支払いであるなら、6月の支払額は「4月21日~5月20日」までの就労分を記載することになります。
また、給与の支払いがない月に関しては、斜線を入れておきましょう。
③、④賃金台帳の写し
賃金台帳の写しに関しては、
上記2点が必要です。
自社に比較対象となる日本人がいない場合、すでに退職してしまった場合は、特定技能外国人と「同一の業務」に従事する日本人従業員の賃金台帳を提出します。
⑤報酬支払証明書
自社の給与が現金払いである場合は、報酬支払証明書の作成・提出が必要です。
記入が必要な内容は比較的単純なもので、以下の情報を証明書に記入後、特定技能所属機関(企業)側と特定技能外国人側の署名があれば問題ありません。
注意点として、報酬支払証明書は特定技能外国人1名につき1枚が必要になるため、対象となる特定技能外国人が複数人いるのであれば、全員分の証明書を提出しなければなりません。
⑥理由書
理由書は、届出期間内に届出ができなかった場合、その理由を記載して添付するための書類です。
それ以外にも、その他の届出事項等について、以下のような「特異な状況」を説明する際に用いられます。
なお、様式に関しては任意のため、自社の書式等で作成して構いません。
自社支援を実施しているケースの必要書類について
自社支援を行っている企業は、登録支援機関に委託しているケースとは異なる届出を行う必要があります。つまり、登録支援機関が作成してくれる書類は、自分で作成しないといけなくなります。
以下、それぞれの書類作成におけるポイントをまとめました。
※①受入れ・活動状況に係る届出書(参考様式第3-6号)
②特定技能外国人の受入れ状況・報酬の支払状況(参考様式第3-6号 別紙)
⑤賃金台帳の写し(特定技能外国人のもの)
⑥賃金台帳の写し(比較対象の日本人のもの)
⑬報酬支払証明書(給与が現金払いである場合)
上記5つの書類の記入ポイントは「登録支援機関に委託しているケース」と同じなので、ここでは割愛します。
③、④支援実施状況に係る届出書(参考様式第3-7号)/1号特定技能外国人支援対象者名簿(参考様式第3-7号 別紙)
支援実施状況に係る届出書には、特定技能所属機関(企業)の法人番号・名称・住所等を記載して、当該四半期中に実施予定となっている支援を実施したかどうかチェックを入れます。
支援を実施した特定技能外国人が複数人いて、支援状況が同じである場合は、別紙となる「1号特別技能外国人支援対象者名簿」を併せて提出することもできます。
⑦相談記録書(参考書式第5-4号)
特定技能外国人とのやり取りの中で、相談・苦情対応が発生した場合、相談記録書に以下の情報を記載して提出します。
相談・苦情対応が発生しなかった場合、提出の必要はありません。
注意点として、すべての相談・苦情案件は、対応結果まで記されていることが提出時の条件となります。
⑧定期面談報告書(1号特定技能外国人用/参考書式第5-5号)
定期面談報告書は、届出対象期間中に定期面談を実施した場合に提出します。
報告書には、面談対象者(1号特定技能外国人)・面談対応者の情報、面談結果等について記載します。
面談事項は多岐にわたりますが、原則としてすべての項目につき問題が「無」となっているのが基本です。
もし問題が発生していた場合、次項の「法令違反等への対応」への記載も必要です。
面談の結果、出入国または労働に関する法令に関して、不正・著しく不当な行為の発生を知った場合、特定技能外国人の保護を図るための措置を取り、関係行政機関に通報を行わなければなりません。
また、そのような行為を行った特定技能所属機関は,地方出入国在留管理局・支局に「出入国又は労働に関する
法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出書(参考様式第3-5号)」を提出する必要があります。
⑨定期面談報告書(監督者用/参考書式第5-6号)
同じ定期面談報告書でも、こちらは監督者用の報告書です。
その他の基本的な記載事項は、1号特定技能外国人用の書式と同じで、届出対象期間中に定期面談を実施した際に提出します。
⑩転職支援実施報告書(参考書式第5-12号)
転職支援実施報告書は、非自発的離職時の転職支援を実施した際に提出する報告書のことです。
特定技能外国人を、非自発的に退職させたケースとしては、以下のような例があげられます。
⑪支援未実施に係る理由書 (参考書式第5-13号)
支援未実施に係る理由書は、1号特定技能外国人支援計画書において実施予定であった支援について、未実施のものが生じた場合に提出する書類です。
以下の中で未実施のものにチェックを入れて、その理由や担当者名などを記載します。
未実施の理由を書く際は、チェックを入れたそれぞれの項目別に書くのがよいでしょう。
ただし、簡潔に理由を記入することを忘れずに。
まとめ
四半期に1度報告をしなければならない定期報告は、登録支援機関に委託していても、企業側で用意する資料があります。
登録支援機関と連携しながら、確実に必要な書類を用意することが大切です。
自社支援を実施している企業は、さらに必要書類が増えるので、担当者の負担も大きくなるでしょう。
特定技能人材を雇うことを検討中の経営者様・企業担当者様は、登録支援機関として実績十分のFactory labにご相談ください。