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MOLI

公開日

December 11, 2024

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インバウンド需要に対応するには「外国人スタッフ」の活用が急務!

目次

世界的パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスの影響は、2023年にはひとまずの収束に向かい、訪日外国人観光客の数も急増しました。

将来的には更なる需要の膨張が予想されており、第一生命経済研究所では、2029年のインバウンド需要が10.6兆円となり、2023年の5.3兆円からちょうど2倍に需要が膨らむと試算しています。 

その一方で、外国人観光客を受け入れる側である日本の観光業・宿泊業などでは、外国人観光客の受入態勢が十分とはいえず、その背景には「多言語対応」や「人材確保」といった諸々の課題があります。

インバウンド需要の恩恵を受けるためには、言語や労働力不足の問題を同時に解決するための策を講じる必要があり、その手段の一つとして「外国人スタッフ」の活用があげられます。

この記事では、インバウンド需要の現状と課題に触れつつ、今後の予測や外国人スタッフを活用するメリットなどについて解説します。

日本におけるインバウンド需要の現状

まずは、日本におけるインバウンド需要の現状について、直近のデータを紐解きながら解説します。

訪日外国人数は2014年頃から増加傾向だった

観光庁が公開している統計「訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移」によると、2020~2022年の3年間で落ち込んだことを除けば、以下の通り外国人観光客の増加傾向は2014年から顕著となっています。

訪日外国人旅行者数(万人)
20141,341
20151,974
20162,404
20172,869
20183,119
20193,188
2020412
202125
2022383
20232,507

※参照元:国土交通省|訪日外国人旅行者数・出国日本人数

また、日本政府観光局によると、2024年10月の推計値では、訪日外客数が3,312,000人、10月までの累計は30,192,600人となり、1964年の統計開始以来、過去最速で3,000万人を突破しました。

国別の傾向を見ると、東アジアでは中国、東南アジアではシンガポール、欧州豪・中東地域では米国などで、前年同月に比べて日本を訪れた外国人客が増加しており、そのほかにもフィリピン、インド、台湾など様々な国々の訪日外客数が増加傾向にあります。

日本でインバウンド需要が伸びている背景

一昔前に比べて、日本でインバウンド需要がこれほどまでに伸びているのには、次のような背景があるものと考えられます。

・政府のテコ入れ
・円安傾向
・LCCの就航便数増

日本政府は、経済成長戦略の一つとして、日本の観光立国化を推進する立場をとっています。

2023年5月30日には「新時代のインバウンド拡大アクションプラン」を決定しており、ビジネス、教育・研究、文化芸術・スポーツ・自然分野の3つの分野を柱とし、合計約80の施策によって、インバウンドを着実に拡大させようとしています。

通貨の面では、日本円が2013年ころから円安傾向にあることも、外国人観光客の訪日を促す一因となっています。

2024年12月時点では、1ドル150円前後、1ユーロ158円前後となっており、他国に旅行するよりも「お買い得に買い物ができるから」と来日する外国人観光客も一定数存在しています。

その他の要因としては、アフターコロナにおいてLCCのシェアが拡大した点があげられます。

株式会社JTB総合研究所の調査によると、全国計で19年夏時点のLCCシェアは23%で、そこから新型コロナ禍では4~6%ほどで推移していたものの、23年夏には31%にまで回復しています。

このような傾向が続く限り、引き続き日本を訪れる外国人観光客も増加するものと考えられ、観光業をはじめとするインバウンド需要で恩恵を受ける業界は、大きなビジネスチャンスを逃さないよう対策を講じる必要があります。

インバウンド需要で恩恵を受ける業界とは?

一般的に、インバウンド需要で恩恵を受ける業界としては、観光業・宿泊業などがイメージされます。

しかし、実際にはより多くの業界がインバウンド需要の恩恵を受けており、具体的には次のような業界が何らかの形で恩恵を受けることが予想されます。

  • 飲食業界(レストラン、ファストフード店、バー、居酒屋など)
  • 小売業界(免税店、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、百貨店、家電量販店、100均ショップなど)
  • 交通業界(バス、鉄道、タクシー、航空など)

このほか、商品製造に携わるメーカーや、キャッシュレス決済に対応する決済代行業者なども、間接的にインバウンド需要の恩恵を受けるものと考えられます。

極端な話、日本でBtoCビジネスに携わっている企業は、何らかの形でインバウンド需要の恩恵を受けられるチャンスが得られる可能性があります。

インバウンド需要 @Factorylab

 インバウンド需要に対応するための課題

インバウンド需要は魅力的ではあるものの、すべての企業・店舗がインバウンド需要を取り込めるわけではありません。

以下、日本で活動する企業・店舗がインバウンド需要に対応する上で、課題となるものといくつかご紹介します。

日本語対応以外が難しい

訪日外国人数を顧客として取り込もうと考える場合、英語やその他の外国語での対応がある程度スムーズにできなければなりません。

スタッフが多言語を話すだけでなく、案内やパンフレットなど、文字情報としても多言語に対応している必要があります。

しかし、外国語ができる人材の確保が難しかったり、パンフレット作りなどに時間を割けなかったりして、日本語以外での対応ができない、またはおざなりになっている企業・店舗は数多く存在しています。

この点を改善するだけでも、インバウンド需要への対応力は変わってきます。

例えば飲食店なら、外国人観光客がやって来た際の対応方法をマニュアル化しておくだけでも、不便を感じさせずにすむでしょう。

可能であれば、それぞれの観光客の「お国柄」についても、スタッフが学べるような時間を設けたいところです。

外国人観光客のニーズをとらえた受入態勢の整備

外国人観光客の中には、いわゆる「日本らしさ」を求めて観光にやって来る人もいますが、やはり旅行先で楽しく過ごしたいと考えている観光客も一定数存在しています。

温泉旅館・ホテルでは、外国人観光客向けの高額プランを用意して対応するところがある一方、地方の宿泊施設では十分な受入態勢が整っていないケースも珍しくありません。

例えば、ひなびた温泉旅館などに外国人観光客が泊まった際、夜になり近辺の店が軒並み閉まっていると、どこにも出かけられず退屈に感じることもあります。

温泉旅館でゆっくり過ごすことに喜びを感じられない外国人観光客に対して、日本の夜遊びルーティンを紹介するなど、ナイトライフを充実させられるような対策を講じられれば、さらに日本を楽しんでもらえるでしょう。

オーバーツーリズム

受入態勢が十分に整わないまま、外国人観光客だけが観光地などにたくさん訪れるようになると、いわゆる「オーバーツーリズム」の問題が生じます。

観光客が特定の地域に集中すると、通勤・通学の時間帯に公共交通機関がパンクしたり、夜遅くまでアルコールを飲んで外で騒ぐ観光客が増えたりするおそれがあるため、宿泊施設はもちろん地域全体で対策を講じなければなりません。また、せっかく観光に来た外国人観光客にとっても過度な混雑は満足度の低下に繋がります。

具体的には、観光客を複数の観光地に分散させたり、外国人は観光地に有料で入場できるようにしたり、住民が迷惑を被らないような対策が求められます。

この点を怠ると、生活環境の悪化から住民が引っ越してしまったり、観光反対デモなどが起こったりするリスクがあるため、外国人観光客を受け入れるなら「住民が取り残されない」ような施策を講じる必要があるでしょう。

インバウンド需要における「外国人スタッフ」の重要性

先に挙げたインバウンド関連の課題を解決するには、実務の中で外国人と対応する中で得られた情報を、組織にフィードバックする必要があります。

特に、外国人の目線で「どのサービスが好評だったか」または「どのサービスが不評だったか」を知ることは、今後の経営戦略を立てる上で重要な情報となります。

本格的にインバウンド需要に対応するためには、日本人の感覚や発想だけにとらわれず、外国人スタッフの意見を取り入れることが大切です。

以下、外国人スタッフに期待できる役割や、雇用にあたっての課題などを解説します。

外国人スタッフに期待できる役割

外国人スタッフに実務で期待できる役割としては、次のようなものがあげられます。

  • 英語をはじめとする複数の言語での接客
  • 外国人観光客との意見交換・情報収集
  • 各種SNSの現地語での活用

外国人スタッフを雇用する直接的なメリットは、英語をはじめとする複数の言語による接客がスムーズになることです。

もちろん、外国語に精通した日本人スタッフを頼ることもできますが、人数や文化的な問題からコミュニケーションがスムーズに進まないことが想定されるため、ネイティブ感覚でやり取りできる外国人スタッフの存在は心強いでしょう。

特に、英語以外の言語(中国語など)を話す顧客が来店した際は、やはり中国からやって来たスタッフの方がコミュニケーションをとりやすいでしょう。

また、接客の中で「こういうものが欲しかった」・「こんな対応をして欲しかった」という意見を伝える場合でも、同郷の人間の方が顧客としては話しやすいものと考えられるため、結果的に日本人スタッフだけで接客するよりも有益な情報を集められる可能性があります。

施設や商品の宣伝においても、外国人スタッフが貢献できる場面は多岐にわたり、その一つが「各種SNSでの現地語での対応」です。

世界的に使用されているものだけでなく、特定の国だけで利用されているSNSを活用して宣伝することも期待できるため、今まで想定していなかった顧客層へのアピールにつながります。

こういった外国人スタッフの活躍は、日本人スタッフにとっても良い刺激になることは間違いなく、事業担当者が将来を見据えてグローバル展開を進めるケースも増えることが予想されます。

日本人スタッフだけで現場を回す場合と比較して、インバウンド需要を取り込みやすいのは言うまでもなく、ビジネスの“先”を見据える機会が生まれることも、外国人スタッフを雇用するメリットに数えられます。

外国人スタッフを雇用するにあたっての課題

外国人スタッフを雇用するにあたり、企業が課題として認識しなければならない点としては、次のようなものがあげられます。

  • コミュニケーション不足
  • 賃金・待遇への満足度向上
  • 人材の仕事・生活面での総合的なサポート

以下、それぞれの課題について解説します。

コミュニケーション不足

外国人スタッフは、日本人スタッフに比べて日本語が不得手なケースも多く、指示の仕方によっては誤解を招いてしまうことも珍しくありません。

また、日本人スタッフとのコミュニケーションがうまくいかない状況が続いてしまうと、外国人スタッフ側から質問・相談がしにくくなるおそれもあります。

この問題を解決するためには、普通の日本語よりも分かりやすい「やさしい日本語」でのコミュニケーションを意識して、誤解のないよう指示を出すことが大切です。

また、文化的な問題から質問がしにくい状況が生じていると考えられる場合は、日本人スタッフに対する研修を行い、外国人スタッフが困っていることをヒアリングしやすい環境を作るとよいでしょう。

参考記事:製造業で必要な「やさしい日本語」力|外国人材のための英語公用語化は必要ない?

賃金・待遇への満足度向上

海外から出稼ぎという立場で来ている外国人労働者の場合は、自分の賃金や待遇に対してシビアに評価します。

自分の納得のいく賃金が得られないと判断したら、転職も辞さないスタンスの人材も多いことから、税金や社会保険の仕組みも含め、なぜその賃金となっているのかを丁寧に説明しなければなりません。

また、働きぶりによって待遇を向上させるなど、職場に対する満足度を高める施策も講じたいところです。

特に、日本人スタッフと比較して平等でない・不公平だと感じられるような労働条件になっていると、転職可能な外国人スタッフが職場を離れてしまうおそれがあります。

例えば、近年注目を集めている「特定技能」の在留資格は、転職が認められている在留資格です。

一分野において、汎用性の高い仕事に従事できる特定技能人材は貴重な労働力ですから、企業としては少しでも良い条件を提示できるよう心がけましょう。

参考記事:特定技能外国人は転職できる?企業に必要な手続きと注意点

人材の仕事・生活面での総合的なサポート

外国人スタッフは、職場で仕事を終えたら母国に帰るわけではなく、多くの場合は職場の近くで「生活」をします。

仕事面ではしっかりサポートしても、生活面ではサポートしないというスタンスだと、やがて外国人材が負担を感じてしまうかもしれません。

プライベートで孤独を感じたり、悩みを相談できる人が近くにいなかったりすると、仕事へのモチベーションもダウンしてしまうおそれがあります。

雇用する側としては、外国人スタッフが困ることを先回りして考え、サポートできる体制を整えることが大切です。

参考記事:外国人材が生活する上で困ること|意外なポイントについても解説

これからのインバウンド需要と外国人スタッフのニーズ

観光庁の「新たな観光立国推進基本計画の素案について」によると、2025年度の観光立国の実現に関する目標は、以下の通りとなっています。

持続可能な観光地域づくりに取り組む地域数100地域
 ※(2022年:12地域)
訪日外国人旅行消費額単価20万円/人
 ※(2019年実績:15.9万円/人)
訪日外国人旅行者一人当たり地方部宿泊数1.5泊
 ※(2019年実績:1.35泊)
訪日外国人旅行者数/日本人の海外旅行者数2019年水準超え
 ※(インバウンド2019年実績:3,188万人) 
※(アウトバウンド2019年実績:2,008万人)
アジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合アジア最大の開催国(シェア3割以上) 
※(2019年実績:アジア2位・シェア約30%)
日本人の地方部延べ宿泊者数3億2,000万人泊
 ※(2019年実績:3億337万人泊)
国内旅行消費額22兆円 
※(2019年実績:21.9兆円)

上記の通り、政府は少なくとも2019年時点の水準を超える実績の実現を目指しているため、2025年も引き続き訪日外国人数増に向けた取り組みが進むものと考えられます。

それにともない、外国人スタッフのニーズも高まりを見せることが予想され、インバウンド需要を取り込みたい企業による、外国人材確保に向けた動きが加速するものと考えてよいでしょう。

 ただし、日本の円安傾向が是正される動きが見られれば、インバウンド需要が収束する可能性も十分あります。

短期的な特需に踊らされず、持続的に外国人観光客を誘致できるかどうかが、安定的にインバウンド需要を取り込む際のポイントとなるでしょう。 

まとめ

新型コロナ禍を経て、インバウンド需要は2019年の水準に回復しようとしており、将来的には更なる需要増も期待できます。

その一方で、受け入れ側で十分な準備ができておらず、需要を取りこぼすケースも無視できない状況です。

インバウンド需要を長期的に取り込む鍵となるのは、外国人観光客とのコミュニケーションに長けた、有能な外国人スタッフの雇用・育成です。

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