特定技能

ファクトリーラボ株式会社の代表

山本 陽平

公開日

August 6, 2024

更新日

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自動車運送業(トラック区分)の特定技能|受入要件や各種手続きを解説

目次

特定技能制度が2019年4月に創設されて以来、制度は進化を続け、在留資格を取得した多くの外国人労働者が日本で働いています。

過去の閣議決定では、在留資格の更新回数に上限がない特定技能2号の対象分野が拡大しましたが、令和6年3月29日の閣議決定では新たに4業種(分野)が特定技能の仲間入りをしました。

自動車運送業もその中の一業種であり、主にトラック・タクシー・バスの運転や、それに付随する業務全般が対象となります。

この記事では、自動車運送業(トラック区分)の特定技能に焦点を絞り、受入要件・各種手続きなど幅広く解説します。

自動車運送業(トラック区分)の特定技能が追加された背景

特定技能に新しく自動車運送業(トラック区分)が追加された背景には、主に業界全体の人手不足があります。

大型第一種免許の保有者は減少傾向にあり、公益社団法人 全日本トラック協会の資料によると、2012年末に4,441,453人だった大型第一種免許保有者数は、2022年末には4,083,076人にまで減少し、10年前に比べて約36万人が減少している計算になります。

また、同資料では20代・30代の若年ドライバーの割合が少ないことも示されており、10~30代が96%を占めるともいわれる特定技能人材を確保することが、業界全体の差し迫った課題として捉えられています。

その一方で、外国人材を安全に実務に従事させるには「一定の専門性・技能を有した即戦力の確保」が必要になるため、多くの企業が特定技能人材に熱視線を送っている状況といえます。

特定技能人材を受入れるための要件とは

特定技能人材を受入れるための要件は、主に以下の3つに分かれます。

  • 所属機関(企業)に関する要件
  • 人材側に求められる要件
  • 雇用形態・契約内容に関する要件

以下、それぞれの要件について解説します。

所属機関(企業)に関する要件

人材が所属する企業側に関する要件は、自動車運送業全分野共通の要件のほか、トラック区分の上乗せ要件が存在します。

それぞれの主な要件は以下の通りです。

自動車運送業全分野共通の要件

自動車運送業全分野共通の要件は、以下の通りです。

必要条件●労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること
●特定技能人材との雇用契約を結ぶ日の1年前から契約を結ぶ日までの期間、
 および締結後に、同じ業務に従事する労働者の「非自発的離職」を発生させていないこと
●特定技能人材との雇用契約を結ぶ日の1年前から契約を結ぶ日までの期間、
 および締結後に、企業の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと
欠格事由 ●下記に該当し、刑の執行等から5年が未経過
・禁錮以上の刑に処せられた者
・罰金刑に処せられた者
※(出入国または労働に関する法律/暴力団関係法令/刑法等)
●社会保険各法、および労働保険各法において事業主としての義務に違反した者
※(罰金刑)
●技能実習計画の取り消しを受けて5年が経過していない
※(役員等が取り消された実習に関与していた場合も含む)
●特定技能人材との雇用契約を結ぶ日野5年前から契約を結ぶ日までの期間、または締結後に、出入国・労働関係法令に関する不正行為等を行った
※(保証金・違約金等の契約・徴収も含む)
●その他、暴力団排除、役員の行為能力等に関する規定に抵触した場合
必要な対応 「義務的支援」実施にかかる費用を企業が負担しなければならない

上記における「非自発的離職」には、次のようなケースが該当します。

  • 人員整理を行うための希望退職者募集、または退職勧告を行ったケース
  • 賃金低下、過度な時間外労働など、労働条件にかかる重要な問題があったと労働者側が判断したケース
  • 故意に職場を離れるよう促したり、嫌がらせを行ったりするなど、就業環境にかかる重大な問題があったケース
  • 特定技能人材の責めに帰すべき理由によらず有期労働契約が終了したケース

また、特定技能人材への「義務的支援」について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【特定技能人材の雇用】登録支援機関の役割や選び方のポイント5つを解説!

トラック区分の上乗せ要件

トラック区分に上乗せされる要件としては、次の3点があげられます。

●道路運送法に規定する自動車運送事業を経営する者であること
●下記いずれかの認証・認定を受けていること
・働きやすい職場認証(法人単位での取得が基本)
・安全性優良事業所の保有(Gマーク)
●「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員となり、必要な協力を行うこと

なお、安全性優良事業所の保有は事業所単位での取得になりますが、同じ法人内であれば、外国人を受入れる事業所以外で保有している場合でもOKとされます。

人材側に求められる要件

トラック区分において、自動車運送業の特定技能人材に求められる要件としては、以下のようなものがあげられます。

年齢18歳以上だが、中型・大型の第一種運転免許を取得する年齢要件は、
 それぞれ20歳以上、21歳以上である点に注意
※(「外免切替」のケースでも同様)
健康状態良好であること
※(入管への申請時は健康診断結果を提出する)
技能●第一種運転免許(中型・大型)の取得
●自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック)の合格
日本語以下のいずれかのレベルを満たしていること
●日本語能力試験“N4”以上の認定
●国際交流基金日本語基礎テスト
●技能実習2号の良好修了(良好に修了した技能実習については職種・作業を問わない)

上記における「外免切替」とは、外国で取得した運転免許証を日本のものに切り替えることをいいます。

大まかな流れとしては、以下のようなイメージになります。

・外国等で運転免許を取得した後、一定期間滞在後、外免切替が完了するまで有効な運転免許を持って来日
・「特定活動(上限6ヶ月)」の在留資格で、外免切替に向けた事前準備→取得を目指す
※(不合格の場合は再受験。なお、自動車教習所を卒業して日本の運転免許を取得する方法もある)

雇用形態・契約内容に関する要件

特定技能人材の雇用形態や、契約内容に関する要件は、概ね以下の通りです。

業務内容 トラックの運転、およびそれに付随する業務が認められる
※(付随業務には、業務に従事する日本人が通常従事する関連業務が該当する)
雇用形態および
労働時間
●直接雇用
●所定労働時間は「フルタイム」で、仕事の掛け持ちやアルバイトは不可
※(原則、労働時間は週5日以上・年間217日以上、かつ労働時間は週30時間以上)
賃金「同等の業務に従事する日本人労働者」と同等以上の報酬
※(フィリピン国籍者は別途ルール有)
休暇 特定技能人材が一時帰国を希望した場合、必要な有給休暇を取得させること
※(業務上の理由で、取得させないことがやむを得ない場合を除く)

フィリピン国籍者を受入れる場合、募集前に雇用条件の認証が必要です。

賃金や家賃等に関して、東京・大阪それぞれの移民労働者事務所管轄エリアでルールを設けているため、事前にルールを確認しておきましょう。

なお、外免切替等の理由で、「特定活動」の在留資格で日本に滞在している間は、ドライバーが通常従事する業務のうち「運転免許を必要とする業務以外」に従事することができます。

特定活動について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

在留資格「特定活動」とは|特定技能1号との関連性や雇用時の注意点も解説 

自動車運送業(トラック区分)における、特定技能人材の大まかな採用プロセス

自動車運送業(トラック区分)において、特定技能人材を採用するパターンは、大きく以下の3つに分かれます。

  • 国内の人材・日本の運転免許あり
  • 国内の人材・外国の免許のみ
  • 海外の人材・外国の免許のみ

また、それぞれの採用プロセスは、次にご紹介する表のような流れ になります。

Procedures for accepting foreigners
※出典元:公益社団法人 全日本トラック協会「自動車運送業分野 トラック区分における特定技能外国人受け入れの手引き」

海外の人材を採用する場合、国内に滞在している特定技能人材を採用する場合に比べて、より長期のスケジュールを組むことが見込まれる点に注意しましょう。

自動車運送業(トラック区分)における、特定技能人材採用の注意点

自動車運送業(トラック区分)において、特定技能人材を採用するにあたっては、以下の3つの段階に応じて必要な手続きが存在します。

  • 採用検討開始から採用内定まで
  • 採用内定から入国/国内移動まで
  • 入国/国内移動から業務開始まで

以下、それぞれの段階における主な注意点について、かいつまんでご紹介します。

採用検討開始から採用内定まで

検討事項●国籍によって手続きが異なること
※(国内採用か、海外採用かによって手続きが変わる場合がある)
●宗教等に対する配慮が必要なこと
※(イスラム教徒、ヒンドゥー教徒への配慮は特に注意)
人材紹介業者や登録
支援機関の相談・選定
●法令上、取引に問題はないか
※(適切な登録・許可を受けているか)
●紹介、支援体制は自社のニーズを満たしているか
※(過去の紹介実績や言語・エリアの対応、サポート体制などをチェック)
●契約内容・費用はサービスに見合っているか
●登録支援機関に関しては、士業との連携や制度・法令に関する知識が十分か
求人内容●自社で人材側に求める能力のレベルはどのくらいか
●個別対応が難しい事項・対応可能な事項は何か など
募集●人材紹介業者(登録機関を兼ねる)を介して募集をかけるのが一般的
●エージェントやインフルエンサーを介して母集団を大きくする方法もある
●ハローワークや学校を介しての紹介も考えられる
書類選考・内定●人材紹介業者を利用している場合、以下の点でスクリーニングを依頼する
・過去の日本在留歴
・書面(特定技能の在留資格の有無など)
・日本語能力
●国内外を問わずオンラインでの面接が一般的で、スピード感が求められるため、
 早めに結果を通知するのが理想
●海外採用時は、国際郵便で雇用契約を締結する点に注意

採用内定から入国/国内移動まで

特定技能人材の採用内定から、入国/国内移動までの段階において、注意すべきポイントは以下の通りです。

特定技能協議会への加入 加入証明書が在留資格の申請時に必要となるため、早めに加入することが大切
入管への申請必要書類が煩雑になるため、登録支援機関・行政書士等に申請取次を依頼する
ケースがほとんど
査証申請以下の手続きを本人、または送り出し機関等が行う
●在留資格認定許可(COE取得)
●在外日本大使館で査証申請、または現地の労働局等での申請
※(国外での手続きは送り出し機関を通して行うのが一般的)
渡航・国内移動●移動費は企業負担が一般的
●海外採用における「入国後の国内移動」は義務的支援に含まれるため、
 迎え入れが可能な日程の調整を行う
●航空券代が変わる日にちに注意(海外・日本の祝日など)
寮の手配●企業が法人契約により物件を用意し、家賃の一部を外国人本人の負担とするケースが一般的
※(海外採用の場合、外国人本人が契約するタイプの住居を用意するのは困難)
●家具や家電、寝具などを企業負担で用意すると、人材採用においてはプラスに働くことが期待できる
社内準備・研修等 ●特定技能人材を受入れる前に、既存社員の理解促進を深めることが長期就労につながる
※(外国人採用が初めての企業にとっては特に重要)
●「やさしい日本語」や「異文化理解」といった研修内容を用意するとよい

なお、「やさしい日本語」の詳細については、以下の記事をご覧ください。

製造業で必要な「やさしい日本語」力|外国人材のための英語公用語化は必要ない?

入国/国内移動から業務開始まで

特定技能人材の入国/国内移動から、業務開始までの段階において、注意すべきポイントは以下の通りです。

寮への入居・各種
ライフライン開設など
●登録支援機関に支援を依頼している場合、基本的には登録支援機関が対応
●入居時のルールを人材に説明し、特にゴミや騒音に関しては丁寧に説明すること
●海外採用の場合は、銀行口座開設に時間がかかることを想定して、初回賃金の支払方法を検討すること
外免切替 <外免切替の流れ>
①    事前審査(試験で「知識確認」が必要な場合、審査終了時に予約する)
②    申請受付(①免許センターが所在する都道府県に住んでいることが条件②免許を取得した外国に通算3か月以上滞在)
③    試験(適性試験/知識確認(対応言語は都道府県により異なる)/技能確認(日本語のみ)の3種)
④    免許交付(技能試験に合格した当日に交付可能)
⑤    初任診断(自動車教習所等で適性診断)
⑥    初任運転者研修(教育研修修了書は、運転者台帳に貼り付け3年間保存)
<主な必要書類>
●外国の運転免許証(有効なもの)
●運転免許証の日本語による翻訳文(以下いずれかの指定機関によるもの)
・当該国の駐日大使館(台湾は台湾日本関係協会)
・日本自動車連盟(JAF)
・ジップラス株式会社
※(米国、中国、台湾、香港、ベトナム、フィリピン、ウクライナ、ミャンマーのみ)
●パスポート(提示が必要、提出は不要)
●在留カード
●住民票
※(国籍記載があり、マイナンバーの記載がない原本のみ)
●顔写真(3枚) など
日本語研修外免切替と並行して、特定活動期間中に実施
※(業務時の具体的なコミュニケーションを想定して行う)
外免切替後の入管申請日本運転免許取得後、速やかに特定技能ビザに切り替える
※(6ヶ月以内に日本免許取得ができなかった場合、引き続き雇用できない点に注意)

その他の特定技能人材採用における注意点

特定技能人材を採用した場合、企業・登録支援機関は、その活動状況を四半期ごとに書面で報告する「定期報告」を行わなければなりません。

それ以外に報告事項が発生した場合、企業は発生から14日以内に届出書を入管所宛に郵送します。

在留資格の更新に関しては、在留期限の約3ヶ月前~当日までが期限となるため、自社人材が不法滞在にならないよう、ゆとりをもって申請を行いましょう。

その他、人材紹介費や支援委託費、寮の手配にかかるコストなどの費用面も含め、自社で特定技能人材を採用するのが妥当かどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。

まとめ

自動車運送業(トラック区分)における特定技能人材の採用は、人手不足解消に有効な手段ですが、様々な要件や手続きがあります。

自社ですべての要件を満たせるかどうか、手続きをスムーズに進められるかどうか不安な方は、Factory labの特定技能人材紹介サービスをご利用ください。

Factory labでは、企業のスムーズな採用のため、採用活動・在留資格申請・入社手続きなどをワンストップで支援いたします。

併せて登録支援機関サービスも行っておりますので、支援・研修等のサポートもお任せください。

ファクトリーラボ株式会社の代表

代表取締役社長

山本 陽平

1990年東京生まれ。2013年上智大学総合人間科学部卒業後、東証1部上場の資産運用会社に入社しコーポレート部門に配属。2017年、外国人採用支援及び技能実習生の推進をしているスタートアップに参画。事業部長として特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務の人材紹介や派遣事業の展開及び支援を取り仕切る。人的な課題、採用や定着に大きなペインを抱えた製造業に着目し、一貫したソリューションを提供することを目的として2022年にファクトリーラボを設立し代表に就任。