特定技能制度を利用して外国人を雇用する企業が増加しています。
中でも、タイ人の雇用を検討中の方は、どのようなメリットがあるか知りたいと思っている方もいるはずです。
また、現地から採用する場合と、日本国内から採用する場合では、採用手続きにどのような違いがあるのかを知りたいという方もいるでしょう。
そこでこの記事では、タイ人を特定技能で雇用する際の手続きや条件、費用そして注意点などを解説します。
特定技能によるタイ人雇用の現状
現在、特定技能による受け入れでもっとも多い国籍はベトナム、フィリピン、中国、インドネシア、ミャンマー、そしてタイが続きます。
タイ人の割合は全体の2%程度。特定技能は、ほかの在留資格の外国人と比べると、まだ少数派というのが現状です。(参考:出入国在留管理庁 / 報道発表資料)
しかし、その数は早いペースで増えています。そのため、特定技能外国人の増加と比例して、タイ人が占める割合も増えていくと思われます。
国別で記事をまとめましたので、ぜひ合わせてご参考ください。
参考記事①:ベトナム人を特定技能で雇用する手続きと条件、費用と注意点
参考記事②:ミャンマー人を特定技能で雇用する手続きと条件、費用と注意点
参考記事③:特定技能でインドネシア人材を採用する流れ|雇用時の注意点についても解説
特定技能制度でタイ人を採用するメリット
ここからは、特定技能制度を活用して、タイ人を採用するメリットを解説していきます。
職場がポジティブになる
タイ人を特定技能で雇用するメリットのひとつが、マイペンライの精神があることです。
マイペンライとは、タイの言葉で「どうにかなる」という意味で、「大丈夫」や「気にするな」など、前向きな言葉です。
これらのマイペンライの精神は、職場を明るくポジティブな雰囲気に変えてくれます。日本人従業員にもプラスの効果を与えてくれるでしょう。
穏やかな性格の人が多い
穏やかな性格の人が多いこともタイ人の傾向です。タイ国民の約90%が仏教徒です。
日常的に寺院でお参りをしたり、托鉢のお坊さんに食物を提供したりしている姿を、テレビなどのメディアで知っているという人もいるのではないでしょうか。敬虔な仏教徒であるタイ人は、争いや自分勝手な振舞いを好まず、他人に尽くすことを良しとします。このようにタイ人の穏やかで自己犠牲的な精神は、職場における助け合いにも反映されるでしょう。
学習意欲が高い
アジア諸国のなかでも教育水準が高い国のひとつがタイです。
青年識字率が高く、就学意欲が強いことでも知られています。学歴を重視する社会でもあるため、より高い賃金を得るために学習に励むという意識も定着しています。日本語を学ぶことは、一定以上の学習意欲がないとできません。そのため日本語学習の意欲があるタイ人は、短期間でスキルを習得できる可能性が高いです。
現地からタイ人を採用する流れ
続いて、現地からタイ人を採用する流れを解説していきます。
大まかな流れは以下の通りです。
- 求人・採用活動
- 雇用契約の締結
- 在留資格認定証明書の交付申請
- 雇用契約書の認証
- ビザ申請
- 海外労働・出国許可申請
- 入国・就業開始
それぞれ詳しく解説していきます。
1:求人・採用活動
受け入れ企業は、まずは採用活動を行う必要があります。
タイの場合、法令により現地でタイ人を直接採用することはできません。そのため、直接採用活動をするのではなく、日本国内から行う必要があります。
ここで大事なことは、法令を遵守することと、前もって採用の基準を決めておくことです。事前の準備によって、面接、条件提示、交渉などがスムーズに進められます。
2:雇用契約の締結
採用するタイ人が決まったら、受け入れ企業とタイ人のあいだで、雇用契約を締結します。
送り出し機関を利用していなければ、直接タイ人と雇用契約を結べます。
その際、給与やその他の条件などを雇用契約書にまとめ、採用したタイ人と共有しましょう。それにより、のちの雇用トラブルの発生を防ぐことが可能です。
3:在留資格認定証明書の交付申請
雇用契約の締結が終わったら、受け入れ企業は日本にて在留資格認定証明書の交付を申請します。申請先は管轄の出入国在留管理庁です。交付申請のために必要な書類は、出入国在留管理庁のホームページよりダウンロードできます。
在留資格認定証明書が交付されましたら、その後の現地の手続きで必要となりますので、採用するタイ人まで送付します。
4:雇用契約書の認証
次に、受け入れ企業が行う流れが雇用契約書の認証手続きです。
駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に雇用契約書を提出、直接出向けない場合は郵送でも対応できます。
送り出し機関を介さずにタイ人を雇用する企業は、在留資格認定証明書の写しの提出が必要です。
無事に認証が済んだら、認証印が押された雇用契約書が返送されてきます。
5:ビザ申請
雇用契約書の認証が終わったら、タイ人本人が現地でビザの申請を行っていきます。
申請先は在タイ日本国公館です。この際、在留資格認定証明書が必要となりますので、事前に採用したタイ人に送付しておきます。
パスポートや証明写真などは、タイ人本人に用意してもらいます。ビザの申請方法や必要書類は、定期的に変更されますので、1年前の方法が通用しない場合もあります。そのため、タイ人と密に連絡を取りながら手続きを進めることが大切です。
6:海外労働・出国許可申請
ビザの発給が済んだら、次に出国許可の申請に進みましょう。
タイ王国労働省に、認証を受けている雇用契約書を提出します。この手続きをするのは、採用したタイ人本人です。無事、申請が受理されたら日本で働くための出国許可が下ります。
7:入国・就業開始
出国の許可が下りたら、タイ人は出国し、日本で上陸審査を受けます。これを経ないで入国すると、不法入国となってしまうため注意が必要です。
審査を通過すると、パスポートに上陸許可の認証が押され、在留資格を得られます。
これら一連の手続きを終えたら、タイ人は受け入れ企業での就労を開始できます。
日本国内にいるタイ人を採用する流れ
続いて、日本国内にいるタイ人を採用する流れを解説していきます。
大まかな流れは以下の通りです。
- 雇用契約の締結
- 雇用契約書の認証
- 在留資格変更許可申請の実施
- 就業開始
それぞれの流れを詳しく解説していきます。
1:雇用契約の締結
留学生や技能実習生などで、すでに日本に在留しているタイ人を雇用する場合も、まずは求人を出します。
日本の求人サイトや人材紹介会社を使って採用活動することも可能です。その方法は、現地からタイ人を採用する場合と基本的に同じです。採用するタイ人が決まったら、雇用契約を結びましょう。
2:雇用契約書の認証
駐日タイ王国大使館労働担当官事務所にて雇用契約書の認証を受ける点も、現地のタイ人の採用手続きと同じです。
雇用契約書などは郵送でも提出でき、認証印が押された雇用契約書が返送されたら、認証手続きは完了です。
3:在留資格変更許可申請の実施
日本に在留しているタイ人を採用する場合、とくに注意が必要なのが在留資格を変更する手続きです。
特定技能に変更される前の在留資格として考えられるのは、「技能実習」もしくは「留学」で、在留資格変更許可の申請先となるのが地方出入国在留管理官署です。
申請する際、雇用契約書が必要となりますので、認証手続きを済ませておきます。そのほかの必要な書類については、「出入国在留管理庁ホームページ」よりダウンロードが可能です。
4:就業開始
在留資格の変更が認められたら、採用したタイ人は受け入れ企業にて働き始められます。
この場合、採用されたタイ人本人が、駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に入社報告書を提出する必要があります。
入社してから15日までなど、締め切りが設けられていますので、確認しておくといいでしょう。
特定技能でのタイ人の雇用にかかる費用
ここからは、特定技能によってタイ人を雇用する際の費用をまとめていきます。
・送り出し機関への手数料
特定技能外国人を、現地の送り出し機関を介して採用した場合、手数料の支払いが必要です。
手数料の金額については、送り出し機関により異なり、10万円程度の場合から50万円を超える場合もあります。金額は、採用人数や交渉により手数料が減額されることもあります。依頼前に金額を把握しておくことで、支払い時のトラブルを避けることが可能です。
・雇用するタイ人に支払う費用
受け入れ企業は、雇用したタイ人に対しても、いくつかの費用を支払う必要があります。
受け入れ企業が負担する費用は、求人広告や雇用契約書にて明記することが一般的ですので、採用活動を始める前に見積もっておきます。
ひとつは、タイから日本に来るための渡航費です。
シーズンによって異なりますが、4万円から8.5万円程度が相場です。予算を大幅にオーバーしないように、受け入れ企業側で航空券を探し、指定する場合もあります。
もうひとつの費用が給与です。給与は、雇用契約のなかで設定した額を支払います。
企業や業種の性質、タイ人の能力などにより給与額は変わりますが、20万円から30万円程度が相場です。地域や産業分野ごとに最低賃金が定められており、それを下回ると違法となるため注意しましょう。
健康診断費用も、特定技能外国人を雇用する際に必要な費用です。
支払いが義務化されているわけではありませんが、受け入れ企業が負担することが一般的です。費用額としては1万円から2万円程度が相場となっています。
・在留資格認定や入管申請の書類作成費用
特定技能外国人を受け入れる際、さまざまな書類を作成して申請する必要があります。
在留資格認定証明書を申請する、あるいは、在留資格を特定技能に変更するとき、外部に委託した場合は代行手数料を支払います。
外部に委託する範囲にもよりますが、10万円から20万円を見積もっておくといいでしょう。
社内に手続きできる体制がある場合は、手数料は発生しません。
・登録支援機関への委託費用
特定技能には2種類あります。特定技能2号は熟練した技能を持っていますが、特定技能1号は知識と経験を十分に持ち合わせていません。
そのため研修等の支援を要します。それを支援機関に委託する場合、ひとりあたり月に2万円から3万円の委託料が発生します。
・人材紹介会社に支払う手数料
国内に在留しているタイ人を、人材紹介会社を通じて採用したら、紹介手数料を支払う必要があります。
人材紹介会社により異なりますが、採用したタイ人の年収の約35%ぐらいか、1名の紹介で10万円や30万円などと、金額が決まっていることもあります。
特定技能でタイ人を雇用する際の注意点
最後に、特定技能でタイ人を雇用する際の注意点をまとめていきます。
タイと日本の二国間協力覚書を確認する
2020年2月4日、日本とタイは特定技能についての二国間協定を締結しました。2020年7月27日から運用を開始していますので、内容を確認しておきましょう。
また、ルールが変更になる可能性もあるため、事前に手続きや手順に変更がないか確認しておくことがおすすめです。求人、雇用契約、入国するまでの手続きに関する注意点など、日本とタイで共有されている承認事項がまとめられています。
(参考:出入国在留管理庁|特定技能に関する二国間の協力覚書)
雇用契約書の認証が必要
特定技能でタイ人を受け入れる場合、日本人の雇用とは異なる手続きが必要となります。
雇用契約書の認証手続きをするタイミングには特に注意が必要です。
送り出し機関を使わない場合は雇用契約の締結後、使っている場合はタイ人を紹介される前に、駐日タイ王国大使館労働担当官事務所に書類を送付するという違いがあります。
タイミングを誤ると、手続きが遅れるのみならず、受け入れ自体ができなくなることがあるため注意しましょう。
海外労働・出国許可申請が必要な場合もある
現地在住のタイ人を特定技能で採用するときは、海外労働、出国許可申請が必要な場合もあるため注意が必要です。
タイ人の雇用では、来日前に認証済み雇用契約書をタイ王国労働省に提出します。送り出し機関を介していない場合は、タイ人に提出してもらいます。
そのため、受け入れ企業がその旨を説明する必要があり、忘れると日本で仕事をするための出国許可が下りないため注意しましょう。
企業によるタイ現地での採用活動は禁止
特定技能では、直接タイ人と雇用契約を結ぶことはできます。しかし、現地で採用活動を行うことは、タイの法律により禁止されています。
日本にいながら、現地のタイ人に向けて、採用活動すること自体は問題ありません。それは送り出し機関を介する場合も同様です。
タイ人の採用に関して不安な方は、支援してくれる会社などに相談してみることをおすすめします。
まとめ
特定技能外国人を雇用することで、働き手が不足している産業分野の活性化が期待できます。そのため、特定技能での外国人の雇用を検討している企業は年々増えています。
現在、特定技能で働くタイ人の数はそれほど多くありません。しかし、需要と供給の高まりにより、今後も順調に増えていくと思われます。
採用の際は、タイ特有の手続きがあるものの、登録支援機関のサポートがあれば、送り出し機関を介さなくても採用可能です。
タイ人の学習意欲が高く穏やかな性格は、世界でも稀有な強みです。日本の職場に活気を与えてくれるはずですので、ぜひ検討してみてください。
当社ファクトリーラボの親会社の佐竹製作所(金属加工の製造業)では元々技能実習生としてタイ人の受け入れを行うようになり、現在特定技能や技術・人文知識・国際業務の在留資格で合計60名以上のタイ人従業員を雇用しております。
このようにグループとしてタイ人との関わりの多いSATAKEグループですので、タイに関する人材事情については日々多くの情報が入ってきており、当社の強みの一つとなっております。
推薦記事①:海外から見た就労先としての日本〜タイ編〜