特定技能12分野の在留資格を得るためには、各種基準を満たさなければならず、飲食料品製造業に関しては「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」に合格する必要があります。
試験項目は、食品安全や品質管理の基本的な知識から、労働安全衛生に関する知識まで様々です。
合格率が極端に低いわけではありませんが、生半可な勉強では不合格になってしまうおそれがあるため、自社で働いている外国人材の在留資格変更を検討しているなら、企業としても勉強をサポートしたいところです。
この記事では、飲食料品製造業の特定技能における技能検定試験について、難易度・問題の傾向・合格率などについて解説します。
飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験の概要
飲食料品製造業で、外国人材が特定技能の在留資格を取得するにあたり、突破しなければならない試験が「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験(以下技能測定試験)」です。
まずは、試験の目的や試験科目・合格基準など、試験概要についてご紹介します。
試験の目的
そもそも、特定技能制度とは、日本で働く人々が不足している分野につき、海外諸国から専門技能を持つ人材を受入れるために設立されたものです。
よって、飲食料品製造業に限らず、特定技能の在留資格を取得するためには、一定の技能水準を満たしていなければなりません。
飲食料品製造業の場合、外国人材は、一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構(以下OTAFF)が行う技能測定試験に合格する必要があります。
「特定技能の技能測定試験に合格すること」を前提に雇用を内定する場合、特定技能への在留資格変更を前提に継続雇用が予定されている場合などは、企業側としても外国人材の学習をしっかりサポートしたいところです。
なお、これから食品製造業での外国人材雇用を検討されている方は、以下の記事もご覧ください。
▲参考記事:食品製造業における求人票の作り方|外国人材を雇用するケースに触れつつ解説
受験資格
飲食料品製造業の特定技能につき、日本国内で技能測定試験を受けられるのは、試験日時点で以下の条件を満たしている外国人材が対象となります。
その他、飲食料品製造業の特定技能について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
▲参考記事:飲食料品製造業の特定技能|受入条件や従事する業務・雇用の流れなどを解説
試験科目・実施方法等
試験科目は、学科試験と実技試験の2科目に分かれています。
試験時間は80分、マークシートを使ったペーパーテスト方式で、合格基準は満点の65%以上です。
学科試験
学科試験の配点は、労働安全衛生に関する知識の項目が5問(1問5点)で、それ以外の4項目が25問(1問3点)の75点満点となっています。
具体的な項目と内容は以下の通りです。
※参照元:OTAFF|特定技能1号技能測定試験(試験科目、実施方法等)
実技試験
実技試験は、図やイラスト等を見て正しい行動がどれか判断する「判断試験」と、計算式を使って作業の計画を作る「計画立案」の2つに分かれています。配点は、労働安全衛生に関する知識の項目が4問(1問5点・20点満点)で判断試験のみ、それ以外の4項目が6問(1問5点・30点満点)で判断試験4問・計画立案2問となっています。
なお、具体的な項目・内容に関しては、基本的に学科試験と変わりはありません。
技能測定試験に合格するために学ぶべきこと
OTAFFでは、技能測定試験を受験する上で学ぶべき内容を、学習テキスト等の形で用意しています。技能測定試験の過去問は公開されていないため、学習テキストを使った自学自習が基本的な勉強方法となるでしょう。
以下、第3版(2022年3月)に書かれている内容をもとに、受験する外国人材が学ぶべきことを解説します。なお、本文中で紹介されている例はあくまでも例題であり、過去に出題された問題の傾向を予想したものではない点に注意してください。
食品安全・品質管理の基礎
技能測定試験の学習テキストは、試験の項目と同様、5つの章に分かれてまとめられています。第1章では、食品安全・品質管理の基礎について学びます。
まず、食品工場が安全な食品を作り続けなければならない理由、安全な食品を作るための全体像を把握します。その後は食中毒について学び、症状だけでなく、食中毒を引き起こす細菌・ウイルスの種類や、食中毒の原因になりやすい食品についても勉強しなければなりません。
食中毒に関しては、他に細菌・ウイルス別の予防対策や、微生物の増殖についても学びます。微生物が増殖する要素、速さ、増殖を防ぐための方法など、学習範囲は非常に幅広いので注意が必要です。
実際の学科試験の問題例としては、次のようなものが考えられます。
記述式の問題ではないため、テキストをしっかり理解していれば解ける問題は多いものと考えられます。
しかし、「○℃以上・○分以上加熱する」といった、数字に関する問題が出ることも想定されるため、内容を詳細に暗記しておくと安心です。
一般衛生管理の基礎
学習テキストの第2章では、一般衛生管理の基礎について勉強します。体調が悪いときは職場の責任者に報告する・風呂やシャワーで身体を清潔にするなど、現場で働く労働者側の健康管理・衛生管理の重要性を学んでいきます。
作業中の服装に関しても、長めの頭髪はゴムでたばねる、爪は短く切りマニキュアはつけないなど、守るべきことが詳細にまとめられています。汚染区から非汚染区に入るとき、必ず決められた消毒液を使って、洗浄装置で作業靴の消毒・洗浄を行うことも記されています。
作業服の装着の仕方や、作業場に入る前の注意点などは、テキストの中で図説が紹介されています。そのため、実技試験(判断試験)で具体的な手順が問われる可能性もあります。
また、作業中の注意事項や、信号・計器などを指で指しながら名称・状態を声に出して言う「指差呼称」についても触れられています。作業後の機械洗浄、シフト交代時の連絡など、実務で重要なポイントも押さえておきたいところです。
5S活動については、外国人材が日本語として正しく理解できるよう、具体的な行動をイメージして覚えられるようにしたいところです。習慣という言葉の意味を理解してもらうのが難しい場合は、習慣の代わりに「しつけ」のような言葉で覚えてもらうのも一手かもしれません。
その他、異物混入リスク・新型コロナウイルス感染症の予防に関する点についても、試験問題に出る可能性があります。
具体的に想定される学科試験の問題としては、次のようなものが考えられます。
製造工程管理の基礎
学習テキストの第3章では、製造工程管理の基礎について学びます。章の冒頭で危害要因について触れますが、詳細は第4章(HACCPによる製造工程の衛生管理)で詳しく紹介されています。
第1章で登場した、微生物の増殖と温度について復習するため、微生物が最も増殖する温度(10℃~60℃)に関しては、外国人材に改めて覚えてもらうようにしましょう。
加工工程に関しては、微生物を殺す加熱温度と時間についても触れられているので、ほとんどの微生物に適用される温度と時間だけでなく、ボツリヌス菌・ノロウイルスといった例外についても押さえる必要があります。
冷凍庫・冷蔵庫の管理に関しては、冷凍庫が-15℃以下、冷蔵庫が10℃以下など、それぞれの電化製品が対象となる温度を確実に覚えられるようにしたいところです。製品管理に関しては、微生物検査や保管管理(先入先出など)のほか、アレルギー食品の管理にも触れられているので、特定原材料として表示義務がある食品などを中心に覚える必要がありそうです。
なお、製造工程管理の基礎に関しては、計画立案の中で配合について問われる可能性があります。想定される問題の例としては、次のようなものが考えられます。
HACCPによる製造工程の衛生管理
学習テキストの第4章では、HACCPによる製造工程の衛生管理について学びます。
HACCP(Hazard Analysis CriticalControl Point)に関しては、HA=危害要因分析、CCP=重要管理点という形で日本語が紹介されているので、テキスト内の図説と一緒に衛生管理の流れを覚えてもらうとスムーズです。
HACCP対象の健康危害要因(生物的危害要因・化学的危害要因・物理的危害要因)と、7つの原則については、この章の中でも特に重要なポイントとなるでしょう。7つの原則に関しては、外国人材にとってやや抽象的に感じられる説明もあるため、現場の動きに即して具体的に説明できると理想的です。
作業現場でのHACCPの実践に関しては、重要な原則につき、具体的な実践方法の例も紹介されています。
なお、想定される問題の例としては、次のようなものが考えられます。
労働安全衛生
学習テキストの第5章では、労働安全衛生について学びます。テキストでは、労働安全衛生法の紹介後、労働者(働く人達)と事業者が注意しなければならない点について触れています。
安全のための正しい服装や、安全な作業のために必要なこと、転倒やはさまれ(巻き込まれ)などの労働災害についても書かれています。熱中症や腰痛症にも触れられているので、経験がない外国人材に対しては、具体的な症状を感覚的に説明してあげると、理解が深まるかもしれません。
特に、熱中症に関しては、比較的涼しい気候の国からやって来た人にはイメージしにくい症状の一つでしょう。テキストの内容を教えるのと一緒に、現場でのちょっとした違和感を無視しないよう注意しておきたいところです。腰痛症の防止については、重いものを取り扱う際の姿勢や、腰痛症予防のための体操なども紹介されています。
主な労働災害の防止についても書かれており、清掃時や機械を止めているときの注意事項などが記されています。転倒防止などは複数の原因(リスク)が書かれているため、可能であれば現場を見せながら説明できると親切です。
異常事態が発生した際の対応については、自力で対応せず責任者など周囲の人に伝えるよう記載されています。この点に関しては、判断試験で対応を確認するような問題が出る可能性があるため、とにかく自力で何とかしようとしないことを丁寧に伝えておきましょう。
技能測定試験の開催地と合格率
飲食料品製造業の技能測定試験は、日本国外でも行われており、試験実施国はインドネシアとフィリピンの2ヶ国です。試験問題の構成・問題数・試験時間・合格基準は、日本で行われる国内試験と同様となっています。
参考情報として、2023年に行われた飲食料品製造業の技能測定試験の合格率は、66.4%となっています。この回は全国14都道府県で開催され、京都・香川では合格率が70%を超えています。
まとめ
飲食料品製造業の特定技能における技能測定試験は、マークシートで行われ、合格基準は満点の65%です。足切りのような概念はないため、まずは学習テキストをよく読んで勉強することが、合格への近道となるでしょう。
しかし、それでも決して外国人材にとって簡単な試験ではありませんから、自力で人材確保・受験サポートを実施するよりは、人材紹介サービスを活用した方が、採用活動を効率的に進められるでしょう。
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