特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

July 24, 2023

更新日

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宿泊業の特定技能について|ホテル・旅館で働く外国人材は将来性に期待大!

目次

特定技能の全14分野のうち、もっとも外国人材の持つホスピタリティが重要になってくるのが、海外からの観光客を迎え入れる機会が多い宿泊業です。

単純に人材不足の解消につながるだけでなく、旅行好きの外国人材をスタッフとして雇用することによって、自社の施設のリピーター増につながるようなサービスを提供したり、新しいツアーのアイデアが生まれたりすることも期待できます。

 この記事では、宿泊業の特定技能人材を雇用するにあたり、ホテル・旅館等を経営する企業が押さえておきたい内容について解説します。

宿泊業で特定技能人材が求められている背景

宿泊業は、日本におけるインバウンド客数の増加とともに、人材不足に悩まされています。

以下、宿泊業に人が集まりにくい理由と、特定技能人材が求められている背景について解説します。

訪日外客は増加している

JNTO(日本政府観光局)の統計「訪日外客統計」によると、新型コロナ禍の時期を除いて、日本を訪れる外国人の数は総じて増加傾向にあります。

2011年から2019年までの訪日外客数は、以下の通り右肩上がりの数字を記録しています。

年度総数
20116,218,752人
2012 8,358,105人
2013 10,363,904人
2014 13,413,467人
2015 19,737,409人
2016 24,039,700人
2017 28,691,073人
2018 31,191,856人
2019 31,882,049人

世界的に、新型コロナウイルスの影響力が弱まったことを受け、2023年以降は再び訪日外客の増加が見込まれます。

観光業・宿泊業に従事する企業が、機会損失を生み出さないためには、まとまった数の運営スタッフを確保することが重要と言えるでしょう。

 宿泊業の仕事は日本人に不人気

日本が海外観光客から人気を集める一方で、宿泊業において求められる業務の多くは、総じてハードワークを要求される傾向にあります。

日本人独自の価値観である「おもてなし」は、日本人なら一見誰でもできそうなイメージを持つかもしれませんが、実際のところスタッフには高いホスピタリティが要求されるため、誰でもできる仕事とは言えません。

お客様を迎え入れる立場のホテルでは、その職場の特性上、スタッフに長時間勤務や不規則な時間帯での勤務などを求める場合があります。

にもかかわらず、賃金水準が他の産業よりも低いことから、どうしても日本人は他の業種の仕事を選びがちです

特に、東京など大都市での人手不足は深刻で、東京都の「サービスの職業」の求人倍率は、2023年3月で4.46倍となっています。

2023年春卒の新卒採用において、ホテル業界の内定が例年よりスピーディーに出ているなど、人材を確保したいと考えるホテル等の動きは活発です。

このように、宿泊業は採用に積極的な業界であるにもかかわらず、新型コロナ禍を経験した日本人求職者からは不人気な業種です。

理由は宿泊業の不安定さで、新型コロナ禍においては、経営不振に陥った企業で働き始めたものの、入社6ヶ月で希望退職を迫られた人もいるようです。

せっかくビジネスチャンスが巡ってきても、それを活かすための人材が集まらなければ意味がありません。

そこで、宿泊業の特定技能資格を有する人材を、何とかして採用したいと考える企業が増えているのです。

優秀な人材は奪い合いに

宿泊業全体で、需要はあるのに供給が追い付かない状況ということもあり、優秀な人材はより熾烈な奪い合いに発展するものと予想されます。

海外の富裕層向けなど、高品質のサービスを提供する観点から、外国人材も含め能力の高い人材を確保するのはさらに厳しくなるでしょう。

欲しい人材を確保するためには、給与体系を見直したり、シフトの見直しを検討したりする必要が生じます。女性の就労者が多い職場でもあるため、ライフイベントに応じた働き方が可能となるよう、新たな仕組み作りも求められるでしょう。

 スマートチェックインなど、フロント業務の負担をIT化によって軽減する動きも見られます。荷物を目的地まで自動で運んでくれるロボットも登場しており、今後も人手不足解消のための新技術が宿泊施設に導入されることでしょう。

しかし、これらの改善を一朝一夕で行うことは、決して簡単ではありません。

老舗旅館など、建物の構造から導入が難しいケースなども考えられるため、やはり人力には一定のニーズがあるものと考えられます。

就労意欲が高い外国人材を雇用することで、他の社員のモチベーションアップを期待する経営者も多いはずです。

宿泊業の特定技能人材を受入れる前に

宿泊業で特定技能人材を受入れるにあたっては、企業側で受入要件を満たす必要があります。

以下、具体的な要件や人材が従事できる業務などについて解説します。

企業の受入要件について

宿泊業の分野につき、企業が特定技能人材を受入れるためには、次の条件を満たしていなければなりません。

条件詳細
① 旅館業を営んでいること
○旅館・ホテル営業の許可を受けている必要がある
※(旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第2項)
○簡易宿泊・下宿の営業許可では、特定技能外国人の雇用は不可
② 風営法の規定する施設に該当していないこと
いわゆるラブホテルはNG
※(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第 122号)第2条第6項第4号)
③ 接待を行わせないこと
特定技能外国人に、歓楽的雰囲気を醸し出す形で客をもてなすような業務を行わせてはならない
④ 宿泊業の特定技能協議会に加入すること
○初めて特定技能人材を受入れる際は、当該人材の入国から4ヶ月以内に、国土交通省が設置する宿泊業の特定技能協議会に加入しなければならない
○協議会に対して、必要な協力を行うことも求められる

なお、多くの企業は登録支援機関に支援を委託することになるものと考えられます。

その場合、支援を委託した登録支援機関についても、雇用開始後4ヶ月以内に協議会への加入が必要です。

宿泊業の特定技能人材が従事できる業務

宿泊業の特定技能人材は、宿泊施設に関連する次のような業務に従事できます。

業務内容詳細
フロント業務
チェックイン、チェックアウトの手続き
ホテル周辺の観光地情報の案内
ホテルに発着するツアーの手配 など

企画・広報業務
キャンペーンや特別プランを立案すること
建物・館内の案内チラシ作成
自社サイト・SNSによる情報発信 など
接客業務
施設・館内の案内
宿泊客からの問い合わせ対応 など
レストランサービス業務
注文への応対・サービス(配膳や片付け)
料理の下ごしらえ・盛り付け など

 上記の通り、幅広い職務を任せることができるため、経営者・管理職の立場から見ると安心できるかもしれません。

技術・人文知識・国際業務との違いについて

外国人材の雇用につき、特定技能ではなく、技術・人文知識・国際業務(以下技人国)の在留資格を持つ外国人の雇用を検討している経営者の方・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。

一概にどちらがベターなのかは判断できませんが、技人国ビザと特定技能ビザの違いについて理解しておくと、自社の採用方針を固めやすくなるでしょう。

技人国ビザは、宿泊業の特定技能に比べて、専門性が要求される点に違いがあります。

具体的には「なぜ技人国ビザでなければならないのか」について、合理的な理由を説明しなければなりません。

例えば、中国人の富裕層集客のため、中国の事情に精通した観光学科卒の中国人を採用したいなど、その人材でなければならない理由を深堀りして説明する必要があるのです。

特定技能と技人国、どちらの人材を選ぶべきなのかは、採用ニーズによって変わってくるでしょう。

また、給与水準も変わってくるため、その点にも注意したいところです。

その他の大きな違いとしては、任せられる職務内容の違いがあげられます。

技人国ビザでは、受付業務の対応はOKでも、ベッドメイキング・清掃・配膳といった単純労働は基本的にNGとなっています。

逆に、宿泊業の特定技能なら、そういった単純労働も対応業務の範囲内に含まれます。

外国人材を清掃スタッフとして雇用したいと考えているなら、特定技能「ビルクリーニング」に該当する人材を探すのも一手です。

外国人側が満たさなければならない要件

宿泊業の特定技能ビザ(特定技能1号)を取得したい外国人は、一定の要件を満たす必要があります。

基本的には、他の特定技能ビザと同様に、技能検定試験と日本語能力試験をくぐり抜けた人材だけが取得できます。

宿泊業技能検定試験に合格する

宿泊業の特定技能人材になるためには、一般社団法人宿泊業技能試験センターが実施している「宿泊業技能検定試験」に合格しなければなりません。

試験内容には、学科試験と実技試験があり、出題カテゴリーは以下の5つとなっています。

・フロント業務
・広報、企画業務
・接客業務
・レストランサービス業務
・安全衛生その他基礎知識

学科試験では選択式真偽法(マークシート方式)が採用されており、それぞれのカテゴリーにおいて次のような問題が出題されます。

・日本において、ホテルのチェックイン及びチェックアウトの時間は法律で定められているか
・ホテルの宣伝を目的とした館内の撮影であれば、お客様が映り込んでいても問題ないか
・お客様が病院に行く際は、ホテルのスタッフの付き添いが必要か など

ホテルでの一般的な接客業務だけでなく、広報上の注意点や安全衛生に関する知識も問われます。

また、実技試験においては、宿泊施設の従業員になったつもりで質問に対する回答が求められるので、決して簡単な試験ではありません。

日本語能力をはかる試験で合格点を取る

宿泊業でも、他の特定技能分野と同様、日本語能力をはかる試験の合格が必要です。

合格が必要な試験の種類は以下の通りです。

・「日本語能力試験」のN4レベル
・「国際交流基金日本語基礎テスト」のA2レベル

いずれの試験においても、日常会話レベルの実力が求められます。

技能実習の修了も条件の一つ

宿泊業分野における「技能実習2号」を修了した人材に関しても、宿泊業の特定技能ビザに移行が可能です。

技能実習を良好に修了していれば、試験免除という形で移行できます。

日本に在住している期間が長い分、技能実習からの移行者の方が、安心して仕事を任せやすいでしょう。

よって、自社で技能実習生を雇用しているのであれば、新規採用以上にその人材をケアすることが重要になります。

宿泊業の特定技能人材を雇用する際の注意点

特定技能外国人の受入れに関しては、いくつか注意しなければならない点があります。

以下、詳細を解説します。

受入れの一般的な流れを把握する

雇用した特定技能外国人が、実際に就業開始となるまでのプロセスとは、概ね以下の通りです。

① 雇用したい外国人が、宿泊の特定技能ビザを取得できる要件を満たしているかどうか確認する。試験等の合格状況が確認できたら、特定技能雇用契約の締結へと進む
② 自社が受入要件を満たしているかどうか確認しつつ、外国人材に必要書類を準備してもらう(試験の合格証明書の写しなど)
③ 企業側で、支援計画書・必要書類・申請書類を用意する
④ 就業前に事前ガイダンスを実施する⑤     在留資格の申請を行う
⑥ 申請を得られたら、正式に雇用開始となり、諸手続きを行う

 海外からやって来る人材に関しては、空港への出迎えや生活支援なども必要です。

外国人材の支援にあたっては、登録支援機関からサポートを受ける企業が多いものと推察されますが、雇用保険手続きなど、日本人と同様に自社で対応しなければならない部分もあるため注意しましょう。

支援体制を充実させる

企業としては、受入要件を満たすことはもちろんですが、日本人と同じ労働環境・給与水準での雇用を維持しなければならない点にも注意したいところです。

具体的には、同じ業務に従事している日本人と同水準で雇用する義務があり、それ以外にも仕事や普段の生活の面における支援体制を整える必要があります。

日本国内の事情について理解がある人材であるとはいえ、やはり遠い国からやって来ているわけですから、不便を感じている部分は少なくないはずです。

特に、生活費を少しでも安くしたいと考えている人材は多いものと推察されるため、寮を紹介するなど固定費を安く済ませられる提案を自社で行えるようにしておきましょう。

地域によっては、外国人材の獲得競争が激しくなる可能性もあり、自社の支援体制を良くして他社との差別化をはかることも求められます。

どうすれば特定技能人材に魅力を感じてもらえるのか、要望を把握しながら支援体制を整えたいところです。

まとめ

新型コロナウイルスの影響が収束しつつある状況下において、宿泊業の特定技能人材のニーズは高まるものと予想されます。

早い段階で手を打つことにより、機会損失を防げるでしょう。

海外人材の採用は、増加傾向にある訪日観光客へのスムーズな対応を助けることにもつながります。

自社で支援体制を整えることが難しいとお考えの企業担当者様は、海外人材紹介・登録支援機関としての実績豊富なFactory labをぜひご利用ください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。